推理小説読書日記(2018/11)
2018年11月06日
グラスバードは還らない<市川憂人>
2018年の作品だ。ガラス製造会社社長は超高層ビルの最上階に住むがそこに入れる者は少なく、何があるのかは知られていない、そこで事件が起こった。刑事らは輸入禁止 動物の不正輸入の疑いで社長を調べるが、ビル最上階には行けず調べた。上階の非常口を調べると、中階で爆破が起きて上階に閉じ込められた。爆破跡から見つかる奇妙な 状況と多数の謎を調べて行く。
2018年11月06日
ドッペルゲンガーの銃<倉知淳>
2018年の作品で、連作ミステリだ。何も出来ない刑事とその妹の作家が小説のネタを探して、事件を求めて行く、そこに先祖の霊が現れて謎を解いて行く。不純な動機と 奇妙な設定の中でユーモア小説が進み、本格ミステリの謎が解かれる。中編3作からなる。
2018年11月06日
三浦半島殺人岬<宮田一誠>
1988年の作品だ。三浦半島のある市で汚職が行われていた、そしてそれに関わる疑いのある事件が起きた。企業も市役所も上層部は隠蔽を考えて、部下の責任を追わせる。 その中で視点が変わるストーリーで、事件と隠蔽とが行われる。登場人物のそれぞれの思惑が食い違い、サスペンス風に展開する。
2018年11月06日
継続捜査ゼミ<今野敏>
2016年の作品だ。警察OBが女子大学で未解決事件を捜査するゼミを開く。現役警官の後輩に資料提供を求めて、捜査と推理がゼミで行われる。併行して学内でも盗難等の 事件が起きて同時に捜査を行う。継続捜査の担当者が興味を持ってゼミに事件を持ち込み、それも扱って行く。
2018年11月12日
棟居刑事のガラスの密室<森村誠一>
2009年の作品だ。被害者女性の隣人男性に容疑が掛かるが何も語らない。被害者の友人女性の弟が屋根裏から犯行を目撃するが公に証言出来ない、逆に犯人に殺害された。 被害者の父と、隣人の妹と、目撃者の姉が、真犯人を捜し始めついには復讐を図る。警察の一部は事件に裏があると調べ続け、次の事件に遭遇して行く。
2018年11月12日
詩歌の待ち伏せ(下)<北村薫>
2003年のエッセイ集の後編だ作品。例えば土井晩翠の「秋風五条原」や、チャンドラーの小説の名言がフランス詩の引用である事から原文と小説の引用と、双方の翻訳を 探して比較して行く。ルナール「蛇」、乱歩全集や、相撲や野球の話題と記憶を探って行く。
2018年11月12日
花だより<高田郁>
2018年に出た作品集だ。「みをつくし料理帖シリーズ」の最終冊だとしている。大阪の女料理人の澪が江戸で活躍したが、本作では結婚して大阪に戻り店を開いている、 幼馴染みの野江も大阪に戻り店を開いている。江戸の店の主人、江戸の武家の女性、野江、澪、それぞれが中心の短編4作を並べて、その後を描いた。 小説になるのだろう。
2018年11月12日
雪桜<福田栄一>
2016年の作品。副題は「牧之瀬准教授の江戸ミステリ」だが主人公は女刑事・真衣だ。資料整理に飽きた真衣は疑問を持った事件を調べ始め、そこに江戸時代の古文書を 見つけて、解読を専門家の牧之瀬に依頼した。専門馬鹿??の牧之瀬と真衣が事件を追うことになった。シリーズ化になるのか。
2018年11月18日
紅殻駱駝の秘密<小栗虫太郎>
1936年の作品を、2018年に復刊した。作者がデビュー前に書いた作品であり、デビュー後に刊行されたと言う、トリックが代表作の黒死館殺人事件にも転用されたとも 、それゆえ本作は話題にならなかったとも言う。「黒死館」の特殊性やデビュー前の作品という特殊性から、実作読んでの判断になるだろう。意外な展開という作者の 特徴は既に現れている事が判るし、登場人物を含めた展開は個性的だ。
2018年11月18日
霧笛の余韻<森村誠一>
2004年の作品だ。作家・白沢は旅行中に美貌の女性・多鶴子に出会い名詞を交換したが、その後に行方不明になった。連絡すると双子の妹・志鶴子がいた、その後に多鶴子の 横領容疑や会社での墜落死が発覚した。白沢と志鶴子が多鶴子の謎を追い、新宿署・牛尾が転落死を追う中で、事件は大きく広く展開する。
2018年11月18日
闇の争覇 歌舞伎町特別診療所<今野敏>
