推理小説読書日記(2019/04)
2019年4月5日
京都東山美術館と夜のアート<高井忍>
2019年の連作集だ。京都東山美術館の昼勤務の警備員に雇われた本当は学芸員志望の女性が主人公だ。美術館イベントと展示の仕組みと、展示品に絡む謎を描く。美術館と 言っても展示品は色々あり、本物偽物問題や、価値があるかどうか、展示の目的とか集客は?。色々な事件と謎が起きる。
2019年4月5日
大断層の東<阿井渉介>
2000年の作品だ。静岡新聞に連載されたが、静岡を1つの舞台とする、他は沖縄だ。新聞に連載される「静岡の謎」記事を背景にして歴史・地理・文化・伝説等の雑学と場所を 絡めて事件が展開する。婚約者の死を主人公の女性が調べると、謎の男が登場するパターンだ、トリック小説でもある。
2019年4月5日
アリバイの彼方に<夏樹静子>
1976年の作品集だ。作者の初期にあたり8作からなる、探偵の捜査ではないが本格味も強い作品は多い。謎の設定が多岐に渡り、その多様さを書き分ける事が当時のスタイルだった ようだ。主流は題名作を含めて、アリバイが多い。パロディ的な面白さを出した作品や、ユーモア味の作品もある。
2019年4月5日
内調特命班 徒手捜査<今野敏>
1992年の作品を改題して2009年に復刊した。内調特命班シリーズの2作目だが、中心人物的には重なるがそれぞれの行動は固まっていない。アメリカの日本への陰謀を、伝説を受け継ぐ 3人の武闘家が阻む。日本伝統の空手大会で、殺人行為で日本選手を打ちのめして、プライドを削ぐという計画を、メンバーが阻止するために動く。
2019年4月5日
通勤快速殺人事件<森村誠一>
1971年に出版された短編集だ。5作からなるが社会派小説と警察小説と山岳小説と本格小説等の複数の要素を盛り込み、スケール的には長編にも拡がる題材も多い。動機という 面で単なる怨恨以外に求めた作品が多い、それがリアルかどうかは時代の移り変わりで異なるが、書かれた当時を思うとかなり異質だったと思う。
2019年4月11日
スティングマータ<近藤史恵>
2016年の作品だ。自転車レース選手の白石誓が主人公のシリーズ4冊目で長編3作目だ。欧州の自転車レースを舞台にし、個人を勝たせる為に団体として競技する、多くの選手は 自己犠牲でチームとスター選手を勝たせる為だけに契約して競技する。日本では馴染みの薄いが、新鮮な競技とその中の人間ドラマとミステリーの謎が重なって進行する。
2019年4月11日
ハラハラ刑事一発逆転<草野唯雄>
1988年の作品だ。ハラハラ刑事シリーズとして言われるが、題名とは異なるサスペンス小説だ。警察とそこからはみ出した刑事コンビとが登場するが、全体の比重は微妙だ。 ユーモアあるいはブラック・ユーモアが前編にあるが、その質も微妙であり設定なのかギャグなのだろうか。東京を核でジャックする展開を描く。
2019年4月11日
擬態の殻<麻見和史>
2019年の作品だ。副題は「刑事・一條聡士」でその三人称視点で描くが、仲間・周囲の人物と比較して主人公性・キャラ性はまだ不明であり、シリーズ第1作的な書き方だが 今後の展開があるかは不明だ。主人公の立ち位置と一匹狼なのかどうかが未確定だ。
2019年4月11日
叛撃<今野敏>
1994-2001年に書かれた短編を、2010に短編集としてまとめて出版した。格闘技を色々な角度と視点から描いた短編を集めた。2−3作が同じ主人公のシリーズの作品も含まれる。 アクション小説であるが、それぞれに異なる背景とジャンルを組み合わせた。
2019年4月11日
キャッツ・アイ<フリーマン>
1923年の作品を、2019年に新訳で出版された。イギリス黄金時代初期のミステリであり題名的に知名度は高い。ソーンダイク博士が名推理を行うが、地道捜査のイメージではなく ひらめきタイプの発想だ、ただし犯罪構造とその解明手順は地道科学捜査だ。むしろこの時代でのテーマとしては、驚きの内容を扱っている。
2019年4月17日
グリーン車の子供<戸板康二>
1961-1976年の短編を再編集した短編集だ。歌舞伎役者・中村雅楽が探偵役のシリーズを短編集4冊と長編集1冊にまとめた全集の2冊目だ。18作の短編が収録されている。 日常の謎派と言われ、歌舞伎を題材にした作品が多いが、それ以外も含む。表題作は、日本推理作家協会賞短編部門受賞作であり、初出の雑誌掲載以来の再読だったが、単行本 のノベルスでは飛ばしたが新幹線こだまの話題を確認した形だ。
2019年4月17日
死海の伏流<森村誠一>
1986年の作品だ。スパイと国の機密保持を背景のテーマにして、複数の殺人事件が発生して捜査が行われて行く、捜査よりも犯罪を描いた小説に近い。従って、視点は捜査陣 よりも関係者のいわゆる素人側が強くなる。解決で終わる訳ではない構成だ。
2019年4月17日
魔眼の匣の殺人<今村昌弘>
