推理小説読書日記(2017/11)
2017年11月05日
蝋美人<横溝正史>
金田一耕助が登場する中編3作と短編1作からなる作品集だ。金田一が東京の自宅兼事務所で探偵をしている状況での事件簿となる。舞台となる場所は、軽井沢と東京近辺 の海岸や隅田川となる、等々力警部も何故かあちこちに出向く。横溝の猟奇的世界を背景にしたものが多い、本格推理の作品集だ。
2017年11月05日
暗黒街の群狼<ジェームズ・ハリス>
活劇絵小説と題す。ハリス作となっているが、原作なのかテキストの執筆かは明かではない。内容は少年向けの活劇冒険であり、悪の組織に少年が挑む展開となる。 解説によればこの作者の作品は他にもあり、「暗黒街の群狼」にも続編があるようだ。
2017年11月05日
危険なビーナス<東野圭吾>
やや複雑な親戚と過去を持つ主人公の獣医は腹違いの弟がいる、海外にいる筈の弟の妻が突然に現れて「弟が失踪してその捜索の協力」を依頼された。複雑でやや疎遠な一族 と接触を始める事になる。遺産相続に関する議論が始まる事になるが、一方では主人公の母の死とそれより昔の父の死に、不審な謎を持つ。複数の謎を追うことになるが、 妻と言う女性も謎だが深く関わって行く。
2017年11月05日
うずき<園田てる子>
昭和35年の女性心理を描いた作品だ、ほぼ男性との情事を描く事になる。揺れ動く訳だから辿り付く先が判らなく、スリラーともサスペンスとも言えるような状況で話しが 進む、それ故に変格探偵小説とも言えるが広義の意味だ。
2017年11月05日
屍人荘の殺人<今村昌弘>
2017年度鮎川哲也賞受賞作だ。バイオテロによるゾンビに囲まれた状況で起きる密室殺人を描く。外は囲まれた閉じられた空間で、事件はその中の限られた空間で小さな 閉じられた空間で起きる。細部は特異な設定ならでの、内容が多数盛り込まれる。全編が本格推理ならではの、ケレン身に溢れるが、論理的に解決に辿り着く。
2017年11月11日
ブルーローズは眠らない<市川優人>
2016年鮎川賞受賞作家の第2作。アメリカらしき舞台でマリアと九条が現代の事件を捜査して、そこに絡む過去の事件も調べる。青いバラが2箇所で作られた、遺伝子操作 のよる深い青を研究者が造り、薄い空色を牧師が造った。そこで発生した事件を調べて行くと、双方の関連と過去の事件が絡む。青いバラの秘密を追い、それが事件解明に繋がる。
2017年11月11日
推理は1日2時間まで<霧舎巧>
個室レンタルスペースに集まる奇妙なオタク人間たちとそこで起きる事件・トラブルの連作風長編ミステリだ。登場人物・舞台・事件が全てオタク風であり、苦手な者には意味が 判らない。残念ながら意味が判らない言葉で書かれた意味不明の人物らの意味不明の事件のために、謎に達する事も出来なかった。
2017年11月11日
マルタの鷹を撃て<高柳芳夫>
1990年に書かれたノルウェイを舞台にした、ロシア国内の勢力争いらしき陰謀を巡るスパイ小説だ。そこに絡む複数の日本人は巻き込まれたかあるいは、・・・。ゴルバチョフ 時代のロシアと取り巻く世界を舞台にした、スパイ・陰謀小説だ。
2017年11月11日
スーツケースの半分は<近藤史恵>
4人の女性友達が中心に話しが進む、フリーマーケットで購入したスーツケースを持って海外旅行に行くと何かが変わる。それをモチーフにしてまずは4人のそれぞれの 海外旅行絡みの事が描かれる。その4人の周辺の別の人物が主人公にして、旅行の話しが続いて付く、全9話はある時は強く繋がりある時は弱い繋がりで展開する。
2017年11月11日
棚の隅<連城三紀彦>
短い短編の10作からなる短編集だ。波瀾万丈とまでは行かないが、短いなかにそれぞれドラマがある。別々の話しだが、どこかに共通点・類似点を見出すかもしれない。
2017年11月17日
恋愛今昔物語<佐々木丸美>
昔話から題材を取るか、あるいはモチーフにした、恋愛小説の連作短編集だ。18編からなり、長さからは掌編と呼ぶべきかもしれない。自然の情景を描くが時代や地域感は ぼやかす。登場人物の詳細・感情も作品長さ故か簡単に進める、それは昔話や噂話の感がある。
2017年11月17日
暗殺請負人 刺客大名<森村誠一>
シリーズ3作目だが、前作からは少し間が空いた。それ故に最初にシリーズ梗概がある。特異な設定での剣豪・忍者らの伝奇風の強い活劇時代劇だ。オムニバス風に登場人物が 入れかわるので、ストーリーの把握が面白く読む為には必要だ。そこに新しい敵が追加で登場する。
2017年11月17日
