推理小説読書日記(2019/09)
2019年9月01日
海底大陸<蘭郁二郎>
戦前の作者の作品を、1971年に再編集した作品集だ。短篇・中編が8作収録される。この作者の代表作も多いので、はじめてでない読者には既読作品も多く含まれるだろう。 現在ではSF小説に入る作品と幻想小説に入る作品の双方を中心に書いた作者であり、本作品集にも双方が選ばれている。
2019年9月01日
異常の太陽<森村誠一>
1975年頃に書かれた短篇を収録した作品集だ。初期に属し、本格ミステリの味が強く、同時に社会派の味も強い。短篇ながら内容は中編的に濃い。テーマと構成が特徴的であり 、捜査側と当事者側と関係者側から併行して描かれるスタイルは、その後の多くの長編の中心手法だ。
2019年9月01日
漣の王国<岩下悠子>
2019年の作品だ。早熟のスイマー・綾部漣、晩熟のスイマー・遠山瑛子、ミスキャンパス・北里舞、から第1話が始まる。登場人物が次第に増えて行く。4話に序章と終章を 加えて、時間経過と場所を変えて描かれる。1話ごとの謎の設定があり、それに加えて複数の話しにまたがる謎がある。展開が意表を突く連作だ。
2019年9月01日
サンタクロースのせいにしよう<若竹七海>
1998年の連作作品集だ。主人公・岡村柊子の1人称で、友人・夏見や同居人・銀子等の隣人らとの生活とその中での主に日常の事件と謎を描く連作ミステリだ。内容には 明確に縛りを設けず、分野を超えた自由な内容を含むスタイルだ。周囲に困らされる不幸な私のスタイルが背景にある。
2019年9月07日
痛みかたみ妬み<小泉喜美子>
1972-80年の作品を集めて、再編集した作品しゅうだ。最近の復刊作品集との重複を避けているので、作品の統一性よりも多彩性を優先している。従ってモダンな技巧派の印象 が強い作者さが、全く異なる内容の作品も含まれている。全体の作品数が少なく、全作完読も夢ではない作者だ。
2019年9月07日
若さま侍捕物手帖3 双色渦紋<城昌幸>
1948-1949年頃の作品を、2019年に再編集した作品集だ。若さま侍シリーズ全作の復刊を目指し、その3巻目だ。長編「双色渦紋」と短編8作を収録している。長編「双色渦紋」は 知名度は高いが捕物帖の内容としては異なる、活劇談であり推理ではなく行動が中心となっている。シリーズ全体は作者の多彩性が出ている、長いシリーズを書くコツかも知れない。
2019年9月07日
黒い波紋<曽根圭介>
2017年の作品だ。借金まみれの元刑事は死んだ父の遺品に奇妙な物を見つけて金儲けを考えた。元議員の裏方だったが議員の死により、能力のない息子が継ぎ引退した。だが 跡継ぎの息子の母=元議員の妻に呼び出された事で脅迫事件に巻き込まれた。世代の違いと能力差に悩ませられながら、微妙な関係で関わる。
2019年9月07日
鴇色の仮面<太田忠司>
1998年の作品集で、新宿少年探偵団シリーズの第5作だ。中編「霧の恐怖」「鴇色の仮面」の2作からなる。怪奇と幻想とSFが混ざった冒険談が並ぶシリーズだが今回は怪奇 色が濃い、そして阿部ら刑事もより存在感が増す、そしてまたも難読漢字の新しい仇役が登場する。何故新宿ばかりかの謎は深まるばかりだ。
2019年9月13日
紅城奇譚<鳥飼否宇>
2017年の作品で、4章(あるいは4短篇)に序章と終章を加えた構成の連作長編だ。戦国時代の九州のある城・紅城を舞台にした、城主・藩主の移り変わりの中での 不可能犯罪的な事件を描く。時代性とその時代ならではの、あるいは架空設定で現実性とはやや距離を置いた設定での、不可解な事件が次々と起こって行く。
2019年9月13日
碧き旋律の流れし夜に<羽純未雪>
2005年の作品だ。幻想的な描写と世界で、伝奇的なあるいは怪奇的な事件が描かれる。結婚式の夜に起きる殺人事件は、16年前にも同じ場所でやはり結婚式の夜に似た 事件が起きていた。記憶を甦らすが幻想的に包まれた記憶として思い出されて行く。
2019年9月13日
名画は踊る<石川真介>
