推理小説読書日記(2019/03)
2019年3月6日
殺人株式会社<森村誠一>
1993年の作品だ。殺人事件とそれ以外の複数の事件がバラバラに発生し、それぞれの被害者や捜査員から描かれてゆく。その中で新しく事件が起きたり、関係者が殺害されて行く。 停滞していた捜査が、関係者の調査を絡めて新たな展開に進む、複数の所轄の合同捜査が始まってゆく。
2019年3月6日
大河内常平探偵小説選1<大河内常平>
1951-19608年に出版された2長編と2中篇を再編集して2016年に復刊された。編集者は単行本が多い作家の中で、その後に復刊されていない最後の作家という。同時期に3冊の復刊本が出た。 初出と単行本化とその少し後の復刊時に、題名が変わったり編集や内容の書き直しがあったりして、書誌的にテキスト的に混乱しているという。個人的にも説明されても益々、混乱が 広がった。
2019年3月6日
双孔堂の殺人<周木律>
2013年の作品だ。特異な形状の建物の中で発生した事件を捜査する、建築物がトリックの作品だ。概観は鍵を2つ重ねた形状で、持つ部分が住居で、棒の部分は美術展示スペースだ。 物語全体は数学と証明の難しい難題がテーマとして背景を流れる。関心が無い人には架空の話題として、関心のある人にはドキュメント風の展開だ。
2019年3月6日
灰の轍 警視庁文書捜査官<麻見和史>
2018年の作品だ。特命班の文書解読班の鳴海理沙が主人公のシリーズで、エピソード0を含めて4作目となる。文書解読班は1ごとに班のメンバーが加わったり変わったりする。 設定的には安楽椅子探偵のイメージがあるが、ストリー上の理由から外での捜査が増えてきた。本作では安楽椅子探偵的名新メンバーが加わった。
2019年3月6日
静かな炎天<若竹七海>
2016年に出版された連作集だ。6作の短編からなる、私立探偵・葉村晶が主人公のシリーズだが、順当に年齢が増えるのがミステリでは珍しい方だ。ミステリ専門書店で働く 兼業探偵だ。探偵の依頼から始まることも、書店員の仕事から巻き込まれる事も私生活で巻き込まれる事もある、生活がハードボイルドなのだ。
2019年3月12日
ペンギンを愛した容疑者<大倉崇裕>
2015年の短編と中篇4作からなる作品集だ。警視庁いきもの係シリーズの3作目だ。主人公の鬼刑事の視点から見た、風変わりな動物係の相棒の婦人警官と動物がかかわる 事件を描く。ペットマニアへの驚きは、鬼刑事と読者も似ているかも知れない。動物がテーマだったり、脇役だったり、色々なパターンの中で、いきものを相手に捜査が おこなわれた
2019年3月12日
追跡者<阿井渉介>
1985年の作品だ。記憶を失った主人公が新聞記事でそれらしい名前を見つけて調べる旅に出た。その先では不明か、隠すのか、不明の中で事件が次々と起こった。 関わる人物の誰が味方で、誰が敵かわからないままで、過去の大きな事件が現れきて、真実が見え始める。
2019年3月12日
運命の花びら<森村誠一>
2015年の作品だ、上下2冊からなる長い大作だ。ミステリ色は薄いが、時代小説や戦記小説や多数の要素を持ち込んだ、時代の流れを含んだ作品だ。作者のテーマでもある たった一人の運命の異性との出会いを縫いこんだ。吉良家への赤穂浪士討ち入り、新撰組、2・26事件、特攻隊。そして第二次大戦後も、多数の事件や自然災害を通して それに関わる人物の絡み・つながりを描いた。
2019年3月12日
観音崎灯台不連続殺人事件<草野唯雄>
1988年の作品だ。警察嘱託の私立探偵の尾高一幸がやや積極的に事件に関与する形で進行し解決する。隠された財宝争奪事件を追い、主人公と警察も日本のあちこちを探しまわる。 思考派の面もあるし、行動派・捜査派でもある、アクション派かもしれないがかなり危ない。破格の主人公だ。
2019年3月12日
鬼龍<今野敏>
1994年の作品だ。主人公・鬼龍浩一が依頼を受けて、お祓いを行う。行った先で事件を見つけ、または巻き込まれて、とにかく解決する。伝奇小説であり、拳法小説であり、 世の中の悪を、退治してゆくという小説だ。主人公の家族・一門の事情もすっきりしない設定になっている。鬼龍光一とは異なる。
2019年3月18日
美濃路殺人悲愁<石川真介>
1999年の作品だ。作家・吉本紀子と警部補・上島のシリーズの1作になるのだろう。ただし内容的には名探偵は必要かは不明なストーリーであり、本作での活躍度は疑問だ。 賞品でイベントに誘いだされた複数の男女に奇妙なことが降りかかり、並行して描かれる。そして全員が集められて犯人が登場してくる。
2019年3月18日
あい 永遠に在り<高田郁>
2013年の作品だ。江戸時代末期から明治維新を経て、明治時代の医師とその妻・あいを妻の目から描いた時代小説だ。千葉の貧しい幼少を過ごし、苦労の末に医師になった夫・ 関寛斎と結婚した。出世を求めない夫は徳島藩付けの医師になり赴任してすごし、明治維新を徳島で過ごし、使えた藩主の死で高齢だが夫婦で新開拓地の北海道を目指した。
2019年3月18日
千曲川旅情殺人事件<藤原宰太郎>
1991年の作品だ。ミステリトリック研究家・久我京介と取り巻きが主人公のシリーズだ。題名は島崎藤村の本に由来し、旅情ミステリではない。ミステリのトリックとパーツを ちりばめた、ミステリ辞典的な組み立ての内容だ。
