推理小説読書日記(2018/07)
2018年07月03日
ST 化合 エピソードゼロ<今野敏>
2011年の作品。エピソードゼロとして、STという科学捜査部署が出来る前の事件で、菊川刑事が中心になり捜査本部が検事の予断捜査と誤認逮捕の間に、真犯人を捜査する事情を 描く。そこには自白主義が冤罪を招く状況を描かれ、科学捜査の証拠主義への移行の前段階があった。
2018年07月03日
万屋大悟のマシュマロな事件簿<太田忠司>
2017年の作品。俳優・遠藤憲一の表紙画像が印象的だ。地方都市のアイドルグループが脅迫されて、そこに所属する1人の父・万屋大悟が会社仲間と警護に当たる。そこで 付随的に発生する事件を解決してゆく、そして最後は脅迫事件も????。赤字の親馬鹿警護から個人警護の仕事を始めて行く事になり、主人公の過去も明らかになる。
2018年07月03日
福家警部補の考察<大倉崇裕>
2018年の4作からなる作品集だ。警視庁殺人課女性刑事・福家警部補はその外観と操作能力のギャップが大きい。倒叙方式で緻密な犯行を描き、同時に事件関係者の視点からも、 事件が描かれてゆく。犯人たちは予想外な展開で福家と出会い話すうちに次第に危険を感じる、知恵を絞った犯行や後始末を行うが、それが如何に曝かれるかを描く。 その過程を読者は推理してゆく事になる。
2018年07月03日
横溝正史探偵小説選3<横溝正史>
1940年頃の作品を集め、2008年に組まれた作品集だ。論創社から出版されている日本の探偵小説作家の作品集は100冊を越えている。ほとんどの本が出版されている 横溝正史だが単行本未収録作品がまだ見つかっているという、それを集めて5冊が出ているがその3冊目だ。少年小説と時代小説を集められた。
2018年07月03日
ぼくはまだ、横浜でキスをしない<樋口有介>
2016年の長編だ。主人公は離婚した母と横浜で暮らす。父から呼び出され、隠し子の女刑事の身元調査を頼まれた。女刑事と会い、次に少女と出会い、話す猫と会う。それらに 関わる事件を調べ始めた。過去に何か有った?、周囲の事件は謎で残っていた、奇妙な仲間の奇妙な捜査が行われた。
2018年07月09日
モップの精は旅に出る<近藤史恵>
2016年の作品。1話毎に視線の主人公が変わり、そこにレギュラーの掃除探偵・キリコが登場する、基本はビルの掃除人として。ビルに入っている色々な事務所・・・。 そこで働く人の視点なる。英会話教室の講師(2話)、ビルの共同の部屋で執筆する小説家とキリコの夫から描く。
2018年07月09日
永久囚人 警視庁文書捜査官<麻見和史>
2017年の作品。警視庁捜査1課科学捜査係文書解読班の鳴海理沙が同僚と新人らと文書が絡む事件を捜査する。ダイイング・メッセージがテーマのミステリー専門捜査部署 だと言える。容疑者を絞る過程を描くがそこはミッシングリンクテーマに似ている。全体としては不可解犯罪の捜査だ。
2018年07月09日
寝台特急「富士」の殺人者<草川隆>
1995年の作品。宮崎から出発して東京に着く寝台特急「富士」で戻り殺された被害者の前日を捜査する、そこで容疑者の1人も死んだ。列車から途中で降りて殺人を行い 再度同じ列車に乗る事は可能かという謎を捜査する事になる。
2018年07月09日
双貌のマリア<榊原姿保美>
1995年の作品。作者は耽美派と言われるがばくぜんとしている。刑事が捜査する話しの3作からなる作品集だが、動機や手法的に警察小説で無い要素を持ち込んだ。 息子を支配する母は腎臓を提供したと言うが・・・、誘拐事件捜査で5年前の誘拐事件とその家族が係わり・・・、連続殺人捜査から始まる中編は人間関係は長さだけ 複雑になる。
2018年07月09日
若狭小浜殺人紀行<石川真介>
2002年の作品だ。作家・吉本紀子はばらばら事件取材で若狭小浜に行き、女性と知りあいその家で誘拐事件が起きて係わりを持つ、それは殺人事件と過去の誘拐事件と 展開してゆくが、その中で遅まきながらもそもそも紀子はどうして事件に関わったかを考える事になる。
2018年07月15日
黒門町伝七捕物帳<>
1951-52年の作品を集めて、1992年に編んだ作品集。複数作家が共通キャラクターで書いた捕物帳から抜萃したアンソロジーだ。山手樹一郎・村上元三・高木彬光・横溝正史・ 角田喜久雄・城昌幸・野村胡堂・戸川貞雄・邦枝完二の作品で、作風は多様だ。後に陣出達朗がこのキャラクターで書き継いだ。
2018年07月15日
棟居刑事の追跡<森村誠一>
1995年の作品。ケアマンションの老女が向かいのマンションを望遠鏡で覗き、事件を目撃した。事件を捜査する刑事らは複数の事件の繋がりに気づき、そこに接点を探す。 事件現場はどこかを探すうちに、老女に辿り着くが・・・・・。細い手掛かりを辿り繋いで行く。
2018年07月15日
甲賀三郎・大阪圭吉レガシー<甲賀三郎・大阪圭吉>
