推理小説読書日記(2016/07)

２０１６年０７月０１日

　自殺予定日＜秋吉理香子＞

少女と言うか娘の１人称の呟き、妄想か現実かはたまた・・・・。誰しもその疑いを持つ内容で展開する。読者が語り手に感情移入しにくい状態だが、そこを伝って行く。 乙女チックと言うには、内容は厳しい、殺す殺されると恨みと復讐が盛り上がる。どういう読み方が良いのかは、読み終わってから考えるのが適当だろうが、読書とはその 様なものでないので厄介だ。

２０１６年０７月０１日

　未来学園＜都筑道夫＞

「都筑道夫少年小説コレクション５　未来学園」が正式本名で、内容はSF・ホラー編だ。連作の「未来学園」と「スター・パトロール」とそのた８編からなる。実際の執筆も 1960-80代と幅がある。その初期は日本に明確なSFとか作家が居ないに近い状態だった。少年小説の面とSFの先駆的な面がある

２０１６年０７月０１日

　深紅の断片＜麻見和史＞

分類すれば警察小説になるかもしれないし、素直に本格ミステリーとした方が良いかもしれない。主人公は消防士で緊急車両・救急車担当だ。事件の時も現場に行く機会が多い 、もっと言えば真っ先とも言える。そこで見るものや死者の最後の言葉などを知る機会も多い。そして複数が重なる時は次第に深く関わる事もある。

２０１６年０７月０７日

　緋牡丹盗賊＜角田喜久雄＞

生類憐れみの令という悪法の時代は犬が横行し、それが原因で罪に問われたという。その背景で怪盗・緋牡丹盗賊が出没した。鐘撞き仁平と娘の小町と呼ばれたお柳、御用聞き籐吉、 謎の若衆佐太郎、同心・鬼弥五と弟の前島数弥、唐人の男女・・・・表と裏の顔。次々に登場する人物の多数が乱れ争う時代伝奇小説。将軍の死去と悪法の廃止まで続く。

２０１６年０７月０７日

　セーラー服と機関銃・その後　卒業＜赤川次郎＞

セーラー服と機関銃で目高組が解散し高校生に戻った星泉が、卒業直前に事件に巻き込まれる。その２に当たる続編で、前回の事件で何故か名前だけがその世界で知られた泉が 舞い込まれ、色々な人物と出会い果ては、お約束の機関銃を撃って・・・・。

２０１６年０７月０７日

　悪意の死角　東京・京都殺人ライン＜深谷忠記＞

黒江荘と結婚して笹谷から黒江に替わった美緒が親友に頼まれ事件に絡み、勝警部らと情報交換して解決するシリーズの１作だ。後期は、トリックはなく事件全体の違和感・ 疑問点から犯罪計画を暴く展開となる。従って「考える人」の時間も短めで雰囲気が変わる。

２０１６年０７月１３日

　スーザン・デアの事件簿＜エバハート＞

電子書籍版。ミステリー作家が主人公のミステリー作品集だ。個々の作品はアンソロジー等に掲載されているものが主体で、日本初紹介は１作だけだ。逆にまとめられたのが はじめてと言えるし、古いものは新訳となる。時代的にホームズ時代で、その古さはあるが、その上でクィーンの定員の１冊として読む。

２０１６年０７月１３日

　江戸悪魔祭（上）（下）＜高木彬光＞

伝奇時代小説になるだろうが、同時に奉行所とそこの配下？が謎を追うスタイルは、捕物帳にも読める。謎を追うのが複数で、個々に謎の種類が異なる事になり、サスペンス 色も濃い。全体の謎と、個別の小さな謎が重なる事で予想外の展開を見せながらも、元の謎に近づく。

２０１６年０７月１３日

　黒と愛＜飛鳥部勝則＞

最近の作だが、雰囲気は探偵小説時代をも感じる。ジャンルも特定に別けがたい。複数の作家の雰囲気が混ざり、独自に展開するが、個人的には小栗虫太郎に近い雰囲気を 感じる。ただ、作者は意識していなく、自然に表現から感じる様にも思う。

