推理小説読書日記(2017/09)
2017年09月06日
悪魔の水槽密室<司凍季>
機械的な題名だが「「金子みすず」殺人事件」の副題がある。語り手の作家が取材で、「金子みすず」の生誕の地の山口県仙崎を訪れる。途中の列車から奇妙な人物を見かけ 宿でもそれが続く、土地の記念館やゆかりの地や人を取材して行き、殺人事件に遭遇する。その一つがホテルの中に水が溜められた水槽状態の密室だった。探偵役が登場する。
2017年09月06日
年上の女<連城三紀彦>
10作の短編からなる短編集だ。恋愛に関わる・・・言葉が難しい・・・・多様な出来事を描く。当事者のとってだけ事件のものもある、謎があるのか、それは誰にとってか それは読む事で判断する。論理の世界でないがサスペンスの世界ではある。
2017年09月06日
僕と先生<坂木司>
伊藤二葉と瀬川隼人シリーズの2冊目だが、「先生と僕」の続編となると、ネーミングは微妙だ。二冊目だが既にお馴染み感のある、役割設定の説明が厄介なコンビに、静かに 新しいキャラのレディバードが加わる。日常の謎だが、範囲は僅かずつ広がりを見せて行く。ミステリの学習はパロディ的に進んで行く。
2017年09月06日
お奉行様の土俵入り<田中啓文>
鍋奉行犯科帳シリーズ5冊目の短編集だ。舞台は大阪で、食い道楽の奉行を中心にしたレギュラーメンバーが食べ物の話題と、それにプラスする話題と事件を解決する。相撲と 演劇作者と釣りとを背景にする連作集だ。
2017年09月12日
潮流<今野敏>
東京湾臨海署・安曇警部補が登場するシリーズの長編だ。3件の無関係の事件にを調べて、共通の事件を疑う、テロか動機はなにか。本庁が来るが捜査本部は出来ない。 その中に過去の安曇自身の事件に冤罪の可能性を疑うが、表だっては調べられない。安曇個人から始まった疑問を次第に協力者を増やしながら調べて行く。
2017年09月12日
棟居刑事の絆の証明<森村誠一>
棟居は登山で数人の一行と出会う。登山者らはミニツアーだったが、その後に偶然??に再会してゆく。その立場はバラバラだし、殺人被害者だったりする、そもそも 名前も仕事もしらない同士だった。巻き込まれたのかもともと繋がりがあったか、全員が繋がりの中に入ってゆく。
2017年09月12日
クロイツェル・ソナタ<夏樹静子>
少女の誘拐殺害事件が起きた、事件自体は容疑者が無関係と判り犯人は判らない。だが目撃者は、少女とは隠れた繋がりがあり、犯人は誰か知ったが、隠した。 少年法になる加害者への被害者遺族の一人が復讐を始める。その先は?・・・。
2017年09月12日
金田一耕助の帰還<横溝正史>
短編を長編に書き直す・加筆する事はかなりあるようだ。その時は元になった短編は破棄されて、その後の短編集から消える。横溝正史もそのような作家の一人だ。 短編には短編の、長編には長編の良さがある。だから破棄状態の原型短編を集めて作品集を作った。その原型短編集の1冊だ。まだ残っていた感がある。
2017年09月12日
鮎川哲也探偵小説選<鮎川哲也>
中絶した未完成の長編「白樺荘事件」とその元になるはずの「白の恐怖」を掲載する、その他に作者の単行本初収録作品を網羅したとする作品集だ。「白樺荘事件」は大きく 書き直して「白の恐怖」へ繋げる筈が未完となり、中間が抜けているという解説だ。中絶の「白樺荘事件」では3つ事件が起きるが、2つ目は「白の恐怖」と共通と思われる 。全くつながら無いことはないが、トリッキーな「白の恐怖」がどう代わるかは難しい謎だが、幾つかの完成イメージが浮かぶ。
2017年09月18日
宮野村子探偵小説選1<宮野村子>
昭和前半の女流作家で、著書は多いようだが復刊は少なく読む機会は多くない。本書は活動初期の作品を集めた作品集であり、戦後直ぐの短い目の長編「鯉沼家の惨劇」と 短編を収録する。作風的には変格であり、本格味が強い作もあるがユーモアか崩れた描き方をしている。
2017年09月18日
亀と観覧車<樋口有介>
青春ミステリーも多い作者であり、本作もそれに含められるだろうと思う、謎解きではなく犯罪小説かサスペンス風なのだ。そのようにミステリーに押し込めない方が良いのかも しれない。主人公は働く気がない堕落して生活保護を受ける両親を持つ、定時制高校生の少女であり、昼はアルバイトをしているが周囲から色々なアルバイトに誘われる。徐々に そこを渡り歩き、ある年長者に出会う。
