推理小説読書日記(2016/06)
2016年06月01日
投げ縄お銀捕物帳<陣出達朗>
題名と作者名から、オーソドックスな捕物帳を予想したが、かなり変則的な話しだ。江戸の競う2人の目明かしの息子と娘が好き合い、親の反対で上方に駆け落ちし娘を産む。 機嫌取りで息子と偽ると、片方の父が老齢で孫に十手を譲ろうと考え孫を江戸に呼ぶ。おてんばで池の鯉を縄で捕るのが上手な娘が男に変装して、江戸の目明かしになる。 この当たりが前半半分の中心で、隙間に捕物が入る。後半は捕物の比重が増えるが遊び人の金さんが登場する。コメディかパロディか?。
2016年06月01日
大公女殿下に捧げる密室<芦辺拓>
森江春策がヨーロッパの小国に即いた大公とその女殿下の要請でその地に行く、理由はかなりのページ数で説明される。大体そのような国とタイミングは、色々な事件や陰謀が 次々現れる事になっている、それは部分的には冒険・サスペンスであり、本格推理であり、伝奇小説の雰囲気が漂う。
2016年06月01日
影丸極道帖(上)(下)<角田喜久雄>
主人公は元与力・白亭と若い同心・三平とが、怪盗・影丸を追うと、次々と怪しい人物が登場しどれとどれが仲間か判らない争いを繰り広げ、巻き込まれた白亭の養女で三平を 小夜が巻き込まれ、影丸と小夜の行方を追いながら、次々と現れる敵?を追う。捕物帳の形式と伝奇小説の風味が混ざる展開を示す。
2016年06月07日
ケムール・ミステリー<谺健二>
造形作家とか特写映画の怪獣等のデザインとかがCGでなく、大きさは別にして実際に作られたいた頃は、その作者には色々な才能を必要とした。その1人とそのアトリエを中心に そのデザインの着ぐるみ?、少し異形の場所を背景に、そこで起きる・起きた密室事件を描く、数々の古典的風味を感じる。
2016年06月07日
人質<佐々木譲>
北海道警シリーズの1作で、レストランがジャックされ人質を取り立て籠もる。ただ真の狙いが判らない、人質に巻き込まれた小島婦警と別の事件で関わる佐伯らがいつしか集まり、 解決に向け協力する。小道具が時代性が強く、内容の風化の心配がある。
2016年06月07日
土螢<近藤史恵>
猿若町捕物帳シリーズ5作目で、3作目の短編集だ。時代小説が多く書かれるが本格的な捕物帳は必ずしも多くはない。本作は、典型的な捕物帳であり、幾多の著名なシリーズを 継ぐスタイルを取り、しかもシリーズと呼べる作品数が増えて来た事はうれしい事だ。
2016年06月13日
アンデッドガール・マーダーファルス1<青崎有吾>
題名を訳せば「不死身少女の殺人笑劇」になるのだろうか、その1冊目だ。中身は、「序章」「第1章」「第2章」となっており、やや長い背景設定章と、2つの事件からなる。 短編集の形態を取らない事は、自由な長さで続編を書こうという事だろうか。怪物事件専門探偵と鳥籠を持ち男だが真実の探偵は、鳥籠・・・・。背景も設定も異様だが、その中 では論理的??に謎解き解決に進む。
2016年06月13日
たそがれ色の微笑<連城三紀彦>
5作からなる短編集だが、恋愛ミステリよりも広い人間ミステリというべき題材を扱っている。個々には繋がりもないし、テーマも細部は異なる。ただ、共通点を探せば見つかる かもしれない。ミステリ重視派には、あまり気にしない事だが・・。
2016年06月13日
放課後スプリング・トレイン<吉野泉>
高校を舞台に、主人公の女子高生が描く青春小説の形式を持つ。そして、知り合った大学院生が日常の謎を解く、連作という形式を持ち。そういう話しと言って良いかは多少 疑問はあるが、あまり深く立ち入らない。第23回鮎川賞の最終候補作の大幅改稿という、応募時の内容に興味を持つのは余計だろうか。
2016年06月19日
鷲見ヶ原うぐいすの論証<久住四季>
タイトルの前半は登場人物名で「すみがはら・うぐいす」と読む。麒麟館に招待された6人に降りかかる謎を解く??のか。その他に誰かいるのか、それは悪魔なのか、 それとも誰かがなりすましているのか、論証が始まるが、居ない=不在の証明は無理なのではないのか。
2016年06月19日
人情武士道<山本周五郎>
12編からなる短編集だが、最後の2編は現代物だそしてその1編はミステリー雑誌にも採録された怪奇探偵小説だ。昭和10年代と言うデビュー当時でかつ、まだジャンルが 確立されていなかっただろう時期の試行錯誤の作品集だろうと思える。内容は多様だ
2016年06月19日
黄金の指紋<横溝正史>
ジュニア探偵小説で、怪獣男爵シリーズの1作で、野々村邦雄少年を主人公に等々力警部となんと金田一耕助も登場する。いささか、不似合い感は強いが、多重人格的な扱い は明智小五郎と似ている。
2016年06月25日
誤認逮捕<夏樹静子>
昭和40−50年頃に書かれた連作でない短編集だ。警察捜査を中心にした本格物が中心で、心理面にも重みが置かれている。本作者の短編は多彩でかつ、本格が多く定評が あるが、時代毎や作品毎に捜査者や背景設定に工夫と、新しい取り組みが見られる。初期の本作品集は警察捜査が中心と言える。短編ながら内容は深い。
2016年06月25日
伝説のない星座<森村誠一>
森村作品には、刑事が登場する事は多いが、前編に渡って警察捜査を描く事は少ない。本作の本間刑事も複数作に登場はするが、レギュラーかどうかは疑問だし、警察小説とも 言いがたい。巻き込まれかたの登場人物らの捜査?から事件が次第に広がり、そこに警察も係わって来る。謎解き要素の他に、サスペンスと社会派の風味が重なる。
2016年06月25日
宰領 隠蔽捜査5<今野敏>
シリーズ長編5作目だが、キャリアの署長で現場に強く係わる竜崎はシリーズ2作目からだ。警察組織の中では異色のキャリアと、それに合う考え方の主人公が一種のタブー的な 問題に立ち向かう新しいジャンルだ。本作もまた前作と異なる障害に対応する。場当たりではなく、継続的対応がシリーズのポイントだ。
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2016/06に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。