推理小説読書日記(2018/05)
2018年05月04日
仮想年代記<>
1995年のオリジナルアンソロジー。「タイムマシン生誕百年」で横田順彌の論功と、梶尾真治「時の果の色彩」・大原まり子「女と犬」・かんべむさし「傷、癒えしとき」・ 堀晃「10月1日を過ぎて」・山田正紀「わが病、癒えることなく」を収録する。時間テーマだ。
2018年05月04日
ビッグアップルは眠らない<夏樹静子>
1982年の中編1作と短編4作の作品集だ。表題作は半数のページ数の中編であり、ニューヨークから事件が始まり、日本各地での時間を異なる事件が描かれて行く。それ ぞれの繋がりが何かがポイントとなる。この時期の作品はトリック性と本格性が背後に強く流れる犯罪小説風の展開を見せる。
2018年05月04日
精霊蜻蛉の川殺人事件<平野肇>
何故かミステリーには動物・植物の生態を扱う事が多いが、昆虫に限ってもやはり多い。昆虫好きで詳しい探偵役が複数登場する事自体が謎だ。このシリーズは昆虫好きの巡査の 捜査を釣り好きのライターが語ると言うシリーズだ。虫の心が判る探偵が活躍するミステリーは該当事件は少ないとも思えるのだが・・・。
2018年05月04日
棟居刑事の見知らぬ旅人<森村誠一>
主人公は代行業を同じ自衛隊特殊部隊OB仲間らと始めた、そこでは民間警備的な業務にまで手を広げた。昔の恋人から失踪した妹の捜索を頼まれて自身の民間調査組織を使い探し始めると、 そこではVIPの接待との斡旋業が絡むらしいと判って行く。同時に関係する失踪もあり、そして海外VIPの急死も起こった。私立探偵・岡野や刑事・棟居たと情報交換すると、国際問題 が絡み他国内の権力抗争の中に巻き込まれて行く。
2018年05月04日
ゴーグル男の怪<島田荘司>
ゴーグルを付けた男が事件現場で目撃される、その奇妙な外観と意味と理由は何か。一方である人物の少年時から体験が描かれて行く、立地する企業との係わりが描かれてゆく。 それは伏線なのか、動機なのか、????、あるいは無関係?。ホラーかSFか、社会問題か、奇妙な雰囲気を秘めて話しが進んでゆく。
2018年05月10日
残照岬<笹沢佐保>
1987年の作品。家族の日常生活とその陥穽を描く岬シリーズと書かれている。ただし雑誌連載から題名変更という事で、当初からの構想ではなさそうだ。複数の事件が身近で 起こるが、ミステリー色や捜査・探偵ものとは異なるようだ。
2018年05月10日
藁にもすがる獣たち<曽根圭介>
2011年の作品。3人の登場人物が併行して描かれる、いかにも小者感が漂う人が楽な生活と金儲けを夢見て、安易な金儲けに手を出すとどのような展開が起こるのか。情けない 人が情けない事を夢見て、結局は情けない結果になる。読者の感情移入を避けさせる事が目的だとしか思えない奇妙な作品だ。
2018年05月10日
黄昏たゆたい美術館<柄刀一>
2008年の作品。絵画修復士・御倉瞬介が主人公で名画を話題にして、絵画に関するいろいろな事に絡む事件の謎を解く。謎とトリックが盛り込まれた、本格ミステリの連作だ。 絵画ミステリーとのバランスから見れば、謎とトリックは比重は小さいとも言えるが全体に謎が漂う短編だ。
2018年05月10日
精鋭<今野敏>
交番巡査が所轄地域課に配属され、何かのきっかけで機動隊に応募し合格し、そこで訓練を受ける。そこで過ごす内に、何かのきっかけでSATの応募し入隊する。そしてそこの 生活に慣れてゆく。各所属では色々な活動と人との繋がりが出来、異なる部署や場所での訓練が絡む。新人警官がひたすら取り組む事で、本人も予想しない部著に移りながら 精鋭と呼ばれるその生活に順応して成長する姿を描く。
2018年05月10日
消えたダイヤ<森下雨村>
なんと1930年の作品だ。日本の本格ミステリは太平洋大戦後からと言われるが、昭和初期のこの作品は古風な面もあるが本格ミステリの風味もある。作者は少年・少女向けの 媒体に書いた作品が多く、本編もその一つだ。色々なジャンルを書いたとされ、その一つが探偵小説になったとされる。
2018年05月16日
凍土の狩人<森村誠一>
1991年の作品。病院長夫妻は息子に跡を継がせたいが浪人し見込みがなく、遊び相手用の女性をさらい金で隠蔽を計る。歪んだエリート意識だが、ついに金で決着出来ない 女性を殺害した。一方別の殺人事件を調べる警察は、捜査中に別の女性事件に絡んで行く、容疑者は犯人が金絡みと考えて調べ始め、査過程で病院長に疑問を持つ。
2018年05月16日
玄界灘殺人行<麗羅>
