推理小説読書日記(2019/02)
2019年2月04日
恋牡丹<戸田義長>
2018年の連作作品集だ。長編公募に出された書き下ろしの時代ミステリだ、広義の捕物帳と言える。4短編からなるがそれぞれ時間の経過がある。1作目は妻を亡くした同心とその息子が 中心で進む、2作目は同心が吉原の若い女に出会いそして・・・、3作目は同心が引退し息子に役目を譲り女と一緒になるが・・・・、4作目は息子の同心が仕事や色々に目覚めて行く、 その中で事件が描かれる。
2019年2月04日
放課後の名探偵<市川哲也>
2018年の連作長編で、4章からなる。高校生探偵の蜜柑花子が登場するが、ひたすら探偵能力は隠している。その周囲の高校生の間で起きる事件が色々な人物の目から描かれ、 それぞれの解決に微妙に花子も関わる事になる。
2019年2月04日
見知らぬわが子<夏樹静子>
1976年に出た短編集であり、幾度か増刷・復刊されている。短編7作からなり独立している。作者の江戸川乱歩賞候補から作家デビューした後ころの作品だ。舞台は福岡が多く 、本格味も多いが心理的な記述が多い、サスペンス作品が中心となっている。名探偵を設定せず、登場人物全てに不安感を与える作風が既に見える。
2019年2月04日
不条理な殺人<パット・マガー>
2018年に日本で翻訳出版された1967年の長編だ。凝った設定での作品が日本で知られる作者の久しぶりの翻訳だ。マイナーな新感覚舞台劇が背景であり、名声のある俳優が 、息子が脚本担当のその劇に出る事を決める。だが内容は理解出来ないし、実は稽古しながら内容が変わって行く劇だった。そこにその妻の大女優が見学に来て出演を言い始めた 、・・・・・。
2019年2月04日
忍者大戦 赤ノ巻<>
2018年に編まれたオリジナルアンソロジーであり、忍者小説6作が含まれる。色々なジャンルのミステリ作家が、それぞれに忍者が主人公の作品を書いた。忍術だったり、 陰謀だったり歴史小説の一片だったり、トリックだったり、色々な切り口を見せる。
2019年2月10日
復活の条件<森村誠一>
2007年の作品だ。順調だと思っていた生活を失った主人公が、再スタートの時点にタイムスリップしてパラレルワールドに飛び込む、そこで過去の失敗を修正して行く。 双方の世界でそれぞれに事件が起きているが、幾つか食い違うその世界の双方で事件の解決を図る。主人公自身が混乱する進行のなかでやり直しの世界は成功するのか?。
2019年2月10日
あなたが消えた夜に<中村文則>
2015年の作品だ、番外編の短編も収録している。警察小説のスタイルを取る部分が多いが、全体的にはそのジャンルとも言えない。警察小説として見ると、オムニバス形式の 長編になると思うが、それでは割り切れない部分を押し出す事で小説は成立する。
2019年2月10日
去就 隠蔽捜査6<今野敏>
2016年の作品だ。キャリア出身の警視庁の署長が主人公の警察小説だ。合理的な思考で全てを考えるキャリアが現場に登場すると如何に事件に対応するかがポイントだ。同時に 上層部との対立が見所となっている、本作では苦手な娘への対応にも戸惑う。ストーカー事件とそれへ対応組織の新設に悩みながら、誘拐・殺人事件に対応する。
2019年2月10日
蒼井雄探偵小説選<蒼井雄>
1934-1948年の作品を、2012年に再編集した作品集だ。作者の長編3作を除くほぼ全作品を収録した。中編「霧しぶく山」「黒潮殺人事件」「狂燥曲殺人事件」はそれぞれ 異なる背景・スタイルで書かれており中心となっている。短・中編全集のスタイルの本作品集は、理想的な復刊な形と思う。
2019年2月10日
桃源ク<陳舜臣>
2001年の作品で、ハードカバー2冊の長編だ。中国を舞台にした歴史小説は、人物と地名が読みにくくて憶えにくい事があり、歴史事実を知らない事に加えて難解に感じる。 作者の「この作品を読むかたがたへ」から始まり、地図と登場人物表を同時に見ながら本文を読む。中国からアラブとその西までの広大な地域が舞台となった
2019年2月16日
七之助捕物帖 第二巻<納言恭平>
1940-1941年の短編を2018年に復刊した作品集だ。1941年から1948年に出版された4冊の短編集を3冊に再編集してオンデマンド復刊する第二巻だ。第二巻には21作が収録されている。 内容は多彩というか、捕物帖のイメージで浮かぶ事が短めも短編に書かれている、時代小説・捕物帖だから可能かぎりぎりセーフ的なストーリーも多い。
2019年2月16日
殺意の漂流 異型の曠野<森村誠一>
1983-1984年の連作長編だ。「異型シリーズ」の4作目であり、共通点もあるが異なる登場人物の短編があつまり連作長編となる。シリーズ共通で拳銃が登場する、初めて 持つ人物がほとんどだが拳銃の触れることで、人生に変化が生まれて行く。ほぼ短編集だ
2019年2月16日
天網 TOKAGE2<今野敏>
2010年の作品だ。必要時に集合する警視庁バイク隊・TOKAGEだが、そこのメンバーでもある警視庁捜査1課特殊犯捜査係(SIT)所属の2名が主人公だ。SITがかかわる事件に、 TOKAGE隊となって関わってゆく。天網では、同時多発バスジャックという不思議な事件を手分けして追跡捜査する。
