推理小説読書日記(2019/08)
2019年8月02日
摩天楼の悪夢<太田忠司>
1996年の作品だ。中学生の4人組が新宿少年探偵団となり悪と戦うシリーズの3作目だ。4人以外のシリーズキャラクターも次第に揃ってきたが当然ながら新キャラも登場する。 新宿の高層ビルが舞台となるが、建物も階も部屋も個別に閉じられている状態になる。ミステリー定番の空間でも闘いが始まった。
2019年8月02日
教会堂の殺人<周木律>
2015年の作品だ。数学・数学者と特殊な建造物での殺人事件のシリーズの5作目だ。原則は単独でも閉じている筈だが、微妙な所もある。5作目の本作は4作目を読んでいる 方が望ましいようだ。ミステリーとしては本作は変わった構成・展開だといえる。
2019年8月02日
大東京四谷怪談<高木彬光>
1978年の作品で、1998年の文庫復刊版だ。墨野籠人(漢字が正しく変換できない)と秘書・上松の捜査を、「陽気な未亡人」の村田和子が1人称で描くシリーズ5作の中の3作 目だ。大きな構想のシリーズだが内容はネタばれになる。1作ずつは閉じた作品だが、5作通じての部分も存在する。演劇四谷怪談・刺青・お岩の幽霊・・・多数のアイテムが 盛り込まれるなかでの事件が描かれる。単独で読んだ人には誤解がある時もある。
2019年8月02日
棟居刑事の東京蛮族<森村誠一>
2002年の作品だ。箱入り娘状態の少女が家出し、便乗誘拐犯が金を奪った。少女は東京に出て不良に絡まれるが、ホームレスと通行人らに助けられしばらく過ごすが便乗誘拐を知り 家に戻った。ホームレスと通行人らはそれぞれが複雑な事情を持っていた。登場人物らが別れた後もそれぞれが色々な事件に係わり、次第に繋がって行った。
2019年8月02日
盤上に死を描く<井上ねこ>
2019年の作品だ。「このミステリーがすごい大賞」の優秀賞だ。テーマは将棋で、なかでも詰将棋だ。詰将棋に謎が仕組まれているという内容で、ゲームやパズルが現場に 残されて、それが手掛かりになるというパターンの詰将棋版だ。一般的にどの程度理解されるかが課題だ。捜査する刑事コンビが特異なキャラでもある。
2019年8月08日
ふところの牝<多岐川恭>
1969年の作品だ。私俳優・鳩村八一が未亡人・岡部安芸子と偶然出会い夜を過ごした。安芸子は夫殺しの容疑で追われていると告げた。私は話しを聞き、一緒に暮らし 始めたが、事件に係わって行くことになる。
2019年8月08日
通り魔<結城昌治>
1959-1965年頃の作品を、2018年に再編集した作品集だ。多数の分野の作品を書いた作者のそれぞれの短篇を集めている。デビュー作の「寒中水泳」からはじまり主に初期の 主題の変化・ジャンルの変化を追いながら、作品が選ばれている。
2019年8月08日
千両文七捕物帳1<高木彬光>
1949-50年の作品を、書かれた順番に再編集して2019年に復刊された作品集だ。作品集にまとめられた作品もあるが、単行本にはじめてなった作品もある。主人公は役者の三代目 尾上菊五郎に瓜二つで、千両文七と呼ばれる捕物名人、そこに手下の合点の勘八が加わる、上役の与力・山崎格之進も加わる。幽霊・雪女・化け猫と次々登場し、刺青・生首も 次ぎ次と登場する。
2019年8月08日
同心部屋御用帳4<島田一男>
2019年に復刊されたシリーズ短篇集の最終巻だ。江戸南町奉行所の同心6人が主人公で発生した事件と、それ以外にも色々な形で事件に係わって行く。同心たちの日常生活も 描き、その中での事件も登場する。短篇の中でのホームズ的な飛躍した発想で、解決する作品スタイルが主体だ。
2019年8月08日
真贋<今野敏>
2016年の作品だ。警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾と相棒の女刑事・武田を主人公にしたシリーズの2作目だ。捜査三課は盗犯を担当するが捜査中に、国宝の展示会場からの 盗難計画に対する警備へ関与した。手口は贋ものとのすり替えで、盗品の売りさばきには裏の故買屋が係わるらしい。プロとの闘いが始まった。
2019年8月14日
紅天蛾<太田忠司>
1997年の作品で、新宿少年探偵団シリーズの第4作だ。中学生4人は謎の少女の登場で新しい事件に係わる事になった。悪運の強い阿部刑事のキャラも強くなって来た。 敵か味方かの単純な2分類ではない関係が、複数に混ざりあう、奇妙な展開が繰り広げられる。
2019年8月14日
オチケン、ピンチ!!<大倉崇裕>
