推理小説読書日記(2018/08)
2018年08月02日
豹変<今野敏>
2015年の作品。お祓い師・鬼龍光一が登場して除霊という手段で、事件を解決する。他にもお祓い師らしき人物が2名いる。ストーリー上でその様な世界だと思いこむ、 警察捜査との相性はどうなのか、連続事件のミッシイングテーマが、設定された世界で自然に進むのが恐ろしくぴったりだ。
2018年08月02日
黄石斎真報<秋梨惟喬>
2013年の作品集だ。20世紀はじめの中国が舞台だ、清が亡んだ数年後の時代であり、地方の新聞的な画報を発行する集まりは奇妙な人物が集まっている。そこでの奇妙な 事件を描くが、そもそも何が基準・尺度になるのかが明らかでないので、価値観の食い違いや色々が重なり、奇談としか言えない。
2018年08月02日
我が屍に石を積め<麗羅>
1980年の作品だ。韓国で拾われた幼児は姉に育てられて東南アジアに徴兵されて行くが、姉の失踪で脱走して、日本に行く。そこで出会った女性と暮らし始めるが、 韓国に調査に行き帰国して死ぬ。本名では韓国に戻れない主人公は、女性の死と姉の死と自身の身の上を調べるために、危険な韓国に潜入する。
2018年08月02日
愛と憎しみの伊勢志摩殺人ライン<石川真介>
2008年の作品だ。五輪のメダル候補と言われた女性が死ぬ。それから15年後にその友人らが時効前に死の真相を調べる為に運動を起こす。そこにアドバイザー的に 参加した吉本紀子に、意外にも真相を知るという人物が名乗りでた。だが多くを開かさないうちに死に、過去と現在の双方の事件を追う事になる。
2018年08月08日
特急白鳥北陸路殺人事件<草川隆>
1997年の作品。特急白鳥は作品が書かれた当時に大阪−青森間を走っていた、その後に寝台特急日本海になり、2018年現在は運行されていない。長い路線であり交差する 線区が多数あり、すれ違う特急等も多い。まさにトラベルミステリーに合った列車だ。「紅茶館」のマスターとメンバーが捜査する、東京から新幹線で駆けつけるのが、 廃止される予感を思わせる。
2018年08月08日
フォア・フォーズの素数<竹本健治>
2005年の短編集。竹本健治の第二短編集であり、2018年に復刊された。純粋な短編集であり多彩な内容だ。牧場智久シリーズの「チェス殺人事件」、芸者シリーズの スピンアウト作「メニエル氏病」、SF・幻想・???・。表題作「フォア・フォーズの素数」は4を4つと数学記号で0から100までの整数を作る話だ、なんとも 驚きの内容だ。
2018年08月08日
さよなら、と嘘をつく<太田忠司>
2018年の作品。副題は「沙之里幽談」。引退した女優の母と田舎町・沙之里に住んだ主人公の少女・千蔭は奇妙なもの・現象に出会う。幽霊か伝説か、判らない事件が 展開してゆく、謎が明らかになりそうに展開しると別の謎が産まれてくる。SFか幻想か怪奇か、それ自体が掴みきれない。
2018年08月08日
青春の十字架<森村誠一>
2011年の作品。主人公・寒川は穂高で女性と出会った。その後にジャーナリストの妹が失踪した、そして女性と再会し行った山にはその女性の妹が代理で現れた。寒川は 警視庁SPであったが、友人の棟居刑事とその知人のバーのママと会う。要人警護を行う内に妹の失踪の謎や、山で会った姉妹と巡りあい、大きな事件に関わって行く。
2018年08月14日
暗殺競売<曽根圭介>
2013年の作品。プロの殺し屋と副業の殺し屋が、暗殺オークションサイトで受注競争をおこなう。主として殺し屋サイドから、生活とオークションと殺害とその後を描く。 犯罪小説が強いが、そこにはトラブル続きであり、複数の事件が併行して進むが無関係かどうかは不明だった。
2018年08月14日
8番目のマリア<美輪和音>
2014年の作品。部屋に閉じ込められた7人が共通の罪の告白を要求され、その後に相互投票で処刑者を決めさせられる。疑心から裏切りと罠が飛び交い、歪んだ展開に 進むかに見える、そこで真相は判るのかどうか。そもそもこの7人が集められた目的は何か。
2018年08月14日
牧神の影<マクロイ>