2007年の作品だ。新宿署捜査1課・松崎と、診療所医師・犬養と看護婦・青沼と、極道・赤城らが事件に絡み、五条と王の一騎討ちをクライマックスに、歌舞伎町の勢力争いを 描く。武道小説と、警察小説と、極道小説などの多様な要素を含む。
2018年11月18日
小鳥を愛した容疑者<大倉崇裕>
201年の作品集だ。元捜査1課刑事の総務課員・須藤と動物係婦警・薄圭子が容疑者等が世話を出来なくなったペットを世話しながら、事件の謎を解くという作品集だ。「小鳥」「へび」 「カメ」「フクロウ」が登場するが詳しい種類とその生態と飼育方法も書かれている。動物ミステリでありペットミステリであり、名コンビの捜査でもある。
2018年11月24日
的の男<多岐川恭>
2000年に2長編合わせて復刊された。「的の男」は1978年の長編で、「お茶とプール」は1961年の長編だ。犯人側と被害者側とその他からの多視点で描かれる。犯罪小説的な 面と、本格ミステリの面と、叙述ミステリ的な面があり、双方から描く事でコンゲーム的な一面もある。そしてユーモア要素が全面を覆う。
2018年11月24日
新・新幹線殺人事件<森村誠一>
1985年の作品だ。作者の初期の代表的な長編でありベストセラーの「新幹線殺人事件」の設定や背景をモチーフにしている、そこでは東京と新大阪間で事件が起きた。 今回は博多から新大阪を通って東京に走る新幹線での事件となる。後発の列車が、先行する列車を追い越すのだが、先行車から後発車に乗り移れても、再度戻る事は 出来ない筈だったが・・。
2018年11月24日
探偵は教室にいない<川澄浩平>
2018年の作品だ。北海道・札幌の中学生の女2人と男2人の生活と絡む日常の謎を描く青春小説だ。4話からなり、話しが進む程の4人の繋がりが明らかになる。その内の 主人公的な女性・真史(まふみ)が謎を解く為に相談に行くのが、不登校生の幼馴染みの歩だ。歩が探偵役的に登場して進行する。
2018年11月24日
帝都探偵大戦<芦辺拓>
2018年の作品だ。ミステリ・探偵小説分野の名探偵を多数登場させる連作集だ、黎明編・戦前編・戦後編でなる。多数の名探偵が、複数の絡む事件をバラバラにあるいは 協力して解明するスタイルを取る。名前は聞いていても原作は未読の人物と、名前もたぶん初めての人物は、たぶん原作絡みの内容も理解は出来ていない筈だ。当然ながら 名前だけ登場するに等しい人物も生じる事は仕方がないだろう。
2018年11月30日
巨大幽霊マンモス事件<二階堂黎人>
2017年の作品だ。探偵・二階堂蘭子とその集まりの仲間が、ロシアでの不思議な事件の話しを聞いて、謎を解くという構成だ。このような構成独特の外の仕掛けもあるし、 中で語られる話し自体にも多数の仕掛けとトリックがある、二重以上の話しという事で大胆というか空想溢れるというか、架空的な展開がある。
2018年11月30日
震える教室<近藤史恵>
2018年の作品だ。学校を舞台にした学園物のホラー小説だ。広義のミステリかも知れない。サスペンスや犯罪小説や心理小説の味があるのはホラー小説全般に言える事だろう。 原稿が遅れている女性作家が編集員からホラー小説専門誌に原稿依頼される事から始まる入れ子構造で、その娘の通う学園が中身の舞台になる。
2018年11月30日
杉の柩<アガサ・クリステイ>
1940年の作品で、翻訳は1957年だ。長い事件が起きる前の部分と、ポアロ登場からの捜査部があるがあまり探偵は前に出て来ない。その後は意外にも法廷場面だが国も時代も 異なり良く判らない。しかもそこに解決編が織り込まれている。あとからミステリー味の濃さが判るが、読書時には薄いと感じさせられた。
2018年11月30日
友達以上探偵未満<麻耶雄高>
2018年の作品集だ。短編(中編)3作は三重県伊賀上野市の高校生放送部員が主人公であり、地元も事件を解決する(楽しむ)。問題編と解決編に別れる作品もあり、 名前と場所を含めて一般作とは違和感がある。元々が純粋な小説からスタートしていない事情があるようだ。
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2018/11に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。