推理小説読書日記(2017/10)
2017年10月06日
神風特攻第一号<幾瀬勝彬>
太平洋戦争を題材にした5作からなる短編集だ。時代当時をドキュメント風に描く作がある、後年から戦時を振り返る構成もある。主人公は事件に関わる一般の兵士となる。 仲間、同期、戦友という描き方が多い、場面には有名な戦いが使われ登場人物がいる。戦記小説の部分もある
2017年10月06日
曙光の街<今野敏>
元KGBの諜報活動員でソ連崩壊後に解雇されたヴィクトルは闇の殺し屋の仕事を受ける。警視庁公安部・倉島警部補は現場は不慣れだが潜入する殺し屋の対応を命じられる。 元プロ野球選手の兵藤はヤクザの用心棒的な仕事を行う。公安の情報屋と裏の兵器売買とを行う男、右翼団体代表、公安課長と係長、ヤクザの組長と新入り、ロシアの組織員 、と少女情婦、多彩過ぎる登場人物での暗殺が描かれる。
2017年10月06日
棟居刑事の荒野の証明<森村誠一>
企業のトップからいきなり主人公は左遷されてゴルフ場に仕事が変わる、同時に離婚にもなる。職場で若い女性と知り合い、近くで起きた事件を2人で調べる事になる。そこで 互いに当事者と判り他の事件に巻き込まれ、深く犯罪的にも関わる。本庁・棟居と新宿西署・牛尾刑事たが事件を調べると関連する別の事件が絡まって来る。そこの一部に 主人公らもいた。捜査から犯罪者となった主人公を含めて、展開して行く。
2017年10月06日
乗り遅れた乗客<夏樹静子>
新潮文庫版で6作の短編からなる作品集だ。個別の短編だが、事件の一面の奇妙に見える部分とそこに関わる場面を描く。その場面は事件全体では、大きいとも部分とも 言えるが、それは短い解決編的な部分で明かされる。その小説的な面白さの場面が、如何に事件の一部になるかの描き方が面白い。
2017年10月12日
金田一耕助の新冒険<横溝正史>
短編を長編に書き直した後に短編集から削除された、元の短編を集めた作品集の2冊目だ。金田一耕助物の本格ミステリ短編であり、題名の長編を読んでいても楽しめる。 起承転結のバランスを重視する長編に対して、短編は主題を強調する切れ味が特徴だ、それは別の作に思える。
2017年10月12日
ラプラスの魔女<東野圭吾>
ミステリーにおける奇蹟とは何か。奇蹟を起こした様に見える人物が登場する、科学者が事件?事故?を調べるが事故でなければ奇蹟だ起きた状態だった。そこで不思議な 女性に出会う奇蹟を起こすかあるいは謎を解く様に見える。特殊な能力を持つ人物が存在するのか、それはどのような能力なのか。
2017年10月12日
シャルロットの憂鬱<近藤史恵>
子供のいない共稼ぎの夫婦が犬を飼うことにした。元警察犬のシェパードという大型犬だが、みかけと異なり賢くやさしい。妻の目から見た生活が描かれ、その犬=シャルロット が加わった生活と、それから起きる事件とを描き、解き明かす。
2017年10月12日
ストロベリーナイト<誉田哲也>
過去にトラウマを持つが故に刑事になり、上昇指向だが思いこみが激しく論理的でない女性主人公だが、なぜにグループ長になっているかが最大の謎だ。それ故に周囲から 反感を受けるが、なぜか信奉者というか協力者というか仲間というか、孤立しないのが不思議だ。本人は不満かも知れないが、事件がたまたま落ち着く所に進むのが また不思議だ。
2017年10月18日
影の姉妹<佐々木丸美>
突然現れるそっくりの姉妹とその娘、そしてその小間使いとが、秘密を受け継いで行く。幻想的な謎を背景に時代が重なってゆく。登場する女性を章題にして進む。 時代感と生活感が希薄な展開で終始、夢と別の世界と時代だと思わせる。
2017年10月18日
孤独な放火魔<夏樹静子>
新米の主人公の裁判官の目から見た裁判員裁判の短編3話からなる連作だ。3人の裁判官と8人裁判員が、法廷と審議で検察と弁護士の主張を裁いて行く。刑事裁判の原理と 、検事と弁護士の対立から、裁判官が裁判員に刑事裁判での判断方法を質疑しながら合議を進める。その中での合議と裁判員裁判の手法を同時に描く。原告と被告の争点を明か にして個々に判断を進めて、判断を確定して、刑期等を決める過程も描く。
