推理小説読書日記(2018/10)
2018年10月01日
虎の尾 渋谷署強行犯係<今野敏>
2014年の作品。整体師の竜門光一が刑事の辰巳と、格闘技の達人が関わる事件に関わって行くシリーズだ。沖縄から竜門の師匠が上京して、東京の事件に弟子が関わる ようだと調べに来る。そして竜門らは、弟子捜しと関わる事件と殺し屋とが混ざる事件に関わる事になる。
2018年10月01日
お人好しの放課後<阿藤玲>
2017年の作品集だ。中編1+短編3からなる作品集だ、連作長編ではない。クラブにはいらない生徒は帰宅部という地域ボランティア活動する建前の高校と地域での話しだ。 日常の謎のミステリーと青春小説談が混在する作品集だ。帰宅部に持ち込まれる厄介事を、語り手の男子高校生と、幼馴染みのお人好しの女子高生を中心に関わって行く。
2018年10月01日
倒産回路<麗羅>
1978年の作品だ。韓国と韓国人が中心の話しが多い作者だが、本作は異なる。ここでは、高利貸し・金融屋の主人公がその分野のボス的な黒幕への対抗意識を持つが、 逆に嵌められてしなう、そこから繰り返し戦いを挑む話しだ。多数の詐欺の手法とその対抗手段が登場し、仲間と裏切りが繰り返される。サスペンスだ。
2018年10月01日
カリブ海の秘密<クリステイ>
1964年の作品で、日本語訳は1977年だ。ミス・マープルのシリーズだが舞台はイギリスではなく、カリブ海の島だ。ほぼ休暇中の客が集まるホテルで死体が見つかり、次第に 殺人の疑いが起きる。マープル物では珍しいがマープルは早くから登場する、展開上は適度な程度だ。変わり者の富豪と知り合い、深く関わっていく事になる。
2018年10月07日
棟居刑事の一千万人の完全犯罪<森村誠一>
2009年の作品。「生かし屋」兵藤は記憶を失っている、指示する組織も詳しく知らないが非常に武闘派で強い。その仕事である女性を頼まれて出会った。棟居刑事は自殺願望者を 調べ殺し屋が絡む疑いを持ち調べ始めた。離婚して街を歩いていた大杉は女性と出会う事で気持を切り替えて再出発を図る。複数の人物の係わりのなかで、背後の黒幕の存在が 浮かんで来る。
2018年10月07日
禁断 横浜みなとみらい署暴対係<今野敏>
2010年の作品。横浜みなとみらい署暴対係の諸橋警部と相棒・城島と個性的な配下が暴力団に対抗する。麻薬中毒死や暴力団員の殺害や、記者の殺害事件が起こった。暴対係 は担当する事件かと疑いそれぞれの担当場所と、やや揉めながらも情報を得たり与えたりして繋がって行く。情報源として古い時代のヤクザ等から噂を聞き込む。中国から 視察にくると言う目的と正体は何か?。複数の思惑が絡む事件だと判って行く。
2018年10月07日
香山滋集<香山滋>
1948年から1961年の短編を再構成して、2003年に出た作品集だ。幻想と怪奇色の強い作品を書いたこの作者には、継続して書いた人見十吉を主人公にしたシリーズがある。 長編2作と、短編19作だと言うが、本書は短編19作を集めた。医師で探検家で夢想家?の主人公の行動は自由で、テーマが幻想世界だから空想に溢れる。秘境小説・冒険 小説になるのだろう。
2018年10月07日
深夜の博覧会<辻真先>
2018年の作品。副題が「昭和12年の探偵小説」だ。東京と名古屋を舞台にした、大がかりな事件を描く。名古屋の博覧会が主な舞台となり、それを含めて昭和12年の出来事 や時代風景を描く。それは想像する時代と食い違う事も多く、真偽の程は判らない。大きな組織が動く謎が展開されており、江戸川乱歩の世界を感じた。少年探偵の活躍が、そう 思わせるのかも知れない。
2018年10月13日
あやかしの裏通り<ポール・アルテ>
2005年の作品を、2018年に翻訳して日本に紹介された。アルテはフランスの本格作家として2002年の日本に始めて翻訳された、2010年以降は翻訳はなかった。本作は久しぶりの 翻訳と同時に別の登場人物のシリーズの初紹介だ。大トリック作であるが、どこかに幻想的な味わいも味わいもある。時代設定が1902年だ。
2018年10月13日
詩歌の待ち伏せ(上)<北村薫>
2002年のエッセイ集だ。詩や短歌や俳句等の作者の記憶と出会いと思い出を書きつづっている。詩歌との出会いは、多くは詩集となりそれは本に関する話題に発展する。 ミステリと詩歌の結び付きは多い、ミステリ作家にも愛好家は多く、作品に取り込む人も多い。小説等の読みは、本格推理小説を読む快感があるという作者は、詩歌と詩集 との出会いも類似の意味がある。
2018年10月13日
TOKAGE<今野敏>
2008年の作品。副題が「特殊遊撃捜査隊」だ、警視庁の特殊犯捜査係は通称「SIT」の捜査を描く警察小説だ。そこの白石涼子と上野数馬はバイクで出動するトカゲと呼ばれる 係であり、必要時に各部署から集められる隊員らとチームを組む。それ以外は「SIT」として捜査に加わる。トカゲが出動する場面は多くなく、涼子と上野の捜査も一部だが それを含めた全体の誘拐事件捜査が描かれる。
2018年10月13日
風花の舞<榊原姿保美>
1992年の作品。能の家元争いに関わる複数の候補者を家元争いと、それに関わる新作の舞を通して描いている。家元は人間関係が複雑であり血筋関係も同様だ。そして 婚姻絡みと、宗派の権力争いが加わる。能には宗教や神絡みの歴史があり、儀式を通して現れて来る。
2018年10月19日
