推理小説読書日記(2016/04)
2016年04月02日
黒潮鬼<角田喜久雄>
孤島の財宝の秘密を巡る時代伝奇小説だ。だが、その孤島への船旅や時化や沈没、そして何の船も通らない様子が描かれる。年が過ぎて漸く脱出し、何故か無事に帰る。 一方は島に陰謀で取り残された人物のその後は・・・。そんな島だが、再度目指すとあっさり到着する。普通はこの部分は詳しく描かないのだが、詳しく描いても矛盾は 消えない。伝奇小説に冒険小説が加わった構成だが、かえってあり得なくなった。
2016年04月02日
ジウ2 警視庁特殊急襲部隊「SAT」<誉田哲也>
文庫版全3冊の2冊目だが、1冊目の早い展開の警察小説が、急に停滞する半ばまでは何も進展しない。奇妙な思想と黒幕とジウらしき存在が濃くなる。不祥事でSATから異動した ヒロインの片方が巷で騒ぎ、巻の最後に元に戻る。新たな事件が起きていたのかどうなのか・・・・・、裏で判らないが、表に出たと思うと・・・。結局はこの巻では何か進展が あったのだろうか。
2016年04月02日
図書館の殺人<青崎有吾>
変な学生探偵と、その学校のメンバー、そして絡む警察らの元で、事件が起きる。場所は図書館で1つの事件が細部に渡り描かれる。論理的に1つの解に辿り着く条件の絞り こむ為だ、最近では少数派の論理のみで解決するタイプの作品だ。それでも、全てが必然かは個人で印象は異なるだろうが、一応の説明は全てにある。このタイプの作品では 必ずしも求められない、フーダニットにも拘った為に長めの内容になった。
2016年04月08日
死人妻<式貴士>
表題作は未完成作だが、それを含む短編とエッセイ・評論等を集めた未収録作品集だ。複数の名義で複数ジャンルで活躍した著者だが、式貴士の名義はSF作品に使用されている。 個人的には雑誌「奇想天外」で読んだ作者との久し振りの再開だ。。
2016年04月08日
あぶない叔父さん<麻耶雄嵩>
最近は連作作品集の形が多い著者だが、本作もそこに入るだろう。正体不明の神出鬼没の叔父さんが毎回登場する、ただ事件は解決するのかしないのか謎を解いた気はしない のだがというあやふやの状態で、次々と連作が過ぎて行く、語り手とその恋人?の女性も立ち位置がはっきりしない、丁度舞台の町に立ちこめる濃い霧の様だ。
2016年04月08日
溺死人<フィルポッツ>
欧米の黄金期の前期に活躍した作者・フィルポッツはヘキスト名義と共に、それ程に多く日本に紹介されてはいないが名前はメジャーと言えると思う。最近に復刊や新訳が が出されて、より読みたい読者も増えた様だ。本作も復刊だが、地味でゆったりした展開は独特だが退屈との見方も出来る、作品や作者のスタイルは時代と読者で受取方が 変わるのだろう、それは読まないと判らない。
2016年04月14日
スチームオペラ<芦辺拓>
SF仕立てというか、パラレルワールド設定と分類される世界・背景でのミステリだ。副題が「蒸気都市探偵談」という、蒸気をエネルギーとした都市で起きる探偵談という 体裁を持つ、そして主人公が少年少女という微妙な立ち位置だ。その手の冒険談は結構多いが、それに本格ミステリを加える試みだ。設定説明が多くなる部分が、冒険談と して見れば普通になるがどうだろうか。
2016年04月14日
前夜祭<連城三紀彦>
ミステリーでデビューした時は恋愛要素は一部と見られ、恋愛小説で有名になると転向とも見られたが、本質は単純でない。恋愛とミステリーは完全に切り離せないという作品 が多数・特に短編集にある。そのなかには双方の比重の重さで無理に分けたい人も居るが、全て楽しみたいのが個人的な感想だ。本作品集は、恋愛を中心にした男女の関係の ミステリさを描く、恋愛の比重がやや重いという事か。
2016年04月14日
アキハバラ<今野敏>
多彩な作品群、そして警察小説群の中でも碓氷刑事シリーズは独特だ。碓氷はサブかアシスタント的で、別にプロの主人公または主人公達が登場する。従って、小説のスタイル も内容も、事件もテーマも多様だ。警察捜査以外のプロが捜査を行うと言うシリーズだ。本作は全てが異色だ、主人公が多数いるし複数の事件が起こり併行に進む、登場人物も 解決も異色だ。読みまで内容が予想できないシリーズだ。
2016年04月20日
ミステリクロノ2<久住四季>
時間を移動させる装置を落とし人間にされ探させられる落ちこぼれ天使は、学校に転校するが全くの落ちこぼれだ。その学校で不思議な事件が起きる。記憶喪失した生徒が 出た事だが、期間が限定で抜きている、それは落とした装置を使われた結果起きる事だ。犯人が装置を持っている筈と探し始めるが、その形を聞いて驚く・・・・。
2016年04月20日
棟居刑事の使命の条件<森村誠一>
ある人物の大きな機会に衣服に発色剤を仕掛けられる事件が連続して起きて、棟居ら警察が捜査を始める。一方で会社が暴力団に狙われて、防衛チームを作り対抗しようとする 所があった、そこでは経営の乗っ取りが画策されているようだった。その会社にも発色剤事件の被害者がいて、棟居らは関わって行く。
2016年04月20日
77便に何が起きたか<夏樹静子>
交通機関で起きた事件の短編を集めて組まれた短編集だ。他の作品集との重なりも起きるが、結果的に代表作となった作品集だ。当時は珍しい航空機事故や多様な交通機関 での事件を主として。本格ミステリの手法で描く、全体のレベルが高く、他のアンソロジーへの掲載も多い。是非読んでおきたい作品集だ。
2016年04月26日
怪獣男爵<横溝正史>
ジュニア向けに書かれた長編怪奇探偵小説でサスペンスと怪奇とが混ざった構成だ。江戸川乱歩の作品が有名だが、横溝正史も多数書いている、舞台はお馴染みの瀬戸内海の島で トリッキーさも一部にある。戦後の他の多くの作品と同様に、細部の表現等で現在ではクレームが付きそうな部分もあるが、SFとパラレルワールドとかファンタジーが一般化 する前では、怪奇とサスペンスはこのジャンルでは大きな要素だった。
2016年04月26日
忍びの女(上)(下)<池波正太郎>
豊富な歴史知識と、それに加える裏の世界を描く手法とで多くの読者を獲得した作者だ。捕物帖要素の強い鬼平シリーズや剣客商売シリーズと、盗賊や刺客の世界や忍びの世界を 描くシリーズ等が全て有名だが、本作は福島正則の清洲城主時代から関ヶ原を経て、安芸藩主を経て大阪の陣から藩の取りつぶしを描く歴史小説に徳川の女忍びとその仲間から の視点を主にして描く、表と裏が重なる時代小説だ。
2016年04月26日
変化如来<角田喜久雄>
伝奇時代小説だ。仇を探す火薬師兄弟と、奉行と小町と呼ばれる娘岡っ引きや謎の人物が、暗号・仏像らに隠された謎を追う。謎の設定とそれに絡む複数の争奪戦がストーリー として多い作者で、本作もその1つに入るだろう。登場人物と謎に、読者がどれだけ惹かれるかだ。
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2016/04に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。