推理小説読書日記(2017/03)
2017年03月04日
岩窟姫<近藤史恵>
アイドルが自殺した同僚が書き残した文で仕事が無くなり引きこもり隠れて暮らす。そこで憶えが無い中傷の理由を探しはじめる。調べて行く内に・・・、知らなかった事が 次第に明らかになってゆく。主人公自身が事件の真ん中かその付近にいる設定での謎を解くミステリーだ。犯罪ではないが芸能界のスキャンダルという微妙な設定も主人公の 行動を左右させる。
2017年03月04日
中野のお父さん<北村薫>
両親から独立して暮らす出版社編集員の女性が主人公の日常の謎を解くミステリーだ。謎を解くのはたまに変える実家の父親で「中野のお父さん」となる。半分くらいの謎は 本や出版に絡む謎であり、残りが設定の中でのもう少し広い日常の謎となる。本のミステリーの具体内容はこの作者ならではの内容と思う。
2017年03月04日
怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関<法月綸太郎>
パズラー作家が突如書いた、怪盗談の2作目だ。何でも盗むが依頼を受けたのは、著名作家の新たに見つかったとされる原稿を見つけた事を盗む???。そこから始まり 奇妙な事件にどんどんと巻き込まれて行く。題名の「機関」は組織ではなくて、「エンジン」の事で発明品だ。怪盗の元妻の情報員が登場すると一気に展開が変わる。
2017年03月04日
ハナシがうごく<田中啓文>
笑酔亭梅寿シリーズ4作目で、主人公はその新入り弟子の梅駆こと竜二となる、梅寿シリーズというのもいかがかとも思うが気にしないのだろう。主人公は成長している筈だが それ以上に関わるトラブルが多すぎる展開が終わらない。
2017年03月04日
落英<黒川博行>
大阪の薬物対策課の刑事2人が地道な捜査の後に家宅捜査に辿りつく、終わった筈がそこで拳銃が見つかり表彰ものかと喜ぶ。だがその銃に前科が見つかり、表彰取りやめで 未解決事件の継続捜査を命じられると言う不幸に会う。しかも事件は和歌山で出張になり悪徳刑事と会い、訳の判らない事件捜査になり意外な展開になる。大阪弁でかかれた 警察小説であり犯罪小説であり、コンゲームであり悪徳捜査官ものでもある。
2017年03月10日
名古屋駅西喫茶ユトリロ<太田忠司>
名古屋在住作者による、名古屋情報満載のご当地ミステリーだ。名古屋名物が次々登場する、名古屋弁も登場する、名古屋の町の発展と移り変わりも描かれる。舞台は老舗の 小さな喫茶店で、名古屋名物のモーニングサービスに集まるのは常連客だがそのメンバーと店の人を中心に展開する短編連作集だ。内容にしばりを設けて居ないので、奇妙な 展開を見せる。
2017年03月10日
異型の深夜<森村誠一>
オムニバス形式の短編集で、拳銃が共通項として繋がる。出会う事も珍しい拳銃に出会うと人生というか運命というか生活が大きく変わる可能性がある、それを描いて行く。 拳銃というアイテムなので絡む生活に社会派要素が出やすいとも言える。
2017年03月10日
白蝋仮面<横溝正史>
御子柴少年と三津木俊助とが活躍する少年向け小説の中編「白蝋仮面」と短編2作からなる。怪盗と探偵との追っかけ会いを描く、少年向け小説では定番の内容だと言える。 膨大な執筆量の時代の作品と言う、勢いで描いたと思わせる内容だ。
2017年03月10日
共犯レクイエム<麻見和史>
本格ミステリーの要素を強く加えた警察小説が特徴の作者だ。本作は公安警察の部署と、そこに突然に異動された主人公女性刑事が舞台となる。公安は犯罪予備とか事前調査 的で、スパイとか協力者が登場するイメージで、本作もそれは大きな比重だ。どこに本格味があるかは、突然の異動にポイントがある。公安が舞台だと、警察小説でも違う 活動と捜査となる。
2017年03月10日
名刀月影伝<高井忍>
時代小説作家だが、歴史小説と伝奇小説との重なった内容を描くスタイルが特徴だ。本作は画家と剣客が骨董や刀等の記録を残す仕事で調べ歩く。そこには偽物が登場する 、刀となると由緒や工芸的・作者的な値打ちが伝わるが、他方で刀として機能が高いかの判断がある。剣客は刀の機能を見抜く力が高いが、刀の持ち主はそこは無関係だ、 その食い違いが色々な事件に繋がる。
2017年03月16日
愛の死角 京都−東京殺人ライン<深谷忠記>