1986年の作品。ゲリラの主人公は引き取って妹として育てて来た女性が夫殺しで捕らわれ自害したと知った。真相を調べる為に日本に戻りそして調べる内に女性の故郷の 韓国に渡り、その独特の社会の中に入り込んで行く。韓国と九州をまたいで、過去と現在の人の絡みを調べて行く。
2018年05月16日
水谷準集<水谷準>
2002年に組まれた個人復刊作品集。1921年デビューから1953年までの短編28作を集めた。初期の幻想ミステリを中心に、途中から増えたユーモアミステリーを集めた。 昭和初期から戦前の作品が多く、その時代を感じる作品が多い。
2018年05月16日
悲体<連城三紀彦>
2004年の雑誌連載作品を作者の死後に2018年単行本にした。作者の手で単行本になっていないので連載時から加筆されていない。子供の頃に消えた母を探す事を考えていた 主人公は日常生活を放り出して韓国に行く、電話した妻から離婚話しを聞き、現地で観光案内したいという女性と出会う、待ち伏せだろうか。二人で韓国内を彷徨う事になる。 小説と併行して作者の家族を書いたエッセイが交互に登場する。奇妙な構成で進行する。
2018年05月16日
笑ってジグソー、殺してパズル<平石貴樹>
1984年の作品だ。作者のミステリーのデビュー作だ、当時は多かった密室を名探偵が解いて行く構成だ。ジグソーパズル愛好一家で起きた、密室事件を若き藤谷健介刑事と そもそも何故現場にいるのかの法務省調査官・更科丹希21才が調べる。パズラーの本格ミステリーだ。
2018年05月22日
黒の文化財<笹浩平>
1976年の作品。優れた塗料研究者の主人公が関わる複数の課題を通して、陰謀や犯罪にも関わる事になる。塗料は塗る対象物を保護してその寿命や品質を一新させる。そこには 機密・秘密・情報・ビジネス・文化等が絡む。その一つに文化財の修復や保護がある、船舶の塗料は国家的な機密だ。
2018年05月22日
我ら荒野の七重奏<加納朋子>
2016年の作品。「七人の敵がいる」のミセス・ブルドーザーこと山田陽子が活躍する、作品だ。本作ではトランペット演奏に憧れた息子の中学受験から始まり、中学での 吹奏楽部入部とそこでの活動に、父兄として関わる事になる。またもやの親馬鹿での行動が展開して行く。
2018年05月22日
死刑、廃止せず<石川真介>
2002年の作品。何故か吉本紀子と上島警部も登場するが、話しの中心は息子の殺人者が死刑にならず復讐を狙う男と、死刑廃止論者と死刑推進論者の対立とになる。 学説の争いかと思われたが、現実はそうでは無い事情や動機が現れて来る。テーマは重いはずだが、奇妙な展開になる。
2018年05月22日
アムステルダムの詭計<原進一>
2016年のデビュー作だ。主人公はアムステルダム運河殺人事件の関係者の知り合いでその結末に不審があった。この事件は松本清張が「アムステルダム運河殺人事件」で ドキュメント小説として書いているがその結論も不満だった。主人公はオランダに行き調べたりして長年関心を持つが、ついに真相に迫る。メタ・ミステリの手法で 描いてゆく。
2018年05月28日
熱砂に眠れ<仁科透>
1987年作品。商社の国際部の主人国はサウジアラビア訪日団の接待役を行った。主人公の友人が赴任先のサウジで死んでおり、その妹と会った。日本でサウジの王女と 担当者と出会った。その後にサウジに赴任した主人公は色々な事件に巻き込まれて行く事になる。
2018年05月28日
ペガサスと一角獣薬局<柄刀一>
2008年作品。世界を巡る写真家の主人公は奇妙な事件に遭遇するという、短編5作からなる作品集だ。奇妙な設定と背景での極めてトリッキーな本格ミステリであり、 パズラー小説だとも言える。幻想と奇想との中でのトリックを楽しむ。
2018年05月28日
将棋推理 迷宮の対局<>
2018年に編まれたアンソロジーであり、作品は1928-1992と広い。9作が取られていて高木彬光「棋神が敗れた日」のような有名作からやや珍しい作までを含む。 山村正夫・斎籐栄の将棋小説作家や、より将棋に近い山沢晴雄(誤植がある)や藤沢桓夫も含まれる。
2018年05月28日
勇者の証明<森村誠一>
2006年作品。余命短い作家の主人公が、太平洋終戦直後に4人の子供で関東から長崎まで少女を送り届けた時の事を思い出し、その地と当時の関係者を訪ねて行く。 いじめ教官や上級生とのやりとりと、無謀に思える子供だけでの旅行と途中で知り合った人々を思い起こし、生存者を訪ねる。
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2018/05に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。