1944年の作品で、2018年に日本語翻訳された。翻訳が地味に進むマクロイの暗号小説だ。死んだ叔父が残した暗号が解けるかどうかを、一つの軸にして、主人公のまわり で起きた事件もあきらかになってゆく。複数の暗号表が登場して、戦地用の暗号を実際に解読作業する。それはミステリー小説にどの程度、溶け込んでいるか、それが 最大の課題かも知れない。
2018年08月14日
マーダー・リング<森村誠一>
2001年の作品集。7作からなる短編集だ、それぞれが異なる登場人物の視点で描かれる。警察の捜査も行われるが、森村作品のレギュラー刑事も複数登場する。都会と 社会で発生するトラブルが、大きな事件になるまたは関係する事が起きる。社会性とそこでの人間との係わりを犯罪を通して描くのは、この作者の手法だ。
2018年08月20日
繚乱<黒川博行>
2012年の作品だ。大阪府警のマル暴刑事を不祥事で辞めた二人は東京の不動産会社で働くがそこは競売物件を扱う会社だ。大阪の競売物件のパチンコ店を調べ始めると それに絡み群がる、利権者が現れて競い合う事になる。警察OBと、現役刑事の知人が絡み話しが進む。不死身かと思う主人公の落としどころと運命はどこか。
2018年08月20日
チェイス・ゲーム<今野敏>
1994年の作品だ。元傭兵の主人公は東京のバーで暮らす。元傭兵仲間が訪ねて来て、情報を聞いて山に逃亡する?。それを追ってイタリアのマフィア4人組が調べに来て、 バーの住人2名を人質にして、主人公に山に逃げた男の連れ帰りを要求した。主人公はマフィア2人と、プロの傭兵を追う事になった。
2018年08月20日
カーテンコール!<加納朋子>
2017年の作品だ。色々な事情で世間並みの大学生活と卒業と就職が出来ない女学生らが登場する。女子大学長は学校を閉鎖予定だったが、単位不足等で卒業出来ない生徒が 出てしまい、寮で合宿での共同生活をして卒業させようと考える。ただし異なる理由を抱える生徒らの見込みは暗い。学長らと生徒らの奇妙な生活が始まった。
2018年08月20日
ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を<太田忠司>
2018年の作品。クールビューティの警部補の妻と、イラストレーターの名探偵の夫が事件を推理するシリーズだ。ここに部下の女刑事が新登場して、上司の警部補の下で 働き事件に出会う、上司の事件解決力に驚きながら複数の事件が進んで行く・・・・。
2018年08月26日
水晶透視と犬<阿部徳蔵>
1931-1933年作品の2017年の復刊だ。アンソロジーでしか出会わない作家だ。発表時期からジャンルは広義の探偵小説のなるかどうかだろう。本の紹介では魔術小説集となっている。 この作品集には短編7作が収録されている。昭和初期の時代はジャンル分け出来ない、多様な作風の作品があったらしい。
2018年08月26日
夏芝居四谷怪談<大坂圭吉>
1941年作品の、2018年の復刊だ。1冊だが収録作は短編が1作だ。漸く多数の作品が復刊された大坂だが、戦争直前の作品は未確認なものも多いという。本作は8作書かれたシリーズ らしいが雑誌自体がほとんど未確認だという。1作でも珍しいと言える。
2018年08月26日
怪魔山脈<西條八十>
1956-1959年の作品の2018年の復刊だ。作者は少年少女向け雑誌にも発表したらしいが、少女向け雑誌が多く、逆に少年向け雑誌向けがなく、少年小説のイメージが薄いとの事だ。 主人公が雑誌にあわす傾向はあるらしく、少女が主人公かあるいは少女を含むグループが主人公となるようだ。この作者は個性的な人物を登場させるのが特徴だと思う。
2018年08月26日
飛ぶ孔雀<山尾悠子>
2018年の作品。中編2作と言うか、2部構成の長編と言うか。短編中心の作者にとっては、少ない長編だ。いくつかの不思議なイメージが存在する世界・背景で物語が進む。 続々と登場するイメージが継続する主題なのか、その場その場の情景描写なのかは読み進める事で判る事になる。火が燃えにくい不燃性の世界という、実感も意味も飛躍も 判りづらいイメージが底を流れる。
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2018/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。