推理小説読書日記(2016/09)
2016年09月05日
流氷の夜会<森村誠一>
素人探偵役と警察が途中から関わる、この作者の得意のパターンだが、ただその事件の広がりが激しい。見合いで夫の事を知らないままで結婚した女性が最初の主人公で 奇妙な手紙が届き続けて夫が失踪する、独りで探し始める同級生に会い二人で調べて行く。そこに次々と殺害事件が起きて警察が捜査する、そして双方が交わり、事件が 広がって行く。
2016年09月05日
屋上の道化たち<島田荘司>
島田荘司作品医には多数のレギュラー探偵が登場するが、長く人気があり同時に未だに正体不明なのが御手洗潔だ。その御手洗シリーズ50作目と謳われた作品だ。舞台を日本に 戻してと言うよりもその時代が背景となる。シリーズ中には偶然が重なり、理解不可能な現象に見えるというパターンの作品がいくつか含まれる。それは手品師かペテン師かは意見 が別れるが、本作はそのパターンの作品だ。
2016年09月05日
金色の魔術師<横溝正史>
ジュブナイルの作品の長編だ。金田一耕助や等々力警部も登場するが主人公は子供となる。怪獣男爵シリーズ後にかかれ、金色の魔術師が登場する。内容的には同傾向だが、 あまり金田一耕助の打率を落とすの避けるためか、直接の登場は抑えめになっている。とにかく作者のサービス精神を感じる。
2016年09月11日
棟居刑事の東京夜会<森村誠一>
自分の人生が平凡と思い他や冒険を望み中年3人組が、ホームレスと会い、学生時代を思うときに女性を思い出し探す。総会屋が殺害されて捜査を始める警察や棟居刑事らと、 他の小説にも登場する新宿のホームレス・将軍ら。それらが次第に繋がる時に、殺人事件捜査も動き始める。
2016年09月11日
H・H・H<島久平>
島久平の多様な小説を網羅した同人出版も終わりに近づく。ミステリ専門誌に書かれた中短編という事で、新聞向けのコントとはかなり異なる。後期の奇怪な作品群の中では ミステリの純度は高い、もちろん初期の本格物とはかなり味は異なる。
2016年09月11日
藤井礼子探偵小説選<藤井礼子>
藤井礼子と大貫進の名義はある程度しられて居るが、他にもあるようだ。出版社や雑誌廃刊に巻き込まれた不遇のなかで書かれた作品群の初めての単行本化だ。活字作品が 短編のみでかなり作品傾向も広く、まとめて読まないと掴みにくい作者だ。福岡で石沢英太郎・新羽精之やと交遊があった様だ。
2016年09月17日
ゾディアック計画 セクメト3<太田忠司>
刑事と超能力女子高生が大きな敵と戦うという、奇妙な警察小説のシーズ3で完結編だ。ヒロインの設定は最近は、似たイメージで多様化する傾向がある。女性刑事からの 変化球か、伝奇小説の現代版か?。そこでは、犯人と通常の刑事がむしろ重要の様だ。
2016年09月17日
プラ・バロック<結城充孝>
機動捜査隊・女性刑事・クロハを主人公にする。ただ内容は通常の警察小説的に進み、途中からネット世界とSF的な設定が組み合わさった全く別の世界に変わる。人名をカタカナ 表記する手法は、好みか後半の世界に会わせたのか。読者の好みで評価が分かれそうだ。
2016年09月17日
ゴースト=/ノイズ(リダクション)<十市社>
作者名も題名も読みにくい。舞台は完全に高校の学園小説だが、主人公の自称・幽霊と周囲の人物が皆異様だ。ストーリーがそれらの人物に依存するので、どこか奇妙な 展開の中にそれ以上に奇妙な企みが含まれる。静かに騙されるのがまともな読み方だろう。
2016年09月23日
嘘は罪<連城三紀彦>
恋愛小説には純愛小説もあるが、恋愛ミステリーとなると利害が絡むのが普通だし夫婦が絡むと浮気話しとなる。こちらの世界には定番も公式もなく、多様な世界と結末が待つ。 それの連作となるとプラスの内容を加えて、ますますバラエティにとんだ内容となり、読者は振り回される楽しみを味わう。12作収録で題名にしりとり的な繋がりをもた せたが内容はそれに惑わされない事だ。
2016年09月23日
警官の条件<佐々木譲>
「警官の血」という3代続いて多様な警官家族を描いた作品の、最後の人物を登場させた続編的な体裁を取る。本作自体も大作に入るだろうが、主人公はもう1人の風変わりな生活 を送る刑事だ。一匹狼的で、一度退職させられて再度復職する、だがその意味と行動は部分的には一部の者しか知らず、ましてや本心は本人以外は知らない。本来の主人公の刑事 にも最後まじかまで判らない。
2016年09月23日
ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺<田中啓文>
落語家の世界を舞台に、変人ばかりのなかでも特別の笑酔亭梅寿に、無理に弟子入りはせられた落語が嫌いな主人公の梅駆が迷い・ふてくされながらその世界に入り進む。 そこで起きた事件を解決して行くが、梅寿が解決したもの代わりに説明する形になる。シリーズ作だ。
2016年09月29日
ICON<今野敏>
安曇警部補シリーズ第5作で神南署所属だ。テーマは、仮想現実の世界でしかも、バーチャルアイドルだ、存在が不明でそこからアウトプットされる情報だけがひとりあるき している。その中での事件を安曇斑が追う。世代ギャップと、管轄が違う警察組織との絡みのなかでの捜査は、異質な警察小説となった。
2016年09月29日
白愁のとき<夏樹静子>
ミステリを狭く考えると、外れるだろう、あるいは倒叙だという人もいるだろう。アルツハイマー病は肉体は死なないが、精神余命がありそれを知った人間のその範囲での行動は 当人以外は理解が難しい。それは当事者も同様で、それを辿る事は別のサスペンスだ
2016年09月29日
あばれ狼<池波正太郎>
歴史小説と伝奇小説と捕物帳の区別は、よほど偏っていないと難しい。歴史に関心を持ち資料を調べたものが歴史小説を書くわけでない。小説は歴史書でないので、描き方が 重要だ。伝奇小説と捕物帳を歴史に詳しくない者がイメージだけで書いて面白いかどうかは不明だ。そこには、区別は存在しないし読者が比重の差を感じるだけだ。本短編集は 後の大作「真田太平記」につながる真田ものが多いのも自然だろう。
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2016/09に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。