2017年10月18日
燻り<黒川博行>
2000年頃に書かれた短編集だ。大阪のヤクザと裏の家業と警察を描いた犯罪小説が中心だが、異なるタイプの小説を含む。大阪弁の会話と世界を描き独特の雰囲気が特徴だ。 色々な家業や品物で金を稼ぐものたちが、それぞれの方法で競いあう様子を描いてゆく。
2017年10月18日
女探偵・心臓を抉る恋<司凍季>
亡き夫の探偵所を継いだ妻が知り合いを頼りながら、事件に絡む。依頼事件から始まり、容疑者になったり利用されたり、どうも危ない主人公だ。主人公がいまいち頼りないと その目で描かれる話しは、いささか見逃しと勘違いが重なり、余分に絡まる事になる。
2017年10月24日
幻肢<島田荘司>
脳科学を学ぶ医学生女性が交通事故で記憶を失う。脳に刺激を与える実験を行う大学研究室で、刺激を受けると変化を感じる。幻想・幻覚の中に幽霊のように恋人が見える。 その相手は存在しない器官の感覚を研究していた、その会話を思い出す、幻覚と話す??と次第に思い出す。
2017年10月24日
暗殺請負人 刺客往来<森村誠一>
大名の後継者の剣術の達人は藩邸に住むようになるが、暮らした長屋の仲間を殺される。腹違いの妹のくノ一と仇討ちに乗り出すと、勢力争いに巻き込まれ、複数の敵との戦いが始まる。 続々と新しい敵があらわれ、その残党も襲う展開になり、活劇が続く。
2017年10月24日
幽霊横行<魔子鬼一>
戦前から戦後まで長く活動した、作家の作品集だ。その時代らしき作品を書いたようだ。戦前は怪奇と幻想がテーマになった作品だ、それが戦後になると本格を目指した様に 思える、それが変格か本格かは境目だが。
2017年10月24日
ラン迷宮<二階堂黎人>
大長編とともに欧州を巡り、日本に戻った探偵役・二階堂蘭子とワトソン役の黎人のコンビが3作の中編で登場する。主に密室状況を中心として不可能犯罪を解く。毒殺等も 含むトリック小説群だ。長編は長すぎる読者向きだ。探偵役の性格は変わらない様だ。
2017年10月30日
岡本綺堂集<岡本綺堂>
「怪奇探偵小説傑作選」シリーズの1冊だ。岡本綺堂は幅広いジャンルの作品を書いているが、その中も怪談・怪奇小説をまとめた作品集だ。前半は「青蛙堂鬼談」という 作品集の採録で、集まった人が順番に聞いた話しや巡りあった話しを語って行く。後半も似た状況で描かれる同じジャンルの作品だ。
2017年10月30日
見たのは誰だ<大下宇陀児>
江戸川乱歩と同じ時期にデビューして、ほぼ同じ事に死去した作家生活の長い作家だ。本作はその後期の昭和30年の作品だ。現役で読める作品は一部だけでありその少ない復刊だ。 犯罪に誘われ、殺人容疑がかかった男の弁護士が事件を追う、倒叙的な視点の内容だ。
2017年10月30日
白夜街道<今野敏>
公安刑事・倉島は、かってロシアに逃げ帰った殺し屋がまた日本に来ていると知り調べると、情報交換した外交官が死ぬ。殺し屋はボディガードで働くが不明の事件に巻き込まれる。 倉島は外交官殺害事件を調べ、殺し屋に容疑がかかり、ロシアに帰った男を追う、刑事課刑事と大使館外交官とロシア警察と追うと、別の組織に襲撃された殺し屋に出会い・・・。
2017年10月30日
海の斜光<森村誠一>
3作の中編からなる作品集だ、事件に巻き込まれた人物や、知り合いが巻き込まれた人物が調べる、殺人事件を地方の所轄が調べる、複数の所轄が調べると他の事件との係わり が判る。一つの事件が他の事件を起こすまたは関わる、どこかが突破口になり前回が解明されて行く。
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2017/10に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。