推理小説読書日記(2018/06)
2018年06月03日
闇椿<皆川博子>
1988年の作品、旧題「北の椿は死を歌う」。幻想小説を中心にした多ジャンルの作者だが、本格ミステリもかなりある。幻想やSFや怪奇をも手がける作者なので、展開を 追ってもなかなかミステリだと思い切れない気持がある、雰囲気もストーリーもどちらに傾いていっても合いそうに途中まで進むからだ。改題したので題から、ミステリか判らなく なった。
2018年06月03日
夢のカルテ<高野和明>
2005年の作品で、阪上仁志との共作だ。捜査で心を病んだ主人公の刑事がケアを受けたのが、もう一人の主人公の「夢を読める(表現は曖昧)女性カウンセラー」だった。 二人が4つの事件で夢を読み事件を解決してゆくが、それと併行して長編としての物語も進んで行く。SFなのか恋愛小説なのか、サスペンスなのか警察小説なのか、だが 本格ミステリでもある。
2018年06月03日
菩提樹荘の殺人<有栖川有栖>
2013年の短編・中編4作からなる作品集だ。火村英生と作家・有栖川有栖が大阪と兵庫の警察とに協力して推理を展開する。火村が犯罪と犯人を推理して、警察がそこから証拠を 集めて犯人逮捕する。内容は論理展開のパズラーでトリックではなく、ロジックを展開する。「菩提樹荘の殺人」で刑事らを集めて講義風に推理を展開するのは愉快だ。
2018年06月03日
秘めた絆<夏樹静子>
1989年の中編が1冊になっているので薄い本だ。見た事はないが初出本は短編との作品集だったようだ。サスペンス色が濃い、子供が出来ない夫婦の夫が秘書との間に子が出来た、 おなじ頃に妻も妊娠する、そして双方が子を育てて行く。数年後に子が育ち、夫は2人の子が自分の子か疑いはじめた、そして調べようとする・・・・・。
2018年06月03日
暗黒館の殺人<綾辻行人>
2004年の超長編だ、分冊だが版型で冊数は異なる。中村青司が設計した館を舞台にした作品の館シリーズの1作で最大長編だ。ストーリー的にはこれ以前の作品を下敷きにした 内容を含む。主人公が曖昧なシリーズとも言えるが、本作も展開も主人公ももちろん構成も読者に予断させなく、それが狙いと密接になっている。見所が多く盛り込まれているが、 特に後半に多いのが如何にもミステリだ。
2018年06月09日
TATSUMAKI 特命捜査対策室7係<曽根圭介>
2014年の作品。主人公の配属先は奇妙な捜査員だけが集まるがそのトップの辰巳麻紀警部補は上昇指向というか、思いついた見込み捜査をひたすら走り周囲の迷惑は無視すると いう、現場あらしというか欠陥人間というか・・・。少なくとも部下は迷惑としか言えない。それで捜査が成功するかどうかは読んでからの楽しみだ。
2018年06月09日
復讐の花期 君に白い羽根を返せ<森村誠一>
1998年の作品。主人公は余命短いと知り、かって夫婦を襲ったヤクザへの復讐を狙い、その本拠地に乗り込む。そこではヤクザと権力者が町を仕切るがごく一部の反対勢力が 集まり反抗していた。過去の履歴と一芸を持つ人が集まりヤクザに対抗して行く。その結末は???。
2018年06月09日
密闘 渋谷署強力班<今野敏>
1999年の作品の改題。渋谷署強力班刑事・辰巳吾郎と知人で整体院の療術師の竜門光一が主人公だ。竜門は拳法の達人で、辰巳が持ち込む事件にやはり別の拳法の達人がいると 知り関わって行き、そして1対1での対決となる。謎の拳法の達人同士がそれぞれの思いを知りながら戦う。
2018年06月09日
佐藤春夫集<佐藤春夫>
作者が1916年から1951年に書いた短編を再編集して、2002年に出版した作品集だ。純文学作品や幻想味の強い作品の方が知られるが、ミステリ味の強い作品も多いと判る。 20作品収録でその内容も多彩だ。作者は耽美派とか浪漫派とかと紹介されているがこの作品内だけでも、非常に多彩だ。
2018年06月09日
ミリオンカの女 うらじおすとく花暦<高城高>
2018年の作品だ。2010年に書かれた「ウラジオストックから来た女」に登場するお吟が1881年の函館で活躍するが、本作はその翌年の1892年に本店のあるウラジオストック に戻る所から始まり、1900年に再度函館に来るまでを描く。当時のロシアの情勢や、混乱模様を資料を駆使して描く。ロシア人と中国人と日本人とその他の国の人々が 入れ混じっている。社会情勢や政治情勢や警察制度や裁判制度が現在と大きく異なり、そこでの事件は未知の面白さがある。
2018年06月15日
金沢能登殺人周遊<石川真介>
2001年の作品。作家探偵?・吉本紀子は予言者の取材と書かなくなった女流作家を探して能登に行く。2つの異分子を繋ぎそこなった様な奇妙な事件と、ストーリーが 展開する。捜査側も異様な設定だから、例外が例外を捜査する事になる。
2018年06月15日
黄金の麒麟<仁科透>
1994年の作品。八百屋お七の放火事件を1つの要素として、隠密同心が悪の陰謀に対抗する話しだ。闇の盗賊団と秘宝探しの黒幕は誰か、時代伝奇小説と捕物帳と剣豪小説と 忍者小説とが混ざり、わずかの歴史小説の要素もある、ハイブリッドのストーリーが展開する。