2019年3月18日
アノニマス・コール<薬丸岳>
2015年の作品だ。ある事件が原因で警察を辞めた元刑事と、その夫と離婚した妻の刑事が主人公だ。その娘が誘拐された元妻は元夫に助けを求め、それぞれの思惑で解決を目指すが 元夫は警察に隠しての対応を目指す。警察組織の誘拐事件捜査は情報化しているが、個人捜査はどうか、情報に詳しい者を巻き込むがそれでも少人数だ。
2019年3月18日
希望荘<宮部みゆき>
2016年の作品集で、長めの短編4作を収録する杉村三郎シリーズの4作目だ、時系列順の配列では無い。財閥家の娘と離婚して実家に戻った主人公は働き始めるが失踪事件の 依頼を受けた。この事件がきっかけで探偵社のオーナーから個人探偵社開業を進められて東京の北地域に開業した、そこで仕事が2作描かれ、最後は東日本大震災時に巻き込まれた かも知れない消息不明者を調べる。
2019年3月24日
せつないいきもの<竹本健治>
2008年に出された短編集だ。少年囲碁棋士・牧場智久が探偵役で、少女剣士・武藤類子が主人公の青春ミステリとして描かれる。主人公のライバル的な人物との推理競争 あるいは恋愛小説的な味もあり、あわせてユーモア味だともいえる。
2019年3月24日
βの悲劇<夏樹静子・五十嵐均>
1996年の作品だ。夏樹静子作「ドーム」の続編であり、五十嵐均のテーマの近未来SF小説として書かれた。核戦争による環境汚染時に1000名の人間を隔離するために 作られ運用されているドーム。新インフルエンザがスペインから次第に全世界に広がり、変異が速く対策がなく全世界に広がり続ける。隔離施設としてドームが注目を あびて来た・・・・・
2019年3月24日
忍者大戦 黒ノ巻<>
2018年に編まれた、書きおろしのアンソロジーだ。ミステリー作家が時代小説のそれも忍者小説を書いた作品を5作集めた。時代ミステリの作品も勿論あるが、むしろ活劇や 忍法帖の味を前面に出した作品も複数あり、異色の短編集となった。
2019年3月24日
軌跡<今野敏>
1992年から2005年に書かれた短編を集めて、2014年に出版された短編集だ。短編が6作が掲載される。警察小説、拳法小説からSF小説までの色々なジャンルを含む純粋の短編集だ。 作者のデビューからの軌跡を見れる意味から本題が決められたようだ。
2019年3月24日
ミート・ザ・ジャンパー<太田忠司>
2019年の作品だ。平均年齢70歳以上のロックバンドが出演するライブハウスが改装される事になり、活動停止した。特殊な事情でロックバンド活動している孫は、祖父に関心を持ち、 停止したバンドの復活方法を考え始めた。過去から現在までの関わった人の事情と思いが絡まり、物語が進む。
2019年3月30日
暗黒星団<森村誠一>
1985年の作品だ。時間と場所が異なる事件をいくつか描き、そこに弱い関連がある。その繋がりから複数の登場人物にとっての事件が描かれ、それぞれの関わりが生まれた。 警察捜査と、個人の調査とを並行して描き事件が展開し、それぞれが終わってゆく。
2019年3月30日
依頼人は死んだ<若竹七海>
1993年から2000年に書かれた短編連作9作を、2000年に連作集として出版した。零細探偵事務所の女探偵・葉村晶の一人称のハードボイルドスタイルで描く私立探偵小説だ。 依頼されて調査する事件もあれば、巻き込まれ型の事件もある。町を歩けば事件と遭遇する感のある作品集で強引さはあるがトリッキーさもある。
2019年3月30日
だから殺せなかった<一本木透>
2019年の作品だ。2017年度の鮎川賞優秀作が1年4月後に出版された。新聞記者が署名記事をきっかけに、連続殺人犯から指名投稿を受けて、新聞紙上で議論を始めることになった。 賛否両論が社内に有ったが話題になり新聞の売れ行きが上がると商業的な動きが強くなった。劇場型の犯罪となった事件が、不思議な展開を示す。
2019年3月30日
推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ<久住四季>
2018年の作品集で中篇2作からなる。記述者の探偵作家が偶然に出会った、探偵と暮らし始める。そこで出会った事件が描かれる。シリーズ化は不明だが、内容は第1冊目だ。 自由できままで生活破綻者の探偵役は、まじめだが小説締め切りと編集の駄目だしに悩む探偵作家は思いあまって、出会った事件を小説に書き始める事になった。
2019年3月30日
クロノ・モザイク<二階堂黎人>
2014年の作品だ。主人公が時間移動して異なる過去や未来に行くSF小説だ、時間移動は突然に起こり、制御は出来ない。時間パラドックスに反して主人公は事件を変えようとする。 時間移動で未来を変えることが出来るのか、事件の謎が判るミステリと、時間パラドックスに関する謎がある。レギュラー探偵・水乃サトルが一部登場するがゲスト的だ。
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2019/03に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。