推理小説読書日記(2017/02)
2017年02月02日
一瞬の虹<連城三紀彦>
小説ではなくてエッセイ集だ。実名とかでエッセイとして書いてあるが、これが私小説として書くと、そのまま小説になると思う位に思えるのが、1つの作者の作風だろう 舞台は日常であっても、出来事が特に小説風でなくとも、読者を引き込むのが手法なのだ。
2017年02月02日
流星の降る町<森村誠一>
膨大な作者の作品には、少数派の作品もある、背景には社会性を持っても、題材的に疑似イベント的で、登場人物もいかにも作り者が集まる。そこで繰り広げるユーモアに 描いた活劇話しだ。強力な暴力団に抵抗する数人の住民の対抗手段と、行方はどうなるのか、ユーモアなくては語れない。
2017年02月02日
陽炎<今野敏>
安積斑長シリーズの9冊目で、2冊目の短編集だ。東京湾岸署での活躍を、8作の短編集で描く。多くは短いながらも、グループとしての捜査を描くが、個人を中心にした 作品もふくまれ、特捜の速水はゲスト以上に登場し、STの青山も1作ゲスト登場する。
2017年02月08日
女櫛<平岩弓枝>
小説と脚本で活躍する作者の初期の小説で、副題を「花房一平捕物夜話」と言う6作の短編からなる作品集だ。時代は金さんこと遠山金四郎景元の実父の景普の時代で、 景普の配下の花房一平が主人公だ。謎解き捕物帳ではないが人情物とも違う、それぞれの要素はあるが固定しない、なかなか捕らえられない地位の犯人設定となり、そこに 葛藤が生まれる。
2017年02月08日
一瞬の魔<夏樹静子>
表題作を含む5作の短編からなる作品集だ、それぞれに異なるテーマの舞台で描くミステリーだ、初出時の状況は不明だがそのような題材が話題だったのか、作者が先行 したのかは不明だがあとからの読者には、それは話題だ的に見えるテーマばかりに思える。それとミステリとの繋がりは多様だ。
2017年02月08日
まぼろしの怪人<横溝正史>
少年誌向けの長編ミステリーで、御子柴進少年と三津木俊助と等々力警部が登場する。怪人と捜査側の対決を描く少年誌向けでは定番のサスペンス的なストーリーだ。 ストーリーテラーとしての作者の得意な分野の1つだ。
2017年02月08日
マカロンはマカロン<近藤史恵>
表題作を含む8作からなる短編連作集だ。舞台はフランス料理店のビストロ「パ・マル」で、シェフと副シェフとソムリエらを給仕係の視点から描く。主に客とそれに 絡む、料理が話題となる、スタッフや協力者が対象となる事もある。シリーズ3作目で、シェフの三舟が探偵役となり、日常の謎を解き明かす。テーマになる料理が変わり その料理にも興味を持ちそうだ。
2017年02月08日
あらしの白ばと 悪魔の家の巻<西條八十>
昭和29ー31年に少女向け雑誌に連載された作品の復刊だ、3人の少女の「白はと組」が活躍する少女ヒーロー活劇ものだ。今のコミックでも多くはない位に派手に暴れる 内容だし、連載小説特有の毎回が「次回に続く」的な進めかたのストーリーになり一括書き下ろし作とは異なる雰囲気を持つ。
2017年02月14日
ハナシがはずむ!<田中啓文>
落語家・笑酔亭梅寿と弟子の竜二(梅駆)の連作集の3冊目。副題「梅寿謎解噺」とは異なり、竜二が事件に巻き込まれて謎を解く事が主体だ。師匠の梅寿はおおむねは 勝手でいい加減な発言と行動で事件を起こして問題を大きくする役割を行う。そばに事件を起こす人物がいるので、話しは延々と続きそうだ
2017年02月14日
片翼の折鶴<浅ノ宮遼>
新人作家の医療ミステリ短編集で、医師・西丸が謎を解く短編5作でなる。おおむね、他の医師や登場人物が真の原因を掴めない事に対して、途中から西丸が解決する 構成になる。医療知識で解決する場合と、より広い知識で解決する場合が混在し、純医療ミステリと舞台が医療現場のミステリが混在する。
2017年02月14日
蜃気楼博士<都筑道夫>
「都筑道夫少年小説コレクション」の3巻目で本格推理編だ。蜃気楼博士シリーズの3作と、フォトミステリー12作の作品集だ。フォトミステリーとは写真が掲載されて 文章と写真の双方がヒントとなり解決する構成のミステリー小説だ。写真がないと成立しないのだが、タレントの起用が多く了承されないものはイラスト掲載となっている。 文章だけでは情報不足だからだ。
2017年02月14日
空耳の森<七河迦南>
鮎川哲也賞作家の3冊目で七海にある七海中央病院と児童養護施設の七海学園を舞台にした連作集の3冊目だ。1・2冊目は全てがその舞台の作品だが、この3冊目は そこを舞台にした作品と、それ以外が混在した構成となる。それがなかなか判り難い構成になっているのが如何にもミステリ連作集らしく、楽しみとサプライズ的と言える。