1931-36年の作品を集めた2018年のアンソロジー。戦地で死んだ大阪圭吉の長編原稿を甲賀三郎が預かったが紛失したと言われている。戦中に死んだ二人は、戦前の少ない 本格派だ、甲賀の短編と中編に、大阪の代表的な短編集の「死の快走艇」を完全収録した。
2018年07月15日
義闘 渋谷署強力犯係<今野敏>
1993年の作品。刑事・辰巳と、整体師で拳法達人の竜門が主人公の武道家小説だ。プロレスラーが暴走族集団に襲わせて倒す、前身傷を負いながら戦う。それを知った竜門は 事情をしらべて、制止するために闘いを挑む、圧倒的に体力が異なる武道家との闘いに活路はあるのか。
2018年07月15日
イン・ザ・ヘブン<新井素子>
2013年の作品集。奇妙な味が漂うSFアンソロジーだ。お馴染みとなっている(楽しみとしている人は多い)、作者のあとがき解説が詳しいのだ。霊感?のおもむくままに書いた?? 作品とは・・・。書けば長くなる作者の短編集だ。穏やかな幕開けから、まさかの展開になる。
2018年07月21日
遺跡の声<堀晃>
1996年の作品集の再編集作品集だ。「宇宙遺跡調査員シリーズ」別名は「トリニティ・シリーズ」9作を設定された時系列に再編集して並べた作品集だ。個別の作品の発表時は 時系列順ではなかった。結晶知性体のトリニティと共に主人公の宇宙遺跡調査員が宇宙辺境の謎の地域・遺跡・事故?を調査する。その謎を解明してゆく・・あくまでもSF的に 解明する。トリニティとの出会いから別れまでも描かれる。
2018年07月21日
みんなの怪盗ルパン<>
2016年のオリジナルオリジナル・アンソロジーだ。小林泰三・近藤史恵・藤野恵美・真山仁・湊かなえが怪盗ルパン談を読んだ思い出を、作品に描いた。どの時代で誰をどの ように描くかは個性的だ、ジャンル不明の競作となった。
2018年07月21日
棟居刑事の悪の器<森村誠一>
2003年の作品だ。女性殺人事件、轢き逃げ事件、新興宗教絡み??の殺人事件などが起きて、それぞれの捜査本部と、それぞれの関係者が描かれてゆく。複数の事件の関連性を 考える捜査員が出ていて連絡会が開かれて行く、少数意見だが・・・。被害者の故郷の同窓人が東京で仕事を始めて、そこで事件に絡むと他の事件にも同郷人がいた・・・。
2018年07月21日
マティーニに懺悔を<今野敏>
1989年の作品。ハードボイルド小説だ、茶道師匠だが実は・・・の主人公と、教会神父だが・・・、の二人が関わった事件と被害者に関わって行く。闇の仕事人スタイルの ハードボイルドとアクションとのサスペンスの連作集だ。
2018年07月21日
マスカレード・ナイト<東野圭吾>
2017年の作品だ。東京のホテルのフロント女性とホテル員に偽装して張り込んだ捜査員のコンビを中心にした、ホテル探偵談「マスカレード・ホテル」事件の数年後の年末に 同じホテルの大晦日の仮装パーティでの殺人予告が警察に入る、曖昧な内容だがホテルに侵入捜査を決めて、またホテル授業員の協力と対立のなかで捜査が行われて行く。 ホテルに来る奇妙な人と起こる事件はホテル員とともに、捜査員も悩ませる。
2018年07月27日
ブッポウソウは忘れない<鳥飼否宇>
2016年作品。副題は「翼の謎解きフィールドノート」であり、主人公の学生が大学の鳥の生態を研究する教室に所属する。その研究室での教授・准教授・先輩院生等と 鳥の生態を研究する中での、色々な謎に出会い解明して行く。やけに詳しい鳥の生態の記述が特徴だ。
2018年07月27日
守友恒探偵小説選<守友恒>
長編1作と短編9作からなる作品集だ、作品の発表は1939-1949年であり、作品集の出版は2012年だ。戦前のデビューして、当時では少数派の本格ミステリの作者で、 探偵役の黄木陽平が登場する作品を中心に書いた。この時期の作者は戦時中に探偵小説が禁止されて他のジャンルに移る事になった。本作品集は黄木の登場作品のみを 集めている、長編「幻想殺人事件」の復刊が目玉か?。
2018年07月27日
フィリップ・マーロウよりも孤独<平石貴樹>
1986年の作品だ。普通作デビュー後に、更科丹希が探偵役のミステリーを発表していたが、本作は作品内容が一気に変わった。題名から見てハードボイルドのスタイルだ、 学生紛争が激しかった頃の時代を背景に、手記を繋いだ更生は俄にはつかみ所が判らない。
2018年07月27日
探偵の流儀<福田栄一>
2013年の作品。小さな探偵事務所の所長・嶋岡が襲われて危篤状態になった、所員の二人の探偵と一人のアルバイトは、事務所の存続に悩み、嶋岡の姪??らしき女性 に所長代理を持ち掛ける。所員らは担当している事件を調べると同時に、嶋岡を襲った犯人を調べる。それぞれの事件の結末と探偵事務所の行く末はどうなるか。
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2018/07に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。