月明かりの男<マクロイ>
マクロイのレギュラー探偵・ウィリング博士が登場する長編だ、シリーズは地味に訳されてきてあとは残り1長編となったようだ。1940年の作らしく、その時代の科学捜査を描く。 模擬犯罪とか模擬殺人とか、模擬嘘発見器だとか、ミステリファンが喜ぶ話題が設定された作品だ。
2017年11月17日
ID0-1<管浩江>
作者の長編は、幻想系が強い・多いといわれていた。本作は、アニメの手法ともアニメのノベライズともされるが、ハードSF的な手法と内容にも見える。それはリアルという 意味ではなくて、読者に与える感覚だ、小説で読むと多数のキャラクターたちはそのサイズと姿が薄れて人格を強く感じる。そこではアニメ感が揺れ動く事になる。
2017年11月17日
七人の名探偵<>
新本格30周年記念アンソロジーだというし、名探偵が並ぶとも帯に書かれている。登場作者は麻耶雄高・山口雅也・我孫子武丸・有栖川有栖・法月綸太郎・歌野昌午・綾辻行人だ。 デビュー以来時間が経過した、それ故にもはや帯文とは食い違いが生じている、それはむしろ自然だ。パズラー本格色は減り、名探偵の純度も減る、それでも本格と言える作が 主流だ。
2017年11月23日
小酒井不木集<小酒井不木>
怪奇探偵小説傑作選の1冊で、怪奇とSF的な短い短編と、それよりは長めの短編を集めた作品集だ。後者には本格味が濃い作品も含まれるが全般的には、怪奇色が強い。 アンソロジーに採られる作品もいくつか含まれる。大正から昭和の短い活動期間だが後世に作品が繰り返し復刊されている。
2017年11月23日
ベッドの中の他人<夏樹静子>
10作からなる短編集であり、連作ではないが日常的な背景の作が多く、手法も多様だ。短編ならでは仕掛けとまとめかたがあると示す作品群だ。異なる描きかたで、 短い作品ならではの試みを示している。
2017年11月23日
凍土の密約<今野敏>
警視庁公安刑事・倉島警部補が登場するシリーズの3作目だ。過去の作品の登場人物の幾人かが採用登場するが、期待しても登場しない人物もやはりいる。登場人物が ストーリーに密接するからそれ自体がサスペンス的だ。ロシアの関わるかどうかの事件を担当させられ、そこで次第に真実に近づく。
2017年11月23日
棟居刑事の青春の雲海<森村誠一>
長い時間経過と多数の人の繋がりとを背景にした、作者得意のストーリーだと言える。人間の繋がりは偶然も含まれるが伏線を張る事で、ストーリーに取り込む。実際の 警察捜査には失われた鎖的な繋がりが捜査で明らかになる事はありそうだ。棟居の私的な出会いが刑事として再会するその展開は・・・。
2017年11月29日
蜘蛛の巣屋敷<横溝正史>
昭和34年に出版された捕物帳で、「お役者文七捕物暦」シリーズと呼ばれる、短い期間に集中的に書かれた。本作は長編であり、文七の複雑な身の上と、周囲の登場人物・ 大岡越前や池田大助設定と、背景の大がかりな藩と国を揺らがす陰謀や伝奇的なストーリーと、屋敷と洞窟とかの場所は、横溝正史の世界を全て盛り込んでいる。
2017年11月29日
怪人ジキル<波野次郎>
紹介者によれば、戦後日本の作品でも、その内容が「はちゃめちゃ」すぎる面で貴重だと言う。テキストだけでなく、その挿絵も相当に滅茶苦茶だと言う。解説がないと間違い かと思うが原文のままだという。そして、アイデアに元ネタがありそれを自由に展開させたらしい。終わりに近づくとエスカレートする。
2017年11月29日
岩田賛探偵小説選<岩田賛>
戦後デビューした岩田賛は情報の少ない作家だ、今回に別名義を含めた作品リストが公表されて、それ以前の解説の不正確さが判った。本格風のストーリーを短い枚数に詰め込む という内容になっている。用語がその時代のものが含まれ、漢字やかなを現代文に直しても熟語として残る。機械トリックやアリバイ崩しを説明するときに、この熟語が並ぶ と理解が難しい。時間を多く掛けて読んでも分かり難いのは、時代とジャンルも影響する。
2017年11月29日
毒のある果実<司凍季>
1991年デビューした作者の初期の作品だが、作風が異なるためかその後あまり知られていない。3人称で視点を登場人物を次々変えて描く、そこには被害者も探偵役も犯人も 含まれる事になる。叙述性が高い内容なのだが、読みやすくは書き分けられていない。そこはミステリー的に厳しい。
←日記一覧へ戻る
2017/11に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。