推理小説読書日記(2019/01)
2019年1月05日
二十世紀鉄仮面<小栗虫太郎>
1936年から1937年の短編作を集めて再編集して、2001年に復刊した作品集だ。中編「二十世紀鉄仮面」と短編2作と掌編を収録する。内2作は法水麟太郎が主人公であり、 この作品集の中心だ、また多数のエッセイも収録された。また死により中絶した「悪霊」と笹沢佐保による完結編も収録した、発表時期は戦後になる。
2019年1月05日
破婚の条件<森村誠一>
2002年の作品。東京郊外の死体発見から始まった。10年後に里見昌枝はある日に突然に夫に不快感を持ち別居を考えるが拒否されて殺害を計画した、だがその前に夫は殺され偽証した。 捜査を始めた棟居刑事は、その中で夫と10年前の事件との係わりを知った。偽証する昌枝と捜査する棟居は新たな殺人事件に遇った、そこから事件が展開して行く。
2019年1月05日
凪の残響<麻見和史>
2018年の作品だ。東京の湾岸地区の、台場・有明・青海で事件が展開する。ショッピングモールで指が見つかり捜査1課が捜査を開始すると、湾岸地域で次々とバラバラの一部が 、身体が損壊した死体が見つかって行く。死者か生存か不明で、狙いも不明状態だが、捜査員は犯人の次の犯行を止められるか?。 双方の事件関係者の繋がりが判る。
2019年1月05日
流行作家は伊達じゃない<今野敏>
2014年に作者の作家生活35周年を記念して、作者自身が誕生から大学生活から会社入社、ノベルス作家デビューして万年初版作家ながら、膨大な作品を書きつずけて行った。 そのノベルス作家時代の生活・出版事情を描き、その中での作者がジャンルを拡げた様子が描かれる。25年を過ぎて吉川英治文学新人賞を受賞し、作家生活がやや変わり 2年後の山本周五郎賞と推理作家協会賞受賞で、劇的な変化が起きた。自伝エッセイと安曇警部補の刑事なり立て時代の短編集を収録する。
2019年1月11日
めんそ−れ!福岡−東京殺人ライン<荻原秀夫>
1993年の作品だ。今では作品自体が入手困難になっている作者の一人だろう、時代的にそれほど昔でないがほぼ絶版だ。警視庁の牛王丸警部が登場する。併行して2つの 離れた場所での事件が描かれる、それが如何に結び付きがあるかが謎だ。捜査上と、小説上ではその謎の比重が異なってしまうのが難点だろう。
2019年1月11日
失われたミステリ史<加瀬義雄>
同人誌と同人出版本の内容を再編集して、2014年に復刊した。欧米の英語圏以外の地域と言語のミステリを探し読み、レビューした内容だ。スウェーデン・ノルウェー・ドイツ・ ・オーストリア・イタリア・フランス・ベルギー編がある。そもそもそれらの原著が入手出来るのか、言語が読めるのか自体が難しい。付録としてドゥーセの短編の翻訳も掲載 されている。
2019年1月11日
緋の堕胎<戸川昌子>
1964-1979年の短編を再編集して2018年に復刊した。9作からなるが幻想・妄想的な内容だ、題材的に怪奇的な面も同時にある。徹底した架空の世界で終わる作品もあれば、 ミステリとサスペンス味で終わる作品もある。読者に予測させず、作者の世界に誘い込む作品だ。
2019年1月11日
宝島冒険<森下雨村>
1909年の作品を、2018年に同人誌で復刊された。森下雨村が18才に書いた小説だと言う。少年が親の仇と宝を探す旅をする。悪を懲らす少年という冒険小説は、明治時代的と いうか若い時の作品というか、だが背景を知って言える事であり、驚きの作品だ。
2019年1月17日
刀と傘 明治京洛推理帖<伊吹亜門>
2018年の連作短編集だ。幕末から明治が舞台であり、尾張藩出身・鹿野師光と佐賀藩出身・江藤新平を中心に進む。出来たばかりの当時の警察組織の二人が事件を解く。 急激に変わって行く歴史を背景にした、時代本格ミステリだ。本の題名は、師光がいつも持っている持ち物に由来する。
2019年1月17日
誉生の証明<森村誠一>
2006年の作品だ。失意の5人はスキーバス事故で助かり生まれ変わる為に、山荘で共同生活を始めた。側に新興宗教が施設を作り怪しい動きを見せ、立ち退きを要求した。 4人らは生活を守る為に立ち向かう事になった。事件は多数の人を巻き込み、他の事件と犯罪に拡がって行く。
2019年1月17日
人狼<今野敏>
2001年の作品だ。非行少年グループが暴れたがそれに素手で対応する男・風貌から狼男の存在が噂になった。整体師の武闘家が、知人から狼男が弟子であり止めて欲しいと依頼された。 非行グループとそれ以外にも狙われているらしい、止めに入ろうとすると複数から狙われた。第三の存在がいるのか・・。
