推理小説読書日記(2016/05)
2016年05月02日
現代詩人探偵<紅玉いづき>
現代詩人を目指す若者の集まりの10年後に、複数の死者がいた。集まった1人が、その死の理由を調べて行く。あまりに多いと思う死の理由は何か。詩人とは何で、それは 死と繋がるのか。男女でそれは変わるのか。そもそも、それを知りたい「探偵」の目的は何か。奇妙なテーマを追う。
2016年05月02日
狩久探偵小説選<狩久>
多様な面のある作家・狩久の選集だ。どの一部を切り取ったかは、この本だけでは判らない。それでも幾つかの切り口を見る事が出来る。たぶん、本集を組むきっかけと思われる 地方新聞連載の「佐渡冗話」はその中の複数の面を見せる。発表作全てを読んでも正体が不明かもしれない、作家の選集だが、アンソロジー収録作が目立つのがやや残念とも思った。
2016年05月02日
隠密飛竜剣<高木彬光>
伝奇時代小説の連作作品集だ。関東近辺が多い作者としては珍しく、江戸から薩摩までの各地を舞台とする。主人公は柳生十兵衛で、剣客にして、幕府と一族との関係は微妙で、 自由人として描かれる事が多いが、その大きな面は同じだ。細部は、大抵は小説上のことならば多様な面を見せる。伝奇小説では欠かせない人物の1人だ。
2016年05月08日
マンマ、マンマ<島久平>
複数のジャンルの短めの短編を集めた作品集だ。ノン・シリーズのミステリ短編と、怪奇小説やコント風の作品が含まれる。関西の新聞等に掲載された作品が主体で、珍しいと言える。 初期の本格の様な丁寧さは無く、おもむくままに書き流した印象がある。
2016年05月08日
真友<鏑木蓮>
父が刑事と巡査の親友の子供が、刑事が巡査を殺害する出来事で離れて全く異なる道を歩くが事件が解決したは不明だ。「発端」の部で、巡査の子は刑事になるが、「転結」 の部で13年を経て事件をきっかけに元親友の2人が接近する。それは13年前の事件の真相にも関わる事になる。
2016年05月08日
キアズマ<近藤史恵>
高校時代は柔道等を行っていた主人公はそこでの悪い思い出から離れた大学生活を望んだ、だが気がつくと部員不足の自転車のロードレース部に勧誘されていた。全くの素人から だし、体型が競技向きで無かったが基礎体力と気力で短い時間で2番手に昇りつめる。自転車ロードレースは、個人戦の様で団体戦の要素が大きい、チームのエースを勝たせる戦略 を取る。そこでのエース争いは、主人公の思いと無関係に進んで行く。
2016年05月14日
夜光怪人<横溝正史>
ジュニア向けミステリ小説集で、長編と短編2作からなる作品集だ。中学3年の進が主人公の探偵で、夜光怪人を追う、そこに記者の三津木俊助が助け、ついには金田一耕助まで 助けに登場する。一般向けでは見られない、キャラクターの共演だ。泥棒がわざわざ目立つ格好で登場するのは、怪人二十面相以来の流れだろうか。とにかく、キャラクターという 判り易いもので特徴をだす。何故とかにはあまりこだわらない。
2016年05月14日
ジウ3 新世界秩序<誉田哲也>
3部作なのだろうか、話しは連続しているが、警察小説で始まった話しは、次第にSF的な犯罪・アクション小説に変わってゆく。わざとなのか、もともともの構想なのか。 2巻目からミステリ的には弱くなり、広義のエンターメント小説に変わって行き、決着が付かないと思える内容で小説は終わる。わざと消化不良を起こしている様だが、 個人的には好きになれない。
2016年05月14日
花魁さんと書道ガール<瀬那和章>
XXガールが流行で、書道ガールなら何をするのかと思わせるが、主人公に現れる幽霊の花魁が恋愛の手ほどきをするという構成だ。コメディなのか、ナンセンスさが狙いか、 実社会で恋愛を語る人物の設定がむつかしいのか、日常の謎の変形だろうが、書道上達には恋愛というのは、それ自体がミステリアスだ。
2016年05月20日
ミステリクロノ3<久住四季>
時間移動装置を紛失した頼り無い天使のシリーズ第3作だ。天使もまたこの装置で過去に戻ると退化する。それを装着されて退化を始め、誘拐状態の天使を探す。 犯人は勿論、その装置を知っていてかつ持っている。時間が限られたないかで事件を追う、タイムリミットミステリとなる。
2016年05月20日
硝子の殺人者<今野敏>
安積警部補シリーズの第3作で、東京ベイエリア分署シリーズの第3作でもある。非常に面白い警察小説だが、シリーズはここで一度途切れる事になる。主人公は別の形で 復活するし、メンバー全体も別の場所で復活登場する。そして長いシリーズとなる、その原型であり既に完成形でもある作品だ。
2016年05月20日
天命の剣 八州廻り浪人奉行<稲葉稔>
シリーズ第1作と言うことだが、なかなか登場人物と話しの筋が定まるまでにページ数が過ぎる。長い序奏と紹介に、短い事件と役目とが加わった構成だ。たぶん、1冊の作品 として読むことでは物足りないのだと感じる。
2016年05月26日
見えない貌<夏樹静子>
2006年に書かれた長編で後期の作品であり、ページ数は通常長編の2倍と長い。ネット時代の「出会いサイト」「メル友」をテーマに、かけ離れた人物との出会いが現実 の生活と繋がり、近くの者にも知らない世界が出来ていた状況での犯罪を描く。それを出発にして、入り組んだ事件が次第に表にでてくる。離れて生活している者には異次元 にも見える。
2016年05月26日
殺人スポットライト<森村誠一>
新宿署・牛尾刑事シリーズの連作集だが、実際の主人公は新宿にすむホームレスだ。その世界でも実生活と縁を絶った「向の世界」とそうでない世界がある。「向の世界」が主人公 だが、やむを得ずに牛尾達の世界と関係を持つ事もある。そこを描いた連作集だ。
2016年05月26日
死者の盟約 特捜7<麻見和史>
「特捜7」シリーズ第2作だ、以降が書かれるかは不明だ。本庁1課7係が捜査に関わるが、大きく同期の2名のグループに分かれ、担当も異なる。所轄の奇妙な女性刑事が連続 して主人公の刑事の相棒となる。これは事件毎の組み合わせで継続性は不明だが、そのコンビが中心になって進む。
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2016/05に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。