2019年2月16日
あらしの白ばと 地獄神の巻・パリ冒険の巻<西條八十>
1958-1959年の作品で、2018年に復刊された。2015年から4冊・4部復刊されたシリーズの最終5冊目であり、5部・地獄神の巻と最終の6部・パリ冒険の巻の合冊だ。どちらも 雑誌連載のみで単行本は初めての少女冒険活劇長編連作だ。少女3人からなる、白ばら隊の活躍するシリーズだが、最終のパリはその中の一人の独演となった。
2019年2月22日
むごく静かに殺せ<森村誠一>
1969年の連作方式の長編だ。自称は事故処理屋の殺し屋・星名五郎が主人公の短編を繋いだ連作形式の長編だ。ハードボイルドの面もあるし犯罪小説の面もある。全9章だが 主人公の登場場面の長さは前半は長く多いが、後半になると短く少なくなる傾向がある。如何に処理するかのサスペンスだとも言える。
2019年2月22日
花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1<大阪圭吉>
1936-1943年に発表された単行本未収録短編とエッセイを2018年に編集して発行した。昭和10年代は第二次世界大戦の時期であり、ミステリーは規制されていた。作品ジャンルは 微妙だし、作品自体が単行本化もなく古書自体が入手困難であり、存在が未確認が多い。読者が出会う確率もゼロに近く僅かだ。
2019年2月22日
魔術王事件<二階堂黎人>
2004年の作品だ。一般長編の3倍の長さの大長編だ。シリーズ探偵・二階堂蘭子は複数の事件を同時に抱えていて、すぐにはこの事件の捜査に参加できない状況だ。その中で 北海道の大資産家絡みで起きた事件を刑事が調べる。連続して事件が起きて、捜査側が連敗する状況が続く。捜査側の敗退で終わったかに思われた頃に、二階堂蘭子が現れて 大きく展開が変わる。大長編だが完全に閉じてはいないようだ。
2019年2月22日
死刑台のロープウェイ<夏樹静子>
1975年に出版された短編集の後の復刊だ。短編が4作と中篇が1作掲載されている。作者の夏樹名義の初期の作品集だが、本格味が強い作品も多く、多彩な内容なのはその後も 作者の個性として継続した。中篇「死刑台のロープウェイ」は容疑者の妻が夫のために捜査する中での意外な展開を描いた。
2019年2月22日
黒星章 黒星団の秘密<大下宇陀児>
1933年の作品を短篇を2018年に復刊された。戦前の混乱期の作品であり戦後に別作に書き直された。戦前作ならではの問題も多いが、初出の発掘はしばしば行われている。戦前作の 雰囲気が全体を覆ううえに、少年小説として書かれていることから読者としては作品の評価は難しい。
2019年2月28日
暗渠の連鎖<森村誠一>
1982年の作品だ。交通事故から始まり、連続夜間無人事務所の窃盗事件が起きる、次に連続してアベックの強盗強姦事件が起きる。アベックの仲は崩れるが、男や父親の中に 犯人を捜す者が出てきた個別に動いた。その中で死体が見つかり窃盗事件との関わりが疑われた。それをきっかけに3つのばらばらだった事件の繋がりが見え始めた。
2019年2月28日
変人島風物誌<多岐川恭>
1961年の作品「変人島風物誌」と、1960年の作品「私の愛した悪党」の2長編からなる2000年の復刊だ。作品集の多いこの作者だが現代物はほとんどが現在は入手が困難だ。 「変人島風物誌」はこの作者では珍しい犯人探しのパズル小説だ、作者がフェアプレイを目指した島内に限定された地図付きのミステリだ、らしく無いと思うほどにこのジャンルでも 好作だ。
2019年2月28日
内調特命班 邀撃捜査<今野敏>
1990年の「犬神族の拳」を、2009年に改題復刊した作品だ。シリーズ1作目に当たり、内閣情報調査室の陣内が暗殺・テロのプロ集団に対抗する組織を作るために古武術家を 探す。1作目は探す3名(プラス1)を見つける過程とそれぞれの紹介の意味が強い、最後半で最初の敵と闘い倒す。
2019年2月28日
浦賀与力<宮田一誠>
1994年の作品だ。歴史小説あるいは時代小説で、幕末の浦賀与力の中島三郎助の黒船来襲時から始まり、明治維新を経て箱館の五稜郭で死ぬまでを描いた。作者は出身地の 三浦半島を舞台にするが、本作もその系列に入る。異国人との接触から、船の建造と運行を経て、鳥羽の戦いから江戸に戻る徳川慶喜の船に乗り、最後は榎本武揚らと蝦夷に向かう 船を運航して、函館で死ぬ。
2019年2月28日
五月はピンクと水色の恋のアリバイ崩し<霧舎巧>
2002年の作品だ。私立霧舎学園ミステリ白書・シリーズの1冊。高校内で起きた殺人事件をその学生が捜査して解決する設定だ。設定が異様であり説明が必要であり、その背景 での事件という性質からは、学園内のシリーズになるのだろうと思う。本格ミステリなのだが架空味が強い。
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2019/02に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。