2019年1月17日
アイアン・レディ<二階堂黎人>
2015年の作品だ。近未来にでは、ロボットが進化して増えて工事用や業務用にに使われたが、改造して武装用や警護用にも使われていた。連邦捜査官の主人公は人間形ロボット開発 の博士から女性形ロボット=アンドロイドを支給されて、二人?で捜査を始めた。ロボットを含む相手の捜査は戦闘アクションとなって行く。
2019年1月23日
濱地健三郎の霊なる事件簿<有栖川有栖>
2017年の連作の短編集だ。前作「幻坂」の2作に登場した、霊専門の探偵・濱地健三郎が関わる短編集だ。作者自身のあとがきが判り易い「怪談やSFを利用したミステリでななく、 ミステリの発想を怪談に移植して、境界線上に新鮮な面白さを探す」作品だという。だから7作中の1作が異なる事は、当然の事なのだろう。
2019年1月23日
防諜捜査<今野敏>
2015年の作品だ。警視庁外事部の公安刑事・倉島警部補が主人公のシリーズの5作目だ。日本国内でロシアの刺客に狙われていると言う通報で、発生した事件を含めて捜査を行った。 日本国内で国内刑事部の捜査との兼ね合いがあり、少ない人数での張り込み捜査が中心となる。
2019年1月23日
甲賀三郎探偵小説選<甲賀三郎>
1927-1932年の短編・中編作品を、2003年に再編集して復刊した作品集だ。収録は全体の4/5が評論・随筆となっており、収録小説に目玉がなく、読書的には不満がある内容だ。 資料的な意味は詳しくはない。膨大な作品から探偵作家・土井江南が主人公の短編を中心に集めた、名前はコナン・ドイルのもじるだと解説があるが、小説内容は異なるようだ。
2019年1月23日
未亡人の妖術<阿部徳蔵>
1927-1935年の短編作品を、2018年に短編集として復刊した。副題は「魔術小説集」であり、奇術・手品と心霊術や幻想幻影がテーマであり小説手法になっている小説だ。ただし 実話や伝記や随筆的な作品も含む。奇術としての落ちというか解決の仕方は多様であり、心霊現象のままの作品もある。
2019年1月29日
都会の怪獣<楠田匡介>
1952年の作品を、2018年にコピー版で復刊した。小学6年生向きに書かれた。怪奇探偵小説なのか、怪人と怪獣が前編を支配する感が強い。主人公の少年と少女が大人と 警官と共に事件に係わり、怪人と怪獣を追い何故か闘う。書かれた時代の割りには文章は読みやすいか、ストーリー的には理解するより追いかける事になる。
2019年1月29日
和歌山殺人事件<石川真介>
2006年の作品だ。怪しげで不可解な作品だ。ストーリーが不可解なのはミステリぽいが、文章や構成が相当に酷いというか理解しずらい。設定された謎は相当に不可解だが、 文章や構成がそれ以上に理解しずらいので、内容の理解は無理に近い。作者は実在の地名をあえて使ったとするが、それも混乱を拡げた。
2019年1月29日
藤原宰太郎探偵小説選<藤原宰太郎>
1958-2007年の作品を、再構成した2018年の復刊作品集だ。長編1作と、短編9作からなる、エッセイとインタビューと解説が、著者の推理クイズ著書の内側を覗わせる内容で あり面白い。長編は推理クイズ作家が主人公であり、そのインタビューの世界と重なる部分がある。トリック小説の面もある。
2019年1月29日
異型の街角<森村誠一>
1983年の作品だ。作者の「異型」シリーズの1冊だ。やや特殊な職業や設定の主人公が拳銃と絡むストーリーの短編だが、それがオムニバス的に重なり長編になる。変わった仕事 浦の世界が中心となり、色々なスタイルでのストーリーが展開する。時間の経過を取り入れた展開はこの作者の得意だ。
2019年1月29日
凶眼の魔女<吉田恭教>
2015年の作品だ。私立探偵と、本庁刑事と所轄刑事が交互に登場して最初は異なる事件を追う、最後近くまでその傾向はある。それぞれのキャラクターも色々あるし、事件は もっと怪しい、事件は猟奇的なものであり、捜査から過去にも拡がり、未来へも拡がる。バラバラ死体はミステリの定番だが、バラバラ場面まで詳しく描くのは猟奇的な内容だ。
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2019/01に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。