2018年06月15日
胡蝶の夢<榊原姿保美>
1995年の作品。作者は名前の字を変えた事がある。幻想的な、怪奇的な、内面的な、入れ混じった血の繋がりと家系と親子関係のなかで事件が起きる。主人公の少年もその 血縁関係の1要素だ。事件の関係者がその視点で中から事件を描く。
2018年06月15日
寝台特急出雲 殺意の山陰路<草川隆>
1987年の作品。寝台特急が活躍した頃に、芸能界界を舞台にした事件を描く、トラベルミステリーであり、密室とアリバイ崩しが展開する。音楽と録音テープが小道具として 、謎とトリックに絡む。
2018年06月15日
橘外男集<橘外男>
1937年から1956年の作品を、2002年に復刊させたアンソロジーだ。作者は多様なジャンルを書いたため、規格外とも言える。私小説分野から、怪談・怪奇小説・秘境小説・ ドキュメント小説・・・と広く、台も日本だけでなく全世界に拡がる。
2018年06月21日
桜子は帰ってきたか<麗羅>
1983年の作品。第二次世界大戦終戦時の満州から日本に脱出しようと桜子らを中心に始まる、時間が流れて戦後しばらくの日本から娘の日本帰国を待つが戻らない父を描く、 それから時間が経ちその息子から描かれ父が旅先で自殺したが理由が判らない、戦後30年以上経ち北朝鮮からある人物が日本に潜入してくる。その目的はなにか・・33年まえに 何があったか、10年前の自殺の真相は・・・再度事件が動く。
2018年06月21日
熊野古道殺人事件<内田康夫>
1991年の作品。浅見光彦は作家・内田に無理に連れられて、和歌山・熊野からの補陀落渡海の再現の実験?の取材に行く。ところが熊野行くと殺人事件に遭い、それが補陀落渡海 の再現とも関わっていた。
2018年06月21日
空魔鉄塔<大下宇陀児>
戦前の作品を集めて20182年に復刊された作品集。作者の少年少女探偵小説を集めた作品集で、主に戦前作品が集められた。新聞連載後に単行本で出たが、時間が経過した 作品の復刊となる。ただし単行本は戦後まもなくであり、内容も変えているとされている。単行本も雑誌も入手困難で、その差は判らない。
2018年06月21日
デビュー<今野敏>
1992年の作品。作者がデビュー初期に書いた実は高い理系能力を持つ学生がアイドルとして、芸能界で活躍する。その秘密をいくらかの少数人のみが知っている。 正義感に強い性格が出会った事件を、仲間と共に解決して行くという作品集だ。
2018年06月21日
みんなの少年探偵団2<>
2016年のオリジナルアンソロジーだ。江戸川乱歩の少年探偵団を主人公にして、現代の作者が書いたアンソロジーだ。有栖川有栖・歌野晶午・大崎梢・坂木司・平山夢明 の作品を集める、時代や設定が入れ交じり奇妙な世界を異なる作者がそれぞれの感覚で描く、奇妙な内容だ。
2018年06月27日
裁判百年史ものがたり<夏樹静子>
2010年作品。小説ではなく、ノンフィクションで、法廷・裁判の事件から作者が選んだ12の話しを描いた。有名な事件もあれば、固有名詞を隠した話しもある。 事件の大きさではなく、裁判としての注目度とか歴史の境目的な視点から作者が選んだ。裁判に関わる人に注目したものもある。
2018年06月27日
涙香迷宮<竹本健治>
2016年作品。「いろは48文字で描くいろは歌」は、パズル性と遊戯性を持つが明治の新聞王・黒岩涙香も多く残していた。天才囲碁棋士・牧場智久らが巻き込まれた 事件ではそこに暗号が隠されると考えた。涙香はごもくならべを連珠という競技に変えてそのルールを考えた最初だとされた。そこにもまた暗号が隠されたか?。連珠 殺人事件とも言える。
2018年06月27日
小栗虫太郎集<小栗虫太郎>
2003年に編まれたアンソロジーであり、作品は1933-1943だがそれは作者の活動期とほぼ同じだ。同時代の作者のなかでは復刊が多い方だ。特にシリーズものの復刊が多い?。 本集はノンシリーズ10作を集めている、多くは知名度が高い作品だ。
2018年06月27日
怪しい店<有栖川有栖>
2014年作品。探偵役の准教授・火村英生と推理作家・有栖川有栖が活躍する作品集で5作収録する。店をテーマにした作品集だと言う、だが変わった店も含み、店は裏テーマ 的だ。火村シリーズで見た時の描き方に珍しい手法も含まれる。パズラーミステリ作品集であり、そも意味で凝っている。
2018年06月27日
サランヘヨ 北の祖国よ<森村誠一>
2011年作品。題名から内容が予想しにくいが、妻を亡くした作家が韓国ツアーで虐殺事件現場に行く、そこで感じた事が強く同行した観光客と帰国後も会を作り交流した。 色々な人が含むその会の交流の中から、色々な事件に係わり、作家の妻の死の真相解明に関わって行く。発生した事件を棟居・牛尾刑事や私立探偵・岡野が調べて、作家と 会のメンバーも絡んで行く。
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2018/06に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。