推理小説読書日記(2017/05)
2017年05月03日
愛情の限界<連城三紀彦>
主人公の京子は、妻のいる年上の男と縁を切り理想の夫との結婚を願うが、年上の男とその妻の対応は予想外だった。理想の夫との結婚生活も、年上の男と自分の妹の影で 思い描いた事と違う進展を見せた。そこからはサスペンスに富む展開が続く、主人公が自身の変化に驚き、読者は展開に驚く事になる。
2017年05月03日
領主館の花嫁たち<ブランド>
本格ミステリ作者が再晩年に書いた、伝奇的な内容の長編小説だ。短めの長編が多い作者ではかなり長い作品になる。長く続く館の姉妹が、成長して確執する様子を描く。 館から外へ出て別の館の主になあた姉のとった行動は何か、ゆったり進む展開は次第に早くなり、姉妹が競う事になり、その先は破滅?破壊?。英国文化に疎い日本人には 読破はやや時間がかかると感じる。
2017年05月03日
ただ一人の異性<森村誠一>
現代ミステリに時代小説的な挿話が挟まる、それは3人の登場人物がそれぞれ歴史的に「ただ一人の異性」の存在を信じ探し求めるからだ。それを裏の縦の筋として、 主人公らが巻き込まれる事件を描く、それは牛尾刑事や棟居刑事らも巻き込む事件に進みしかも容易に解決しない。主人公らもどのような結末になるか?。
2017年05月03日
人を呑むホテル<夏樹静子>
社会派的なテーマが多い本格派の作者だが、題名からは伝説か伝奇的かホラーかと思わせる設定だ。人が消える、呑まれるホテルとは、意外な設定なのか見かけだけか、 次第に謎もストーリーも展開するのだが、いかにもけれん味のある見かけはやや戸惑いを与えると思う。
2017年05月09日
優しい幽霊たちの遁走曲<太田忠司>
アイデア不足のホラー小説家が、ホラー小説化を求めている田舎に住む事になる。はたしてその真実の目的は何か。その謎含みのなかで生活がはじまるが、そこで色々な 事に巡り遭う、偶然に遭ったのか必然なのか誰が仕組んだのか。
2017年05月09日
秘密の背景<高原弘吉>
昭和50年代の作品で小さな私立探偵事務所の探偵が主人公の短い話しを並べた短編集だ。話しの内容は時代性・社会性・風俗性・詐欺性・ハードボイルド性など多彩だが、 概ねは裏社会の事だ、探偵役も裏街道とか悪徳とかの言葉が合う面が強い。
2017年05月09日
わたしの隣の王国<七河迦南>
架空の世界をモデルに作られた大規模なテーマパークが舞台だ。そこは多くのスタッフで運営され、動物中心のキャラクターを生きている人間的に装うし夢を売る施設・ 町やグッヅが並び新製品等の開発も行う。建物はそれに合った仕掛けがあるものが多い。そこに迷い混んだ主人公2人はエレベーターではぐれて、架空の世界の密室殺人と、 スタッフ絡みの殺人事件に遭遇する。それぞれがその事件の解明に絡むが・・・。架空の世界と実世界を結ぶ解決は意外な接点で結ばれる。
2017年05月09日
少女は黄昏に、住む<山田彩人>
童顔の新人刑事と、退職した先輩刑事とその娘の正体が怪しい娘が事件に絡む。刑事が持ち込む謎をあっさりと解明するのは誰か、その奇妙な関係と事件の捜査解決とを 併行して描く。ユーモアの面と奇妙な人物らが主人公の探偵団だともいえる、本格ミステリなのだが小説内でのミステリの量的比率はやや少なめか?。
2017年05月09日
ひとつの山<加藤薫>
大学の山岳部に入った二人の性格が異なる女子部員を中心とした、山岳小説だ。人の山登りから見た成長を縦糸に、そこでの人と人の対立と協力と競争の激しさを横糸に して描く、そこに斜め糸として関わるのが人と山と自然との闘いと交わりだ。ただ人は他人との争いで山と向き合うことがおろそかになる。
2017年05月15日
ゆきずりの唇<連城三紀彦>
夫・伸之がいやになった妻・晶子が、娘・陽子の婚約者・村瀬から娘に愛人がいると聞き会っている内に浮気になる。だが、夫も娘も妻の想像以上にしたたか?か予想外の 行動を行いまったく先が読めない展開になって行く。視点が変われば見方も行動も変わるのだが、妻の視点からはその行動も他も異様だ。
2017年05月15日
超人鬚野博士<夢野久作>
4作からなる作品集だが、比較的珍しい作品があつまる。「超人鬚野博士」は「犬神博士」の続編というがそれは作風と雰囲気である続編的というのが正しいだろう。 ほかの作品の選んだ理由は不明だが、多様な作風があつまる。とらえ処のない作風でもあり、昭和10年頃の作品だが古くはない。
2017年05月15日
破門<黒川博行>
大阪弁で書かれた大阪が主な舞台の大阪のヤクザ・桑原とそれに振り回されるコンサルタント・二宮のユーモア・ハードボイルドだ。二人は疫病神コンビとも言う。文章や 会話やストーリーはユーモアが溢れるが細部は驚く程にリアルな内容だ。映画製作の投資詐欺に会った二人が金を取り返す為にあちこちと追いかける。捕まえても金は簡単 に手に入らない、小切手は期間があるし銀行は本人確認がいるし、ATMは1日の限度額がある、他にも狙う者がいる・・・展開は複雑だ。