2005年の作品だ。作家・吉本紀子と愛知県警・上島警部らが登場するシリーズとして書かれているが、本来はシリーズ外で書かれるべきであり、スタイルは異なる。市美術館への 名画寄贈に係わる詐欺事件を描き、その奥に隠れた真相が謎となる。現実の地名が登場するが、とんでもミステリに属する詐欺が中心に描かれている。
2019年9月13日
流れ舟は帰らず<笹沢佐保>
1971-78年の短篇作を2018年に再編集した作品集だ。副題は「木枯らし紋次郎ミステリ傑作選」で、木枯らし紋次郎を主人公にした股旅時代小説の10作を集めた作品集だ。 このシリーズはハードボイルド手法で書かれているが、意外などんでん返しを必ず含む事で、ミステリとしてあるいは本格ミステリとしての味が強い。
2019年9月19日
海底基地SOS<高橋泰邦>
1970年の作品の1977年の復刊だ。ジュニア向きのSF小説だ。資源を得る為に大陸棚に作られた海底基地が舞台となり、そこで色々な目的で生活する人がいる。そこの周囲で 原因不明の事件が起きて行く、そこにいた少年と少女が絡んで謎を解明に進む、どんどんと意外な展開に進んで行く。
2019年9月19日
非道人別帳1悪の狩人<森村誠一>
1994年の作品集が2000年に復刊された。江戸時代の江戸町奉行所に保管されている非道人別帳に基づくとの設定だ。南町奉行所の同心・祖式弦一郎が事件に関わる捕物帳の スタイルで描く、短篇集であり連作集だ。影の黒幕が存在するのか。
2019年9月19日
御子柴くんの甘味と捜査<若竹七海>
2014年の連作集だ、その前にウエブサイトで掲載されたらしい。長野県警の御子柴刑事が警視庁共助課に出向になり、長野がかかわる事件の共助役を命じられた。公私混同の 警視庁刑事や長野県警刑事らに悩まされながら事件捜査を行う。事件解決時の前には、長野の先輩刑事の小林警部補から電話が掛かってくる。
2019年9月19日
千両文七捕物帳2<高木彬光>
1951-1954年に書かれた短編を再編集して、2019年に第2巻目の作品集として復刊された。単行本初収録作を含めた13作が収録されている。千両文七が子分の合点勘八と事件 を追う。神隠し・怪談・牡丹灯籠などの怪奇色が濃く、刺青・将棋などの作者好みの題材を含み、殺しの小道具と特技芸による犯罪も描く。
2019年9月25日
菊太郎事件控1<島田一男>
浪人だが後ろ盾があるという真琴菊太郎が主人公の時代小説で捕物風作品集だ。絵草紙瓦版屋が舞台でそこに変わった人物が集まり、瓦版を作っている。菊太郎もそこに加わり 事件を調べて瓦版の原稿を書いている、当然ながら興味のあるのは瓦版ねた中心だ。
2019年9月25日
森下雨村・小酒井不木 レガシー<森下雨村・小酒井不木>
1929-1935年頃の長編・短篇を集めて再編集して、2019年の作品集だ。長編は森下雨村「丹那殺人事件」と小酒井不木「恋魔怪曲」だ、いかにも昭和初期の作品と判る雰囲気を 感じる作品で読むのに慣れていないとも感じた。
2019年9月25日
うしろからあるいて来る微笑<樋口有介>
2019年の作品だ。元刑事のライター・柚木草平のシリーズの12作目であり、30年間書かれて来ているが柚木の年齢や設定はほぼ変わっていない。別居中の妻との娘・加奈子との場面 から始まり、事件に巻き込まれて行く。いつもの様に数人の個性的な?女性(編集者・新米刑事・セレブ・母娘・・・・)らに悩ませられながら、重大事件に関わって行く。
2019年9月25日
まぼろし曲馬団<太田忠司>
2000年の作品だ。新宿少年探偵団シリーズの6作目。新宿の狭い範囲にだけに発生する異常現象に対応する主人公らだが仲間の詳しい事もまだ謎だ。刑事の中にも気づき調べる 者が増えて来た。新宿の空に鮫が現れて事件が始まる、新宿に自然を取り戻すという不審な男が現れた。
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2019/09に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。