推理小説読書日記(2017/08)
2017年08月01日
ミネルヴァの報復<深木章子>
民事弁護士が離婚訴訟に関わると、損害賠償訴訟が起きる。被告側が手続きを行わない内に失踪する、その結果はありえない筈の損害賠償訴訟が満額成立してしまう。 その勝訴した原告が死体でそれも弁護士会館で見つかる。そして、弁護士も襲われる。民事弁護士は友人の刑事弁護士の相談する。それに依り明らかになる真相は?。
2017年08月01日
夢幻館へようこそ<水生大海>
主人公のフリーターは入院した叔母に変わり「夢幻館」という奇妙なショッピングモールの管理人になる。アパートを転用したショップには、奇妙な人が奇妙な店を開いている。 やる気がなかった筈の主人公が、いつしか事件に巻き込まれて解決してゆく。
2017年08月01日
ダイヤモンドヘッドの虹<夏樹静子>
1980年代は国内から海外に目を向け、土地や施設等を買収していた。ハワイもその対象であり、土地や家屋やリゾート施設を買い漁る、それは結婚式場としての教会も含まれる。 僅かな自己資金でも買い漁り儲かるという考えがあった。そんな日本人が殺害されてゆく、ハワイ警察が調べ始める、同時に巻き込まれた日本人が調べ始める。異様な日本人の 買い占め行動を、ハワイ人と、日本人の目から描いて行く。
2017年08月01日
團十郎切腹事件<戸板康二>
歌舞伎評論家の作者が、江戸川乱歩に誘われて歌舞伎役者・中村雅楽を主人公にした本格ミステリを書き始めた。その作品は直木賞を受賞し、その後断続的な期間もあるが 長くかつ多数書かれた。作品は長編2作と短編85作という日本ミステリ史上の代表シリーズとなった。それを5冊に別けた作品集の1冊だ。
2017年08月07日
土曜はカフェ・チボリで<内山純>
高校生のシェフが開いた、土曜日だけ営業するデンマーク料理カフェ「チボリ」。そこの開店日に偶然集まった客らが店員と客らと知り合う。そして土曜日を楽しみに集まる。 そこに誰かが連れた新しい客や客が持ち込む謎が発生する、そして高校生シェフ自身の謎もある。それらが解明されながら、全体の長編的な謎へと繋がって行く。
2017年08月07日
飛鳥高探偵小説選3<飛鳥高>
戦前・戦後の探偵小説作家の作品集を編む叢書だ。そこでは没後作家が集まっていたが、初めて現存作家が登場した、その第3集で本人へのインタビューが収録される。 長編1作と複数の短編が収録される編集が続いている。この作者のファンならば既読作品も多く収録される事は避けられない。それはどの作者でも同じ事情だ。
2017年08月07日
屍蝶の沼<司凍季>
1980年代末に「新本格」と名付けられた作家がデビューした、それは編集者の企画の比重が高い。個々の作家は個性があり、狭く分野や内容を語る事は難しい。1990年代の後半 に登場したこの作者も多様な要素を持つ。本格味に注目されたが自身は社会派と唱え、作品にはホラーや幻想味がある。本作は特にホラー味が強いと感じた。
2017年08月07日
トオリヌケキンシ<加納朋子>
題名からは予想出来ないが、特殊な(例は多くない)病気をテーマにしてそこで起きる事や当時者の気持や対応が描かれる。そんな短編を集めた短編集だ。病気のより 見える感じる世界が変わる、それは本人にはミステリーだが、それと出会う特に知らない人には本人以上にミステリーとも言える。特殊な病気はそこに、奇跡と感じる 出来事を産む事が多いようだ。
2017年08月13日
ベルリンの夜に逃れて<高柳芳夫>
ドイツ駐在外交官経験のある作者がドイツを舞台に描く、スパイ小説だ。時代は東西冷戦時で、ベルリンが東西に別れて、両側のスパイが集まる。そこで世界的な心臓外科医 が失踪して、東側の要人の手術の噂が立つ。主人公はその失踪の謎を追い、外科医の救出を謀る。
2017年08月13日
カウントダウン<佐々木譲>
北海道の夕張市が財政破綻して、北海道の指導の下に市が財政建て直しを求められた。そもそも市長の隠蔽を見過ごしていた市民にどのような責任があるのか?、結果的には 市と市民が責任を追う事になった。夕張に隣接する市を背景にして同様の破綻の可能性が噂される市では、財政状態が隠されたままで、少数の市会議員と市民が疑うが不明だ。 そして財政再建団体に転落する、偽装する市長に対抗して、市長選に立候補した市会議員が闘う。
2017年08月13日
棟居刑事の殺人の衣裳<森村誠一>
成績の悪い訪問販売員が、密かに目を止めた女性が時間を経て担当地域に引っ越してきた、密かにその生活を見守った。その家庭では夫婦が互いに殺意を持っていた。販売員 はその夫婦の殺意を監察して関わる事になった。
2017年08月13日
松谷警部と三ノ輪の鏡<平石貴樹>
松谷警部と、巡査部長に昇進して結婚した白石以愛刑事らのグループが、三ノ輪署と茨城県の霞ヶ浦で起きた事件を追う。事件背景はゴルフとゴルフ場と元プロゴルファー とプロを目指す女性等だ。元プロゴルファーの過去も関わると考えられて、同時に追い、ゴルフ場会員権に絡むビジネスと詐欺事件が絡まる。
2017年08月13日
離婚しない女<連城三紀彦>
