推理小説読書日記(2016/11)
2016年11月04日
気まぐれ食堂 神様がくれた休日<有間カオル>
ミステリ色は薄い、主人公が生活の切れ目の長期休暇に瀬戸内海の小島で暮らした生活を時系列で描く。全ての人と物が初めての出会いで都会人間には珍しい。小島でも 知らない場所はあるし、誤解をしたまま時間が経過する事もある。島を離れるまでにどの程度判るのだろうか。
2016年11月04日
アルバトロスは羽ばたかない<七河迦南>
まだまだ作品の少ない作者だが、鮎川賞受賞第1作は舞台と登場人物は、デビュー作と同じでシリーズ2作目と言える。連作短編が長編に収束する構成も似ている(??)。 春から晩秋までの4つの短編が並び、その合間に冬の話しが断絶的に挟まる。そちらには若干の違和感があるが、4つの短編と共に次第に解かれる様に見える。はたして どの様に収束するのか。
2016年11月04日
真説金田一耕助<横溝正史>
横溝正史ブームが起きた昭和51-52年に書かれた作者のエッセイ集だ。内容は多岐に渡るが、突然のブームに驚きながら過ごす様子や、色々な思い出や新作執筆構想を語る。 連続掲載エッセイは慣れない筈で題材は揺れ動くが、それが替えって新鮮に見える。
2016年11月10日
香住春吾探偵小説選1<香住春吾>
戦後登場した関西の作家だが、発表誌が分散されていたり、一旦途絶えて昭和50年頃に短い期間だけ復活したり、長編が無かったりでマイナー作家に属するだろう。 関西系の放送作家の仕事が忙しかった事が理由で、関西ローカルのテレビやラジオではかなり活躍している。本作品集は小説では初の単行本で、作風はユーモア+本格 ミステリと言える。昭和50年頃の作品は「2」になるが、もしドラマ台本が残っておれば膨大な数になり「部長刑事」等のミステリ系も多い筈だ。
2016年11月10日
交換殺人はいかが?<深木章子>
副題が「じいじと樹来とミステリー」で初の短編集となる。形式としては、「半七捕物帖」や「退職刑事」風の元刑事から事件を聞き出すものだ。時代設定やジャンルを 自由に選べる面と、時系列捜査に向かない面がある。ただ誰が探偵役かは別になる。
2016年11月10日
いつわりの不死鳥<笠原卓>
笠原卓のジュニア向け作品集の同人出版で昭和43年頃の作品だ。ジュニアと言っても10代の女学生が主人公が多く、対照読者設定も同じだろう。それを前提に読めば 手堅いジュニア向けミステリと言える。発表時期が短期集中なのは、作者の活動自体が継続的でないのと同じだろう。
2016年11月16日
蜃気楼の王国<高井忍>
中国や日本の歴史を題材にしたミステリーを発表している作者だが、本作は5つの話しからなるが、その内の1/4/5話が琉球が舞台となって居るのが特徴だ。それを 中国と日本も舞台となる。書かれている時代の色々で、そこから過去の歴史を推察する構成が多い、クッションが入る事で真実が不明な歴史がより夢想か偽の歴史か不明に ぼかされて行く。
2016年11月16日
伝七捕物帳<陣出達朗>
時代小説傑作選と銘打つ作品集の1冊で、多数の作品からの選集となる。伝七捕物帳は最初は複数作家の共有執筆作品だとは知られているが、その後も書き継ぎ量的・期間的に 長く書き続けたのが作者の陣出達朗だ。捕物帳はキャラクターが目立つ小説でもあるが、固定された黒門町の伝七は遠山奉行との関係と紫房の2丁十手の同心扱いと鎖術などの 達人として描かれる。本集は伝七が岡っ引きになるきっかけのはなしや、江戸を離れて活躍する話しなど固定キャラ以前の物が意識的に採られている。
2016年11月16日
火祭りの巫女<月原渉>
デビューからニュージーランドが舞台の作品や、軍隊が舞台の作品を2冊ずつ書いた後の、5作目だ。内容ががらっと変わり、伝奇本格ミステリとなった。古き時代の作品を 思わせる舞台と設定と登場人物との中での、過去と現在の似た殺人事件を伝奇的なトリックで構成する。また全く異なる世界に入った作者の意図は不明だし、作品的に愛読者 も大きく変わっても不思議でない。
2016年11月22日
ほりだし砂絵<都筑道夫>
亡き作者最大のシリーズ「なめくじ長屋」は全集が出てその補遺も出た。ところが1作残っていて、同人出版された本だ。短編と17人の作家等のエッセイが掲載されて いる。歌留多の見立て殺人と言う江戸時代に合いそうな内容だ。エッセイはこのシリーズが中心だが、作者や作品全般を対象にしたものも含まれる。
2016年11月22日
浪花の太公望 鍋奉行犯科帳<田中啓文>
鍋奉行シリーズは初読だが第3作目で、中編3作からなる作品集だ。関西を舞台にした時代小説で、食い道楽の奉行が主人公だ。捕物帳ではなく犯科帳という題は、微妙で 食い道楽の騒ぎは何と表すか微妙だ、時代小説で無難だろうが多彩と言うか、あちこち寄り道というか縛られない内容だ。
2016年11月22日
憂いなき街<佐々木譲>
北海道警シーリーズの1作だ、佐伯・津久井・百合などの面々が複数の事件を追い絡んで行く。純警察小説感の強いシリーズだが、その他の面も加わりながら進んで行く。 音楽・恋愛?・・・メインのスタイルは変わらずに、他が追加される形だ。
2016年11月28日
ささやく真実<ヘレン・マクロイ>
レギュラー探偵役のウィリング博士のシリーズ長編の1作だ。女性が友人の研究室から自白剤を堂々と盗み出す導入部から怪しいが、それをパーティで仕込みその夜に何かが 会ったが参加者は共同して何も言わない、そして仕掛けた女性が殺害されると言う展開となる。未知の薬は殺害方法ではなく、架空の背景設定に使われる。その背景での犯人 探しの本格推理となる筈だが・・・。
2016年11月28日
背中合わせ<連城三紀彦>
21作収録の短編集で、掌編の長さだ。派手な演出には長さが短く、恋愛小説と区切れない日常からの切り取りも多い。自由なテーマかも知れないが、長さの制約の方が強い だろう、その中で飽きさせず読ませ続ける作品が並ぶ、それは技巧なのか感性なのか文章力か?。21作のどれが好きかは個人におまかせの作品集だ。
2016年11月28日
いつもが消えた日<西條奈加>
副題が「お蔦さんの神楽坂日記」で、お蔦さんシリーズ2作目で長編だ、孫で料理などの家事担当の望の視点で描く祖母・お蔦と、友人に起きた事件を描く。個々の章が 個別事件の短編的な構成でもあり、連作短編集+長編的な見方も出来るが、長編の事件が背景でのしかかるので素直に長編と言って良いだろう。
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2016/11に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。