２０１６年０７月１９日

　無音の弾丸＜アーサー・リーヴ＞

電子書籍版。クレイグ・ケネディのシリーズで犯罪科学を取り入れた作品群が特徴で１３作から成る短編集だ。科学知識の発表時の先端の紹介の意味が強くて、それが一般に になると次第に読まれなくなった様だ。ちなみに表題作は、単にサイレンサーの事だ１００年前は珍しかったのだろう。「新しい」事の宿命は現在の携帯電話ではっきりしている 、数年で古くなってしまうので扱いが難しい。。

２０１６年０７月１９日

　二人のウィリング＜マクロイ＞

レギュラー探偵役が二人という題名と内容だ、現象は直ぐに始まるが謎として整理されるまでの全体の半分を超えるのは、どこか計算違いが感じられる。長編だが、中編的な 雰囲気だし、別の構成もあったと思う。

２０１６年０７月１９日

　殺人交響曲＜蒼社廉三＞

長編３作だが「戦艦金剛」で有名で、残りの２作と未収録短編を集めた「珍本全集」の１冊だ。短編はかなりあるらしいが、短編集はないのでそちらの方が珍しいかも知れない。 長編２作「殺人交響曲」「紅の殺意」は普通のミステリで珍本ではないが、入手困難の意味だろう。

２０１６年０７月２５日

　ジュディス・リーの冒険＜リチャード・マーシュ＞

電子書籍版。あまり紹介されていない作家で、ジャンルも本格でない作品で知られるようだ。この作品集も完訳でなく、単行本から２作のみ掲載だ。主人公は題名どうりで 読唇術を得意とする設定だ。盗み聞きが出来ることから、事件に巻き込まれる、探偵自身が能力を持たなくとも捜査に利用する事は、これ以後も多数使用されている。

２０１６年０７月２５日

　夢ごころ＜連城三紀彦＞

副題が「新・雨月物語」の連作集で、短い作品１２話でなる。「雨月物語」自体が一部しか読んでいないので、比較は出来ないが解説では影響のある作品もあるらしい。 ただ無視して読んで問題なく、ジャンルが広い結末を予想させない短い作品ば揃い、シリーズものでは味わえない奇妙な体験が出来る。

２０１６年０７月２５日

　七花、時跳び！＜久住四季＞

題名どうりに、タイムトラベルの物語だ。タイムトラベルのパラドックスに挑戦なのか、パロディなのか狙いははっきりさせていない。タイムトラベルのパラドックスを 登場人物二人が回避しようとあがくが、二人のなかで考えに食い違いがあり、パラドックスに関係ないトラブルまで加わる。

２０１６年０７月３１日

　死の谷から来た女＜夏樹静子＞

犯罪・サスペンス長編だ。孤独な女性に資産家らしい男が養女へと望む。それ自体が奇妙だが、周辺に妙な事が次々と起きる。小説の最後にも出て来る、アルレーの「わらの女」 を思わせる展開だ。作者が意識しているのだから、同じではないが、さてどこに異なる犯罪計画が埋め込まれているののだろうか。

２０１６年０７月３１日

　オーブランの少女＜深�獄�分＞

やや異質の舞台と文体で書かれた謎を犯罪を描く広義のミステリの短編集だ。謎に引かれるよりは、ストーリーに引かれて行くタイプで先が見がたい事が特徴だから、読む方も かなり疲れる。ストーリーの乗っかってしまう読み方もあるかも知れないが、面白みが弱くなりそうだ。

２０１６年０７月３１日

　蓬莱＜今野敏＞

安積警部補シリーズの第４作だが、スタイルが変わりゲーム会社に起きた事件をその会社の社員達が追うのが主体だ。そこに妨害する勢力が存在し、その対抗として安積らが 登場する。何故ゲーム如きに謎の組織が販売阻止に動くのか。そこにある謎は警察小説的なものとは異なるので、小説のスタイルも変わった。膨大なスケールを背景とした 謎の解明にゲーム関係者が挑む。

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2016/07に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。