中編「離婚しない女」と短編2作からなる作品集だ。二面性か多面性を持つ複数の男女が登場して、それぞれの思いが影響を及ぼしあう。読者はその進展を注目し、予想する そこにはどの性格が本当か最後に現れるかが判らないのだ、そして表に出ていない別の面が突然現れる事もある。
2017年08月19日
自覚 隠蔽捜査5.5<今野敏>
キャリアだが所轄の警察署長になった竜崎警視が主人公のシリーズだ。「0.5」が付くと外伝的な短編集になっている。長編で登場する人物らが個々の短編の主人公になり、 その視点から起きた事件やトラブルの対応する段階で、竜崎が関わるその合理的な考えがそれぞれの人物に影響する。
2017年08月19日
笑う少年<樋口有介>
風町サエの二度目の登場作だ。16歳で障害事件を起こして少年院入り、そこでシングルマザーで出産した。出所後に表も裏も扱う弁護士事務所で査員として働く、ムエタイ や錠前明けの特技がある。奇妙な正義感があるが、とにかくパワフルなハードボイルドの女主人公だ。事務所経由も自身の人脈でも、表の仕事と同時に裏の仕事も調べる事に なり・・・・。
2017年08月19日
声優密室殺人事件<幾瀬勝彬>
「推理実験室」シリーズという。ミステリー公募の落選者らが作るグループが例会で集まり、その話題に実事件を取りあげた。多様な職業のメンバーが事件を調べて推理する 事で話しが展開する。
2017年08月19日
雲から贈る死<夏樹静子>
会社社長が自家用飛行機の事故で死ぬ、その少し前に兄弟が不審死をしていた、そして別の死があった。いくつかの死を完全犯罪と疑い人物らが登場するが、容疑者は死んでいた。 生前にしかけた遅く起きる遠隔操作犯行は可能なのか・・・・・。
2017年08月19日
金田一耕助のモノローグ<横溝正史>
昭和50年代に横溝が書いたエッセイだ。横溝は戦中に岡山に疎開していたが、そこでの生活と考えた事、そして戦後直ぐに雑誌の要望で「本陣殺人事件」「蝶々殺人事件」 を同時連載した。その戦後直ぐの旺盛な創作活動を自らエッセイに書いた。
2017年08月25日
幽霊もしらない<山田彩人>
幽霊から自分を殺した犯人探しを依頼された語り手は、探偵と調べ始める。やたらうるさい歌手?音楽家?に幽霊に悩まされながら、それでも本人に情報を求めながら 調査する。どうも幽霊は何か隠していつのか、出会った人物も訳ありに思える。
2017年08月25日
Y駅発深夜バス<青木知己>
今では少なくなった、連作集ではない個別短編を集めた短編集だ。収録作5作の内の、2作は「新・本格推理」というオリジナルアンソロジーに採られている、それ故に 再デビューだと紹介される。作品内容は多岐に渡り、本格からサスペンス・倒叙・ホラーと広い。それが短編集にあうのかどうかは、読者の好みに委ねるのだろう。
2017年08月25日
赤い月、廃駅の上に<有栖川有栖>
程度の差はあるが、鉄道が絡む怪談集だ。ただしそれ以外は、時代・場所と人物などの背景は広がる、それが不明で最後に向かう展開が読めないと言う作品が多い。 鉄道自体に広い話しが隠れているイメージもある。
2017年08月25日
人魚が眠る家<東野圭吾>
日本特有の脳死への考え方は、法制度と死の判定手段に大きく影響していると説明される、それの例外的な扱いが臓器移植だと説明されるとその背景の難しさが判る。 脳死かもしれない・植物状態かも知れない事故にあった娘の両親が、決断に迷う。そこから長い様子を見るという生活に入り、そこに最新治療(架空)が絡まり より混沌とした状態に進む。
2017年08月31日
ベルリンの柩<高柳芳夫>
ベルリンの日本領事館職員・草場宗平を主人公にした連作ミステリー集で、短編を4話収録する、内容は東西ドイツが存在した頃の西ベルリン日本領事館職員が関わる事件を 描くサスペンスだ。探偵役は積極的でも無く、感情的にも中間的で傍観者が偶然に関わる展開だ。
2017年08月31日
奈落の偶像<麻見和史>
警視庁捜査1課11係の鷹野と如月塔子らのグループが連続事件を捜査する。今回も死体に装飾がされた事件だが、最初の殺人から始まり連続拉致事件へと進む。現場から消えた マネキン人形、被害者の奔放な演出家の過去を併行して追う。銀座という犯行現場は何故に選ばれたか、そこの狭い範囲で繰り返される事件の意味は何かを追う。
2017年08月31日
薄倖の街<生島治郎>
昭和40年代の銀座を舞台に、そこに関わる幾人かの女性の関わる事件を短編で描く。その事件に関わる男の視点から描くが、その男らにも同時にその世界で競う。舞台に共通がある 短編集であり、それは同時にその時代性も描かれている筈だ。
2017年08月31日
美しき幻影 遙かなる墓標のもとに<森村誠一>
主人公は同級生の女性と度々山登りする。その女性からその叔父が戦時に権力と争ったと聞いたが、女性は遠ざかり結婚するが、主人公は影を追い山に登る。卒業後1度だけ 再会したが後に訃報を知る。作家になった主人公は、女性の叔父の歴史を追い小説に書くことで当時に権力と争った多くの人物と出会い、同時に生まれ変わりの様な女性と出会う。
←日記一覧へ戻る
2017/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。