2017年05月15日
金田一耕助vs明智小五郎ふたたび<芦辺拓>
広義のパステーシュの短編5作からなる短編集で、同種の作品集の続編に当たる。他からの転載2作と雑誌掲載2作と、書き下ろし1作からなる。本格味の強い作から、 ハードボイルドから活劇風、そして落ちのある小品まで多彩だ。企画ものの続編は珍しい方だろう。
2017年05月15日
青髪鬼<横溝正史>
中編1作と短編3作からなる作品集で、少年向き小説集だ。このジャンルではお馴染みの三津木俊助と御子柴進少年が主人公だ、題名自体で内容が予測出来る。髪の色が異なる 似た題名が多い、本作は青だ。他の短編はノンキャラクターものだ。
2017年05月21日
紙片は告発する<ディヴァイン>
田舎町の議会運営を舞台にしたミステリだ。仕組みが微妙に異なり理解し難い所がある、そこに不倫的な事が生じ、それが絡む事件が起きる。主人公の公務員(なのか) 視点なのだが当人が妻帯者と不倫して、相手が容疑者となるが交際を隠す為に無実を主張できない。ただ主張しても本当にはどかは不明だ。その状況で主人公が色々と 動きまわる展開だ。
2017年05月21日
幻の男<夏樹静子>
本題の中編と短編2作からなる作品集だ。佐賀県を舞台にしたテーマ中編だが、佐賀の短編と他とで本となる。中編は掲載手段から少ないのだが、佐賀テーマの執筆依頼で 書かれたものの量が意外に多かったとの記載はどこまで本当か。地味だが堅実なミステリはこの作者の特徴が良くでていると感じる。
2017年05月21日
松谷警部と目Kの雨<平石貴樹>
松谷警部と所属部署の捜査という新しいキャラクターのはじまりだ。題名から展開を予想すると微妙に外れるように思う。このあとも似た雰囲気の題名の作品が書かれて 居てその最初となった。俳句を作る刑事が活躍するのかそうでないのか、とにかく犯人当てのフーダニットだ。
2017年05月21日
造園学のリボンをつけた家<田中啓介>
大正から昭和初期に書かれた作品集だ、名前は聞いた憶えもない。ただ地元であり、稲垣足穂からみと聞くと逆に知っておかなければという思いもある。ネットで検索し 同性同名が出て来るだけだ。年代不明の作品群であり、いつの時代でも類似傾向の作者はいるがその内容は実は微妙なのだと思う。都会的という言葉が合いそうだ。
2017年05月21日
千年鬼<西條奈加>
連作時代SF小説なのか、どこかの時代・土地にあらわれる小鬼たち。小鬼に呪いを植え付けられた少女がそれを解き放つために、時代と空間を彷徨うという設定だ。 原因と結果が錯綜するホラー要素のある、SF設定の時代小説なのかと思う。
2017年05月27日
砂漠の駅<森村誠一>
失踪人が複数いる、殺人事件を捜査すると失踪人が絡む。容疑者か被害者か何らの関係者かが判らない。どこかが突破できれば、解決出来れば他も解決出来るのだが。 そもそも死体がないので事件性が不明だ。そして次第に解決するのだが、なかなか全てとは簡単には行かない。
2017年05月27日
夕暴雨<今野敏>
東京都湾岸署のイベント会場に爆破予告があった、無事に済むがまた次の予告があった。そして爆破事件が起きる、4人の被害者の証言が1人だけ異なる。安積警部補は ネット通の須田の感を信じて早くから取り組むがその結果は?。
2017年05月27日
アネモネ探偵団3<近藤史恵>
ジュブナイル探偵小説シリーズの3作目だ。お嬢様高校と隣接するが交わらない隣りの中学校の生徒たちだが、前の事件で一部が知り合いだ。それぞれでいろんな禁止校則 が出来る。その背景の事件は何か、そしてその真相はなにか。女子高生が男子姿に変装して中学に潜入を図るが・・・。
2017年05月27日
踊る猫<折口真喜子>
時代小説的な聞き語り的な不思議な話を繋ぐ。短編集だが多くは、俳人であり絵書きでもある与謝蕪村を主人公にして、聞いた出会った話しとして書かれる。 そのような話しに興味を持ち、語る性格を与えられている。
2017年05月27日
南紀殺人事件 ヴィーナスの濡れ衣<醍醐麻沙夫>
和歌山県白浜の海に浮かぶ船で起きた殺人事件を、容疑者になったそこで海の生き物を研究する研究者とそのグループが捜査する、そう濡れ衣を晴らそうとする。 海で起きた事件は地上とは捜査もアリバイも容疑者もことなり警察でも停滞気味になる。
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2017/05に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。