推理小説読書日記(2017/01)
2017年01月03日
ペルソナ・ノン・グラータ<夏樹静子>
昭和から平成に変わる頃に書かれた5作からなる短編集だ。外交官特権・作り声・カビ感染・無理心中・宅配便爆弾と日常より少しずれたテーマを加えた作品が並ぶ。 テーマは背景や小道具であり、トリックではないので隠さない、ただし使われ方は色々である。
2017年01月03日
金田一耕助の冒険2<横溝正史>
一時期に同じ背景で書いた似た題名の連作の2冊めの短編集で、金田一耕助と等々力警部が活躍する。膨大な短編の多くが個別に発表されているなかで、まとまった連作は 貴重だと思うし、探偵の名をつけた作品集としてぴったりだと思う、横溝作品の舞台ですくない場所も登場する。
2017年01月03日
みやこさわぎ<西條奈加>
「お蔦さんの神楽坂日記」シリーズの3冊目で2冊目の短編集だ。時代小説作家の現代ものだ。高齢のお蔦を孫の望から見て描く、代々で男が家事をする家庭という設定で それが、学校でも料理する男の子として知られている、その友人?らもやや変わっている。まだまだ続くと思われる。
2017年01月09日
ハイキャッスル屋敷の死<レオ・ブルース>
英国の黄金期の作者のひとりで、舞台を都会んも繁華街ではない場所が多い。探偵役のひとりで本書の主人公の「キャロラス・ディーン」の設定が郊外の学校の教師の事も 絡む様だ。郊外の大邸宅での事件で、執事や使用人が多数登場する。そこには素人探偵が入り込む余地がある様だ、日本の現代では想定できない舞台でその設定独特の 事件や動機や登場人物がストーリーを繰り広げる。
2017年01月09日
世界神秘ク<高橋鐵>
小説は戦前の短い時期だけ集中して書き、2冊の単行本を残した。舞台は秘境が含まれ、怪奇と幻想が混ざる世界は少数だが幾人かが書いた。そこに科学を中心にした知識 を盛り込んだ所に後のSF要素もある、当時の日本での好みのフロイトの影響も大きい。今ではどうかは不明だが、作者は本書後の性科学分野での活躍が著名とされる。 同時にその時代での発行禁止処分も作者の活動を制約した。
2017年01月09日
紅だすき若殿<左近隆>
現在も時代小説が多く書かれているが、どの時代でも多様な時代小説が書かれ読まれた。そのなかで、歴史背景が弱く、伝奇的手法や捕物やチャンバラや股旅物などの ジャンルが入れ替わった。それが混ざった内容も多く見られるが、本作もその1作だ。
2017年01月15日
ハナシにならん!<田中啓文>
落語家・笑酔亭梅寿と弟子の竜二(梅駆)の連作集の2巻目だ。ありとあらゆるトラブルに巻き込まれる、暇なのか稽古に忙しいのか判らない。竜二も、梅寿もトラブル メーカーだから加速する。1作毎に落語が対応するが、まともな稽古せずにえんじられるのかは疑問だ。
2017年01月15日
風景を見る犬<樋口有介>
数年前から沖縄に移住した作者が書いた、沖縄が舞台のミステリーだ、主人公らの商売も怪しいが、出入りの刑事も同様だ、熱いので考える事を止めたい気候のなかで 事件が起きて、遠くから人が来る、旅では性格が変わるのか皆が変だ。のんびりした雰囲気のなかでも、無視出来ない事に気づく事になる。
2017年01月15日
昨日の海は<近藤史恵>
高知空港の近くの小さな町が舞台だろう、主人公は両親と住むがそこに、母のシングルマザーの姉が娘と東京から移り住む。主人公の父は写真家で、両親共に死んでいたが それが心中と判る、もう少し調べると無理心中と判る、片方は殺人なのか。全く知らなかった両親の謎と死の謎を探して行く。写真家とモデルのされたその妻の死の真相を 追うと、それが隠されていた理由が判るがそれも噂だ、そして・・・・・。
2017年01月21日
雨色の仔羊<麻見和史>
「警視庁捜査一課十一係シリーズ」の8作目だが、文庫化になると「殺人分析斑」となる。捜査課の斑員が役割を分担して捜査する警察小説と、本格推理小説とを合わせ持つ シリーズだが役割が固定する事は避けられない。そこに変化を加えた構成に変えた、本格味は弱くなりアクションとサスペンス色が強くなった、その成果と今後の傾向はまだま だ変わって行くだろうと思われる。
2017年01月21日
大きな音が聞こえるか<坂木司>
南米のアマゾン川に年2回起きる大規模な逆流現象は「ポロロッカ」と呼ぶ、その意味は「大きな音」との事だ、題名はポロロッカの音が聞こえるかになる。日本人の高校生が 好きなサーフィンをポロロッカの波で行いたいと思い、実行する様子を描く。旅行費用をアルバイトして、ブラジルに出張する知人をあてに行き、それからが大変だ。狭い所で 生きていた高校生が一気に広い世界に乗り出すのだ。
2017年01月21日
岩田賛空想科学小説集<岩田賛>
昭和30年代に少年少女向けの雑誌が急増した時期があったようだ、その時期に多くのそのジャンルの作品が書かれた。ジャンルは多様で、その後に広がるSF小説の先駆けとなる 空想科学小説も含まれる。押川・蘭・海野から続く流れの作品群の位置つけとなる。ただ現在では埋もれた作品が多い。
2017年01月27日
密室殺人ゲーム・マニアックス<歌野晶午>
そもそもミステリーや推理小説自体が人工性が強く、リアリティと言う尺度は弱い。それ故に逆に、人工性を追及した作品も少なからず存在する。本作のシリーズは、推理バトル の形を取り、しかも問題が実際に犯罪を行う形を取る。表面には裏があるかもしれないが、いずれにしても動機が省かれるゲームの為の犯罪から始まる。極度に偏った内容は、逆説 的なメッセージと見る人もいると思うが、それは普通は不要だ。
2017年01月27日
アンデッドガール・マーダーファルス2<青崎有吾>
背景や登場キャラが架空の作品も、SFや幻想小説と隣り合わせのミステリーではお馴染みだ。題名通りに「不死身の少女の殺人笑撃」の第2作だ、実際のキャラは言葉以上に 架空だがそれは元々断片だ、通常の人間出ないことで話しが進み盛り上がるならば、それで良いだろう。話しは続く、なにしろ「不死身」なのだから。
2017年01月27日
回廊封鎖<佐々木譲>
犯罪者と狙われる側と、捜査側(複数)からの多視点で描かれる、犯罪小説としか言えないだろう。推理という面からは、話しも展開と終わり方が推察できるになるのだろうが、 自然に読み流されても何も問題はない。動機は復讐でそれ故に多人数で組んで行える。舞台が違えば冒険小説ともサスペンスとも言えるだろう。
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2017/01に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。