強盗殺人実話<甲賀三郎>
1929年の作品集の20話から、10話を作品集として復刊した。探偵小説作家が、実際の犯罪を実話として書くコンセプトだ。それらしき文体と、内容で書かれている。 犯罪実話は戦前にはいくつかあるが、たぶん情報が多くない時代では求められていたのだろう。現在の情報時代では、描き方に興味を持っても2−3作で飽きてしまう。
2018年10月19日
棟居刑事の憤怒<森村誠一>
1999年の作品だ。ラブホテル授業員は利用者やたまたま出会った女性と繋がりを持つが、行方不明とか殺害とかされる。都下で発生した事件を追う刑事らはその、繋がりを 調べ始めた。複数の視点から事件に絡む内に、関係者と容疑者に繋がりを見つける。その中に犯人がいるのか、動機は何か、少しずつ明らかになって行く。
2018年10月19日
高原のフーダニット<有栖川有栖>
2012年の作品だ。中編2作と、幻想的な味の掌篇10作からなる「ミステリ夢十夜」の3中編からなる作品集だ。古典的な風味と旅情味とが重なる「オノコロ島ラプソディ」 と、緩く閉ざされた範囲の中から犯人を捜す「高原のフーダニット」からなる。同じ火村・有栖川コンビ作だが、異なる雰囲気の作品だ。
2018年10月19日
午前零時の男<紅東一>
1958-59年の作品を2018年に復刊した。個性的な作風の潮寒二は全貌が不明の作者だが、別名で書いたアクション小説を4作集めた作品集だ。シリーズ構成ではないが、 似た雰囲気の作品だ。ミステリとして見ようとすると犯罪小説になるのだろうが、アクション小説という方がぴったりする。同一作者とは思えない、異なる作風だ。
2018年10月25日
増加博士の事件簿<二階堂黎人>
2012年の作品だ。探偵役の増加博士が中心の掌篇集で27編からなる作品集だ。本格ミステリの作者だが、短い長さではそうは行かないので色々なものが混ざっている。 クイズ的な作品、星新一風の落ちとペーソス狙い、とんでもミステリに近いもの、SF風、ホラー風、ダイイングメッセージもの、その他何でもありだ。
2018年10月25日
蒼穹の昴<浅田次郎>
1996年の作品だ。ハードカバーで上下2冊本の大作だ、文庫になると分冊が増える。時代は中国の清朝の末期で、西太后が3台の皇帝の院政を行い、清の最後となった。 そこに絡む多数の人物に注目して描いて行く。そこでは主役になった人物が幼少の頃からどのような変遷で地位を築いたが描かれる。後半になると、日本の萬朝報記者と 英国記者等の外国人からの視点で末期の体制が描かれる。
2018年10月25日
南十字星の誓い<森村誠一>
2012年の作品だ。第二次世界大戦で日本が中国に侵攻して開戦する前から、敗戦した後までの、シンガポールが舞台だ。主人公の女性外交官はシンガポールで、博物館と 植物園を守ろうとするイギリス人・日本人・現地人等と合う、支配者がイギリス。日本・連合軍と変わって行き、治安も変わる。そのなかでふたつの施設と所蔵物を守る 活動に参加する。
2018年10月25日
最良の嘘の最後のひと言<河野裕>
2017年の作品集だ。某会社が超能力者を雇う為に入社試験を行う。規定時間終了時に採用通知を持っているものが採用だ。本物の超能力者が存在するのかの疑問の中で、 採用競争が始まる。どの様な超能力なのか、どのような能力が有利なのか。SFドラマが行われる。
2018年10月31日
サーベル警視庁<今野敏>
2016年の作品だ。明治時代中期の日露戦争後の時期に発生した事件を当時の警察が捜査した、当時の知名人が幾人か登場して展開する。この作者では珍しい明治ものであり、山田 風太郎的な趣向の中に真相を調べて行く。元新撰組の元警官や伯爵の孫も登場する。完結はするが、キャラクターの再登場もありそうだ。
2018年10月31日
祈りの証明 3.11の奇跡<森村誠一>
2014年の作品だ。主人公のカメラマンは、消えた妻が東日本大震災の被害に遭ったと考えて、被災地を探し回りながら写真を撮り、俳句を詠んで廻った。大災害の中に、 新興宗教絡みの犯罪が起こり隠蔽が行われた、いくつかの殺害事件をカメラマンや警官や自衛隊員や技師らが係わりあいながら追う。人々が偶然に出会いながら、幾つかの 事件には接点があると調べて行った。その過程で震災の現場と現実を主にカメラマンの視点から描いた。
2018年10月31日
骸の鍵<麻見和史>
2018年の作品だ。警視庁の女性刑事と所轄刑事がコインロッカーから見つかった女子のバラバラ死体事件を追う、ゲーム的なクイズで次のロッカーを指定した犯人の狙いは何か。 一見は連続した死体遺棄事件に見えたが、意外な展開に進んだ。併行して死体のエンバーミング師が拉致されて、作業を命じられて行く。
2018年10月31日
氷川瓏集<氷川瓏>
2003年に編まれた作品集で、1946-1976年の作品からなる。幻想ミステリ・幻想小説のジャンルの作品だ。この作者の作品集としては最初であり、現時点では唯一だ。 長さ・背景・時代は多様であり、ミステリー度も多様だ。幻想味を抑えてミステリ度を狙った作品もある。架空・SFとは異なる世界だ。
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2018/10に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。