推理小説読書日記(2016/12)
2016年12月04日
日蝕の断層<森村誠一>
1981年の作品。閉鎖的な世襲的な身分差別体質の成り立つ企業とそれが立地する都市を描く。封建的な社会の企業と都市モデルだ、そこの下層階級から上を目指す野心家 の目で、幼少から登り詰めて行く過程とその結果を描く。そこには複数の野望と、複雑な利害関係と表と裏の繋がりがある謎の社会だ。小説的には謎解きよりもその社会 を描く事に比重が大きい
2016年12月04日
神南署安積斑<今野敏>
日本の本格警察小説の代表と言える、安積警部補シリーズの1冊で9作から成る初の短編集だ。「ベイエリア署」から「神南署」に係がまるごと移動し、本作を最後に「 ベイエリア署」に戻る。それは後半の作品中で明らかになって行く。短編集は、個々の作品に斑のメンバーが個々にメインで登場するスタイルを取られ、新聞記者が絡む。
2016年12月04日
若さま旅愁峠<颯手達治>
初読作者で情報はない、冒頭で主人公の情報が出されるので表と裏の姿が判ってからの話しが展開する。何故か何が有っても生き残るタイプの主人公だ、周囲は犠牲者は仕方 ないという、しばしば見られる伝奇時代小説のスタイルと見る事が出来る。
2016年12月10日
湖毒夢<夏樹静子>
漢字1文字の題名の短編5作からなる作品集だ。女性を中心にした本格味の多いミステリが集まるが、独立した作品で個々に微妙に異なる作品で。視点も異なる。 意外なトリックや犯人も登場する作品もあるし、終わり方が多様で読者に予想させない作品群となっている。
2016年12月10日
ジェリーフィッシュは凍らない<市川憂人>
鮎川賞受賞作で純本格ミステリだ。新型飛行体が雪山に不時着して動きが取れなくなり、発見された時には乗務員全員が死んで居た。一体何があったのか、犯罪なら犯人は どの様に消えたのか。地上で奇妙なコンビが捜査し、ついに犯人を待ち伏せ会う、「あなた誰」と尋ねる。
2016年12月10日
金田一耕助の冒険1<横溝正史>
多数の短編も残した作者が、一時期に同じ背景で似た題名の連作を書いた。その連作を2冊の短編集にまとめた、同一背景で同一探偵で、似た雰囲気のトリッキーな作品集だ。 多くの長編を残しているが、本格短編でもやはり名手だと示した。
2016年12月16日
七人の探偵のための事件<芦辺拓>
探偵または名探偵を多数集める趣向は前例が複数ある。著名な探偵キャラを借りる作品と、作者自身が多数の探偵キャラを持っておれば動員する作品がある。本作は後者だが 動員数が多いためにお馴染みではないキャラも混ざる。複数の探偵が複数の事件を分担する作品の狙いは何か、そこから考えると作品の狙いも一部は判りそうだ。
2016年12月16日
カンパネルラ<山田正紀>
若くして死んだ宮澤賢治とその作品の「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」の謎を過去の時代に追う。「銀河鉄道の夜」は複数回書き直され、作者が意図した完成版が不明と考え その謎を追う、発表最終作とか完成最終作とかの表面的な形で満足しないで追う。そこには作者の宮澤賢治の死が関係し、その時期までが疑問になり追う事になる。
2016年12月16日
香住春吾探偵小説選2<香住春吾>
戦後に登場した関西在住作家で地方紙発表作は知られていない、放送作家が忙しくなり発表が途切れたが、昭和50年代に再度描き始めたが発表誌の廃刊で途切れ、そのまま 終わったようだ。膨大な放送台本までは調べようがない様だ、関西在住者にはローカル番組の脚本で見かけたり、自身の小説のアイデアを「部長刑事」等でドラマ化したものを 見た記憶がする。小説もドラマ脚本もユーモアと喜劇要素を感じる作家だ。
2016年12月22日
さざなみの家<連城三紀彦>
ある家族の中に出来ては消える色々な大小の出来事、トラブル・疑惑から争いへと進む、それらが展開し解決したり次の展開を示す。24作の短編風の物語が1つの家族の 長編ストーリーとなり展開する。家族の中のミステリーなホームドラマだ。
2016年12月22日
真昼のわな<笠原卓>
昭和43−45年に女学生向きに発表された短編を集めた作品集だ。読者に合わせた主人公の設定と舞台で書かれたソフトなミステリだ。事件は小ぶりでもストーリーの ミステリ性には変わりはない、登場人物には大きな出来事だと言える。普通の生活の人が遭遇する事件の多くがその性格を持つ。
2016年12月22日
地層捜査<佐々木譲>
東京の昔から続く町を舞台に、かつ過去の事件の再捜査をテーマにした警官の捜査を描く。小規模にこつこつとゆったりとしたペースで、過去の事件を追う。当時は何故に 解決しなかったのか。今に振り返り見ればどうか、その後に何か新しく見えた事はあるのか。人は年齢を重ねて、秘密の重さが変わるが、それでも隠す事はなにか。それは 今でも同じ状態か、それは個々の人で意味が変わってくる。
2016年12月28日
四色の藍<西條奈加>
時代小説で江戸時代の江戸を舞台にした、人情物と謎を含む復讐計画を描く。色々な女性らが異なるきっかけであつまり、個別の事情を持ちながら共通する目的を目指す。 ただ個人が謎含みでその真相は何か、どのような決着に向かうかは判らないという展開を見せる冒険小説とも犯罪小説の味も含む。
2016年12月28日
螺旋状の垂訓<森村誠一>
膨大な作品数の作者の初期の作品だ。題名から時間軸が絡む事が判るし、垂訓を素直に解釈すれば誰か教える者・リーダーの存在が予想され、複数・グループを推測させる。 時間と複数の人物と考えれば、複雑な展開を予想できる、そしてストーリーはそれを裏付ける、無関係にも見える多数の事件で展開する。
2016年12月28日
残照<今野敏>
安積警部補シリーズの1作で、東京湾臨界署が再度設けられて神南署から斑全体が異動して来る。そこで暴走族の事件が発生し捜査本部が出来る。交通機動隊の速水警部補が 深く捜査に関わり、自動車のバトルやらを行う。そして暴走族の別の姿を知って行く。
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2016/12に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。