2009年代の作品だ。中編2作から成る作品集で、大学の落語研究会を舞台にした、落語と青春ミステリだ。主人公は「オチケン」こと越智健一で学園で発生した奇妙な事件に 係わり、やむなく解決する事になる。「三枚の始末書」は学園ミステリで、「粗忽者のアリバイ」は落語ミステリだろうが境目は曖昧だ。
2019年8月14日
消えた断章<深木章子>
2018年の作品だ。作家志望の君原樹来は妹・麻亜知と元警察官の祖父を訪ねてミステリー談議していた。そして麻亜知が持ち込んだ事件に係わる事になった。10年前に誘拐された 人物が依頼人であり、その家庭と事件を聞き、行方不明人物を探し始めた。そして、それは複雑な展開に進む。
2019年8月14日
カーテン<アガサ・クリステイ>
1975年の作品だ。ポアロ最後の事件とも題され遺作だが、執筆は1940年代初めとされている、著者の全盛期に書かれて、死亡後に発表された作品だ。語り手のヘイスティングが ポアロに呼ばれて、最初の事件の舞台のスタイルズ荘に行った。そこでポアロから事件が起きると言われた。その後に・・・・・。
2019年8月20日
定本 久生十蘭全集3<久生十蘭>
1939-1940年の作品を集めた、久生十蘭全集の第3巻目だ。第二次世界大戦前だがその絡みの事情が係わっている。代表作の中編「計画・ヤー」=「地底獣国」が初出から単行本 初出・復刊と題名と内容の変化を解説されている。「平賀源内捕物帳」シリーズ短編8編が掲載されるが、内容と探偵役が予想外に変化して驚いた。
2019年8月20日
棟居刑事の永遠の狩人<森村誠一>
2014年の作品だ。戦場カメラマンが海外取材中に日本で妻子が殺された。仕事を辞めて呆然とする男は、偶然に能登で自殺防止ボランティア団体を知り、参加した。そこで多数の 人と知り合う内に、妻子の死に疑問を持った。併行して事件が起き、捜査する刑事たちと棟居はボランティア団体と出会う。
2019年8月20日
からみ合い<南條範夫>
1959年の長編だ、幾度か復刊されいる。時代小説を書いた作者が現代物の犯罪小説を書き、江戸川乱歩にミステリとして評価された。その後には時代ミステリも書いた。 余命短い富豪が、生きているかどうか判らない子ども探しを始めた、それにより遺産相続争いが起こるが、その様子と意外な展開を描いた。
2019年8月20日
道標<今野敏>
2017の作品集だ。副題は「東京湾臨海署安曇班」であり安曇警部補シリーズの短篇集である。安曇と機動捜査隊・速水が警察官になったばかりの時の話しから、安曇の勤務先を 追いながら、湾岸署が変わって行く状況を追ってゆく。色々な登場人物である刑事らの目から描いた短篇10作が並ぶ。
2019年8月26日
劇場の迷子<戸板康二>
1977-1990年の作品を、2007年に再編集して復刊した作品集だ。歌舞伎の老俳優を探偵役とした長編2作と多数の短篇を、5巻にまとめた全集の短篇集の4冊目で最後の短篇集だ。 本格ミステリ中心の初期の作風が、作品を重ねる事で日常の謎を扱い解く事が中心になった。歌舞伎や芸能や芸の世界の表現としては適している面もある。異色探偵の異色分野の シリーズの全貌が復刊された訳だ。
2019年8月26日
殺意<夏樹静子>
1983年の中編2作からなる作品集だ。医学的な問題へのアプローチから話しが始まり、一見は特殊な状況から事件が起こり展開して行く。病気の進行や回復という状況の変化が ミステリーの展開の中で、状況を大きく変える展開はサスペンス色が濃い。
2019年8月26日
渡辺啓助探偵小説選1<渡辺啓助>
1935-1947年の作品を2019年に再編集して復刊した作品集だ。最近30年位に出版された作品集3冊に掲載された作品との重複は避けた編集だ。それらは怪奇小説が主体だが、 それ以外から選んだ事でそれ以外のジャンルが多くなり、この作者の別の面を読むこととなった。かなり異なる作風を感じて、その幅広さに驚かされた。
2019年8月26日
クジャクを愛した容疑者<大倉崇裕>
2017年の作品集だ。警視庁いきもの係シリーズの中篇3作からなる作品集だ。シリーズも増えて、須藤刑事と薄巡査の会話の内容がギャグか駄洒落的な内容に大きく変わり、 脇役も次第に増えて来た。今回の動物はピラニアとクジャクとハリネズミだが、サイドで登場する動物も凝っている。
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2019/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。