2019年の作品だ。第2作目で、デビュー作と同じ剣崎比留子と葉村譲が主人公だ、秘密組織・斑目機関を調べ始めると閉ざされた家に複数の人と共に閉じ込められて、予言された 殺人が起こる。過去から予言を行っている人物と、絵に未来を描く別の人物の予言は当たるのかをテーマに、閉ざされた殺人を描く。
2019年4月17日
予告状ブラック・オア・ホワイト<市井豊>
2019年の作品集だ。元名探偵がさぼる為に地域密着型探偵を始めた。仕事でその相手を頼まれたOLが助手となると、それなりの事件が持ち込まれる。風変わりな謎を奇妙なコンビが 関わる連作ミステリだ。川崎市ローカルミステリだ。
2019年4月17日
双面獣事件<二階堂黎人>
2007年の作品だ。ノベルス750ページの大長編だ。二階堂蘭子はラビリンスの犯罪を追い、函館で起きた魔術王事件と同じ頃に、鹿児島・奄美で起きた巨大怪獣事件を捜査した。 本格ミステリのシリーズだったが、本作はどうなのか。謎の怪獣の正体は何かを追うと、ついには・・・・。冒険小説か、犯罪小説か、SF小説か、ホラーか。そもそもこの シリーズは収束するのだろうか。
2019年4月23日
七之助捕物帖3<納言恭平>
2018年に復刊された連作短編集で、シリーズ全作を3巻に分けて復刊した3冊目だ。御用聞の七之助と手下の音吉が事件を解決する。シリーズの初期は、小説のスタイルや 展開や視点などが、試行錯誤的にゆれていた。後半1/3になると、オーソドックな捕物帖内容に定まった、安定した話しが続く。
2019年4月23日/p>
六月はイニシャルトークDE連続誘拐<霧舎巧>
2002年の作品だ。学園シリーズの3作目だ。掴みどころが無いと言うか、色々なものを盛り込みすぎたのか、怪しげな内容の作品に感じる。不可解な事件設定と謎の設定が あるので、本格ミステリなのだあ、ユーモアもとんでもミステリ要素もある。
2019年4月23日
大河内常平探偵小説選2<大河内常平>
1950-1957年の長編と短編を再編集して、2016年に復刊した作品集だ。古書価が高騰している作者だが、復刊は最近になりようやく出た。テキストや題名が、初出後に変遷が あったと解説されている。非常に分かり難い古書をレアとして探求されているようだ。
2019年4月23日
霧子、閃く<多岐川恭>
1986年の連作作品集で、短編5作からなる。主人公の北風霧子を含む3人からなる探偵局の事件簿だ。豊かな教養とボクシングチャンピオンとに、神秘的な直感力の霧子が加わる。 たまたまとは言わないが、予想外に事件が解決する。
2019年4月23日
西條八十集 人食いバラ<西條八十>
1951-1956年の中長編4作の少女探偵小説からなる作品集だ。少女2人が主人公の作品が3作と、少女と青年が主人公の作品が1作だ。意外性のあるストーリー展開であり リアリティよりも奇想・冒険の面白さを追求した作品だ。
2019年4月29日
眼球堂の殺人<周木律>
2013年の作品だ。特殊な建造物を舞台に数学者が実行した事件、数学者がその謎を解くミステリシリーズだ。犯罪の為に作られた特殊な建築物はそれ自体が謎だ、製作者も謎だ。 警察捜査と、個人の調査とを並行して描き事件が展開し、それぞれが終わってゆく。
2019年4月29日
女優X 伊沢蘭奢の生涯<夏樹静子>
1993年に書かれた。1人の女優の生涯を描いた伝記・ドキュメント・歴史小説だ。主人公・伊沢蘭奢は明治22年津和野生まれで大正時代から新劇と映画に登場した。だが 昭和3年に38才で病死した。その頃の新劇は松井須磨子が活躍したがやはり死んだ時期だった。
2019年4月29日
名古屋駅西ユトリロ 龍くんは美味しく食べる<太田忠司>
2019年の5作の連作集だ。連作集としてシリーズ2冊目になる。主人公の大学生・龍(とおる)の実家は喫茶店、そこと名古屋を舞台にした連作だ。龍はウエブ編集者の女性 から名古屋名物食べ物のレポートのモデルを依頼されて応じた。名古屋名物紹介記事と共に、ストーリーが展開する。連作集全体でも物語となっている。
2019年4月29日
欠落<今野敏>
2013年の作品だ。同期採用の2人の警察官が主人公の「同期」のシリーズ2作目だ。部署が全く異なるというか、片方は退職したかも知れない主人公コンビだが、ある事件で連絡を 取り合う事になる。そこには別の同期が絡んだ事件があった、それを追うと意外な展開があった。
2019年4月29日
殺人の組曲<森村誠一>
1987-1992年の短編9作を収録した短編集だ。独立した短編を集めた短編集だ、作者自身の解説では「切り口と多様性を核として集めた」「推理小説の技巧性が最も凝縮されているのが 短編である」「技巧以上に凝縮したかったのは人生である」とする。長編でも複数の視点と事件を扱う事の多い作者だが、その延長の思想だろう
←日記一覧へ戻る
2019/03に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。