2017年09月18日
榛家の伝説<佐々木丸美>
榛(はしばみ)が漢字変換出来てほっとした。この作者は変格に近いミステリから変格ミステリに進み、幻想小説からSF味を含む内容へと変わって行く。作風が変わったのか 広がったのかは微妙だ。SF味と言っても科学技術ではなく、架空の設定であり幻想との境は曖昧だ。秘薬やそれによる美の追及やそれの相続の問題なのか、なにしろ伝説なのだ。
2017年09月18日
女子大生殺人事件<幾瀬勝彬>
8作からなる短編集だ。多様な傾向の作品が集まり多彩とバラバラとの境を巡る。実名小説はその真意が謎だ、背景も時代もジャンルも幅が広い。文体というのか描きかたに似た 感触があり、作品が変わってもその世界に移り難いのは狙いなのかどうか不明だが戸惑う。
2017年09月24日
学園街の幽霊殺人事件<司凍季>
町で起きた交通事故は奇妙だった、高校生ふたりがその通う学校の幽霊話しを調べる・巻き込まれると関係者続々と登場する、大昔とか鬼とか学園とか青春とは関係なさそうな 方向ばかりが関わってくる、結局は未解決で迷宮事件となる。15年後にその高校生の一人が真相を明らかにする。
2017年09月24日
暗殺請負人 刺客街<森村誠一>
突然に大名の後継者となった剣術の達人が命を狙われて逃げて長屋で暮らす、その腹違いの妹もくノ一が警護する。その長屋の周囲でいくつかの事件が起こり、関わった二人は 複数の集団から狙われる事となった。住んだ長屋がまるで独立組織なごとくなる、不思議な展開を見せる。
2017年09月24日
安積班読本<今野敏>
「安積警部補」シリーズの読本だが、2009年出版で対象は「花水木」までで、作者の作品リストも同じ時期までだ。現在進行形のシリーズの途中経過だ。短編1作と作者の インタビューを併載する。相良班は出来ておらず、水野刑事もまだ加わっていない。
2017年09月24日
今宵、喫茶店メリエスで上映会を<山田彩人>
長編的な連作集だ。思い出の街に戻った主人公は、寂れた街のなかの映画を週末に上映する喫茶店を相続した費用で再開する。そこでの日常の謎的な事件を絡めて、寂れた 街の再生の可能性を探る。次第に客は増えるがもっと大きなトラブルが起きる。
2017年09月30日
蟇屋敷の殺人<甲賀三郎>
怪奇探偵小説だと称する、リアルだとは言えない内容だし蟇とその怪物人間??が登場するに至っては幻想小説とも言えない、仕方がないので怪奇小説と言う。ストーリー 自体が現在の目からは異様だ、戦前作品という事がそれも有りなのかとどの程度に思わされるのか。それは奇妙な思考と行動をする主人公の作家に当てはまる。流石に 主人公には気持を乗せられない。
2017年09月30日
奇譚を売る店<芦辺拓>
古書とその蒐集家を描く連作集だ。どうも作者自身がその世界にいるかの様に見える、読者にも同類が存在する事が前提かもしれない。作者は多様な分野を描き分けるが、 現実的に解決する方が多い。この連作は終わり方は微妙に違う、それ故に作者と背景が重なる様に見える。
2017年09月30日
津軽冨士殺人事件<高柳芳夫>
ドイツや外交官を舞台にする事が多い作者だが、これは弘前を舞台にする。ただし背後にドイツからの訪問者が存在する、主人公らしき人物らが行動が不審だ、少なくとも 警察は疑っている。どこまで読者は主人公らしい者を信じるか・・・、薄味の犯罪小説なのだろうか。
2017年09月30日
飾り火<連城三紀彦>
重厚で繊細で叙情的な状況と風景と人物描写が、全編の多くを覆う。主な主人公は40代の専業主婦で若い男との初めての浮気が、家庭全体の似た変化と時期が重なるという 波乱の展開となる。ところが上下2冊分冊の上編の終わりを境にストーリー自体は大きく変わり、実はそれには意外な秘密があった。後半は内容的に変わるというかあたらしい 要素が加わる。一筋では行かない多様な内容が、最初に述べたミステリーとはやや異なる文体で描かれる。
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2017/09に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。