黒江荘と笹谷美緒(旧姓)と、刑事らが主人公のシリーズの最新作だ。結婚してからも似た状態だが、事件と舞台は変わって来ている、考える人の時間が短くなっているが それは謎を難しさと比例だろう。そして本作は、かなり問題だ、シリーズの終わりでも不思議がない事が起きる。
2017年03月16日
いえない時間<夏樹静子>
死後に編まれた作品集だ。シリーズ作品集の集まり待ちの作品が、作者の死でバラバラに集められた。朝吹シリーズが2作と、霞シリーズが1作で、他が4作集められている。 シリーズ作は新しい展開を示すがそこで途絶えた。
2017年03月16日
オシリスの眼<オースティン・フリーマン>
作者の初期の長編で、日本でも古く紹介されたものの新訳だ。舞台はまだまだ科学捜査が進んでいないなかでの科学捜査となる。その時代で成立する面もある。悠々と時間が 経過して行く中で、静かに事件が動く。失踪が認められる期間が絡むので、それがうまく取り込まれている。
2017年03月16日
警視庁FC<今野敏>
映画やドラマの撮影にある地域が協力する仕組みが「フイルム・コミッション:だがそれが、警視庁に作られたと仮定して背景に話しだ。警察がどのように協力して、その なかで何かが起きるのか・・・。
2017年03月22日
悶える青蛾<園田てる子>
昭和33年発行本で、長編「悶える青蛾」と短編「二つの顔の女」収録する。父が勧める見合いに反発しながら、別の男性に溺れる主人公女性の揺れ動く心を追うスリラー風の 小説で、主人公自体が自身の心を理解できず制御も出来ないという不安定さだ。
2017年03月22日
綺想宮殺人事件<芦辺拓>
小栗虫太郎を代表にいくつかの奇妙な漢字とそのルピが全体を覆い、しかもペダントリーだ全面に漂う小説が存在する。とても読み難いのだが継続的に読まれて断片的に書かれ ている。通常の小説とは異なる所にエネルギーがそそがれて蓄積される感がある。どこかに魅力があるのだろうか書きたくなるのだろうか、全面ではないが各所にその雰囲気が 盛り込まれた異様な内容だ。
2017年03月22日
首なし男と踊る生首<門前典之>
死体を道具に使うトリック小説は好む人は居ないと思うが、トリックとしては廃れる事はなく継続して書かれている。小説全体が死体、特にバラバラ死体、特に生首が覆う。 これらを小道具として扱い、その様に読まないとやりきれない。そのようなトリック小説だ、ふと小道具でないと気づくと成立自体が疑問になる。
2017年03月22日
拳銃天使<都筑道夫>
「少年小説コレクション」の1冊で、拳銃アクション小説や西部劇小説を含む。多くは少年が中心の少年探偵団の雰囲気が流れる作品群を集めた、作品集だ。内容的に特殊だから 書かれた時期は古いが逆にそれは感じさせないとも言える。小道具はその時代の時代のものだが・・・。
2017年03月28日
ハナシがつきぬ!<田中啓文>
新入り落語家・笑酔亭梅駆とその師匠・梅寿の登場する短編集の5冊目で最終巻だ。絶えず揉め事がついて回る二人で考えられる事は全て起きる。最終巻でもハッピーエンド にもなりそうにない。どう見てもバッドエンドと思えるが、曖昧な程の飛んだ出来事で1部終了のモードに見える。
2017年03月28日
魔の淵<三橋一夫>
多作で内容も多彩とされる作者だが、同時に多数の作品はいまでは見かけない。通称は不思議小説というが、これは提供側の宣伝文句でもある。正体が掴めない作者を3作で 理解する事は無理と諦めて読む事になる。内容が不思議というよりも、思いつきままに書きつづって感が強い。
2017年03月28日
最終戦争/空族館<今日泊亜蘭>
独自路線のSF創始者のひとりだ。その短編とショートストーリーをまとめた本だ。複数の本と未収録作品を再編集した。著作は次第に明らかになってきて、かなりの作品が 読める様になったと言える。あえて言えばハードSFなのだろう。そこにユーモアと奇想が加わった内容だ。
2017年03月28日
海泡<樋口有介>
ノンシリーズ作で、舞台は小笠原島で時間的に他の土地と隔離状態だ、訪問者も島を離れる人もゆったりと入れ替わる。そこにいる人は、長く島にいる人、一時の訪問者、 昔いて戻った人がいる。そこに内地で知り合いで島で再会または追ってきた人が加わる。事件捜査もゆっくり進む世界での素人探偵捜査だ。
←日記一覧へ戻る
2017/03に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。