2017年02月14日
荒熊雪之丞大全<横田順彌>
1975-1987に書かれたシリーズ作をまとめた復刊本だ。主人公のサラリーマンの荒熊雪之丞とその周辺の人物からなる、主に駄洒落による作者特有の「ハチャメチャSF」作だ。 内容に制限やジャンルや内容規制??がなく、ひたすらギャグと駄洒落を連発する構成だ。表も裏もないどこまで行くのか的な世界だ。
2017年02月20日
大迷宮<横溝正史>
少年向けに書かれた作品で内容的には「怪獣男爵」の続編で登場人物に重なりがある、主人公の少年の他に金田一耕助や等々力警部も登場する。悪人の犯罪を阻止するという シンプルなストーリーをサスペンスな展開で繋いで行くという少年向き作品の定番だ。
2017年02月20日
褐色の祭り<連城三紀彦>
巨大長編であり、戦中から戦後の3世代を繋ぐ膨大な作品で有り、中心の視点は変わって行くが、背後に流れる形で前の世代の影響が積み重なって行く。歴史小説の面も、犯罪 小説の面もコンゲームの面もその他に幻想・怪奇要素もあり、密室もある。全体はサスペンスで包まれて多様な切り口を含む、巨大なエンターメント小説となる。
2017年02月20日
蝶の戦記<池波正太郎>
戦国時代の上杉謙信と織田信長と浅井長政らの歴史小説の題材を、甲賀忍者の複数集団とそこに属する女忍者・於蝶から描く。歴史小説と忍者小説を合わせて展開する。それぞれ がもともと持つ要素は引き継ぐので多彩な内容の超長編で描かれる。女性としての視点で、武将や仲間を見る事が加わる。
2017年02月20日
ウィンター・ホリデイ<坂木司>
元ホストが宅配便配達員として働くシリーズの2冊目だ。今回は冬で、年末から正月という配達の山場と対応を仕事としては描き、同時に本人と周囲の多彩な人の生活を描く。 宅配配達の季節変動はいかにも有りそうに描かれるので、1年分は書けそうだ、2年目は仕事小説としては難しそうに思える。
2017年02月20日
猿の悲しみ<樋口有介>
探偵役の1人称で描かれるハードボイルドスタイルの私立探偵小説だ。その探偵役がまさしくハードボイルドの設定であり、単純にハードボィルド小説とした方が判り易い。 シングルマザーの30代でムエタイと錠前開けが出来て頭も切れる、ブスが悪徳?弁護士で多彩な取り巻きがいる、スーパーレディだ。
2017年02月26日
誘鬼燈<森村誠一>
青森県下北で起きた事件の容疑者が南へ逃亡し、その道筋の岩手県と宮城県での事件が発生した。同一犯か連続殺人か?、県をまたぐ事件で各県警と所轄が別個に・捜査協力で 犯人を追う。広い範囲で同一かも不明で如何に捜査を進めるか、個々の刑事が追う。
2017年02月26日
最前線<今野敏>
安積警部補シリーズの短編集だ。所属は警視庁東京湾臨海署で、6作の短編からなる。安積警部補が中心だが、個々の作で色々な人物が中心になる、若い刑事・前の同僚・鑑識 本庁の担当者・アメリカ警察らが本書では登場する。港や台場や橋や増えつつある管内の施設と、周囲の協力で忙しい。
2017年02月26日
デュアル・ライフ<夏樹静子>
サスペンスの手法で書かれているが、直接的なミステリーではなく、恋愛小説の要素が強い。内容は題名通りの「二重生活」で高齢になった会社社長が出張先で再開した幼馴染み の女性と二重生活を始める。期間が長くなると便利な場所に移り、子が出来ると戸籍偽造を謀る、そのはてに何が起きるのか。
2017年02月26日
ダブル・ミステリ<芦辺拓>
1冊の本が、「右綴じの中編『月琴亭の殺人』」と「左綴じの短編『ノンシリアル・キラー』」からなる。その意味は何か、単純な作品集ではない作者の狙いは・・・?。 本の単位ではなくて、作品単位で何が狙いか、個々の作品は密閉された屋敷での事件と、ネットで繋がるノンシリアル・キラーの事件だ。
2017年02月26日
王国は誰のもの<安萬純一>
現代日本なのだが、その中に奇妙な王国が出来るという不可解なストーリーだ。そこに吸血鬼と狼男とミイラ男とゾンビが集められている、それらが中心になり事件が起きて 話しが進む。架空の設定の中でのミステリーとなり、当然ながら事件も思考方法も架空の条件となる。
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2017/02に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。