推理小説読書日記(2016/08)
2016年08月06日
棟居刑事の黙示録<森村誠一>
老人と少女の友情から始まる、そこに社会問題が関わり、そして殺人事件が起きる。そこで棟居らの刑事の登場となるが、警察の手が届かない所で事件の影響は勝手に1人 で動き、老人も関わる事になる。そして警察の老人と関わる頃には、事件は広がり黒幕が登場する。
2016年08月06日
残照<辻真先>
辻真先の近作は、長年に渡って拡げ過ぎた自身の創造した世界をまとめる・収束させる様子が見える。本作は代表作「アリスの国の殺人」の舞台に常連が揃い、複数の謎を 解くという展開だ、その中の人物には多く登場した者もそれ以外もいる。忘れたのではないという作者の思いだろう。
2016年08月06日
仮面城<横溝正史>
多数書かれた、ジュブナイルの作品集で、中編1+短編3が収録される。自身の世界と、冒険・サスペンスを中心にした物語を作る、そして金田一耕助や三ツ木俊助や由利先生 まで登場すると言うサービス過剰だ。冒険・サスペンスば中心だけにゲスト探偵の活躍を期待しすぎない事だ。
2016年08月12日
幽霊博物館 都筑道夫少年小説コレクション2<都筑道夫>
少年小説がブームかどうかは知らないが、殆どの作品が単行本になっている、あるいは復刊されている、あるいは古書市場で見つけられる状態になると、見付からなく残るのが ジャンル以外と少年小説なる傾向はある。それらの本にも作者の個性やあるいは、時代的な先駆性や資料性がある事が多く、探したり復刊されたりする。需要は大きいとは 言えないが、確実に歓迎するマニアは存在する。このコレクションは復刊を含めた全集で本巻は推理編だ。
2016年08月12日
天を行く女 若さま侍捕物手帖<城昌幸>
知名度と映像化が先行気味の「若さま侍」シリーズだが、小説となると現在ではどの程度読まれているのだろうか。本作は長編で、カバー紹介でも「若さま侍」が活躍となっている。 だが想像以上に登場も活躍もしない、サブキャラまでは言わないが登場しなくとも・・・とも言えなくはない。捕物帖で主人公のキャラが映像と異なるのは定番なのだが。
2016年08月12日
君の館で惨劇を<獅子宮敏彦>
ミステリマニア向けに書かれた、ミステリマニアと作者が登場し、過去の名作群の世界が登場する。小説とはいえ背景自体が架空で空想の産物でそこで事件の乱れ打ちが起きる。 そもそも登場する有名作をどの程度読者が既読かに頼る部分があり(ネタばれは少ないが)、面白みは読者任せとも言える。
2016年08月18日
忍法フ棒一<島久平>
作者の、昭和46-50年の時代劇の短い短編集だ。地方新聞のコーナーに掲載されたもので、スタイルは色々で時代・ミステリ・落ち話し・色気・ユーモア・怪奇?と何でもあり だが、短い作品での制約から何かに決める事が無理だったと思う。
2016年08月18日
少女<連城三紀彦>
5編からなる短編集で、男と女のサスペンスとでも言うのだろうか、分類自体がネタばれ気味だ。恋愛というには範囲が広すぎる。ミステリと言うには、拘りが薄いただし手法は そのテクニックが満載だ、作者の登場人物を借りた語り口は読者を迷わせてくれる。
2016年08月18日
十二人の抹殺者<輪堂寺耀>
「珍本全集2」で一応は本格ミステリー編だ。連続殺人と密室殺人のパレードとも言える。作者は複数のペンネームを使用したらしく、輪堂寺耀作の「十二人の抹殺者」と尾久木弾歩作の 「人間掛軸」を採録する。探偵役が江良利久一で同じなので、同一作者とは判る。複雑な密室と言うよりは多彩でな密室というべきかと思う
2016年08月24日
ハダカ島探検 城昌幸少年少女作品集<城昌幸>
作者の知名度は高いが、多くの作家と同様に正確な書誌がなく、その本(テキスト)に多くの入手困難・不明が含まれる。複数の分野で書いているし、分散なのか初出のみで 埋もれているのかも判らない。そんな中の、少年少女向けに書かれた作品を集めた短編集だ。従ってジャンル的には広がっているし、そもそも城昌幸の作品として初めて聞いた ものが全部だ。
2016年08月24日
完盗オンサイト<玖村まゆみ>
2011年の江戸川乱歩賞受賞作だ。かっての乱歩賞=本格ミステリ=不可能犯罪が多い・・・のイメージから、最近は大きく離れた。次第に読む機会も少なくなった。この作家も 初読だが、正直ミステリに見えないし、何が謎かも不明だし、冒険小説・犯罪小説として見るとバランスが偏る。広がったエンターテイメントの個人的に理解しにくいジャンルなのかと 思う。
2016年08月24日
黒幕<池波正太郎>
昭和40年から50年代に書かれた時代小説の作品集だ。歴史小説に近いものも含まれる。その後に大作長編になった作品の、先駆的な題材も複数見られる。作者の興味が既にこのころに 存在していた事が判る。11作収録だから、短い作品が多い筈だがかなりの重量感がある。
2016年08月30日
トカゲ<今野敏>
捜査1課特殊斑(SIT)は今では有名だ、同時に機動捜査隊や、覆面バイク部隊トカゲも多くの小説やドラマに登場する。本来は存在自体が明白でないのだが。本作はそのSITと トカゲを登場して描く。トカゲは普段はバラバラに異なる業務をしていて、必要な時に召集される事に設定されている。本作の視点はSIT所属のトカゲにあるが、SITとトカゲの 中心人物は別に居てそれを側で描く、その様になる事件は誘拐だ。
2016年08月30日
死なれては困る<夏樹静子>
平成初期の短編集だ。一作ずつ異なる背景で情報と犯罪の絡みを描きながら、ミステリーの謎を仕込むというミステリの本道を進む。いつもながら長編に出来る素材も多い。 取材力と好奇心の旺盛な作者には、出し惜しむ理由は無く次々と話題と謎を提供する。
2016年08月30日
酔いどれ牡丹<角田喜久雄>
眺めの作品が多い作者だが、新聞連載小説となるとより長くなるらしい。上州沼田の謎の秘境の秘密を背景に、多数の(話しの長さににしては少ない)男女が登場し、敵味方か 判らず入れ乱れ進んで行く、この作者には小説の長さは自由自在に感じる。戦時中や現代のスパイ小説と較べて、この時代の伝奇時代小説は如何に制約が少なく作者の筆力に 依存するかが判る。
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2016/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。