推理小説読書日記(2016/01)
2016年01月03日
密室蒐集家<大山誠一郎>
多彩な犯人設定が登場し、探偵役が犯人も珍しくない、同時に探偵役の職業等も色々な出て、興味を引く物は減った。しかし「神の様な名探偵」への憧れはある。ならば 「神が探偵をやろう」とは誰しも考える。この場合の神は宗教や呼び名でなく、理想の能力を指し性格を持たない謎の解決だけの存在が登場する、本作品集は「密室蒐集家」 という密室専門の謎を解く存在だ。
2016年01月03日
砧最後の事件<山沢晴雄>
私小説風の小説と見る事も出来るが、この作者の発表済み小説と小説中小説とで組み立てられた階層小説とも言える。登場人物表に、「砧順之介」はないし、全体からその 名前を探すのも結構難しい。小説中小説には異なる探偵役が登場しそれは閉じている。さてそれも含めて、登場人物のモデルは誰でしょうかとなる。そう本作の登場人物の 中に、モデル存在する「砧」を含めて、それは誰?。
2016年01月03日
異次元の館の殺人<芦辺拓>
シュレディンガーの猫の光景から始まる話しは既に危うさがある。パラレルワールドとの解釈が楽なのだろうが、量子論の観測による干渉で対象が変化すると考える事も 出来る。解いても解いても、少しずつ世界や人物が変わり謎が否定される、それが繰り返すと果たしてどこに辿り付くのだろうか。
2016年01月09日
黒翼鳥 NCIS特別捜査官<月原渉>
NCIS=米海軍犯罪捜査局なので、現在が舞台の軍事小説に思えるが、実質は軍隊というやや異質な舞台での本格ミステリだ。試験飛行中のオスプレイという密室状況で 発生した事件の真相は何か。不可能状況で事件性が証明出来ない時に、現れる女性捜査官が最後に関係者を集めて謎解きを行う。その構成は名探偵が不可能犯罪を解明 する構成に他ならない。
2016年01月09日
曲がり角の死体<ロラック>
曲がり角の交通事故で見つかった死体が一酸化炭素中毒死だったが、果たしてその真相は?。田舎町に呼ばれたスコットランドヤードのマクドナルド警部が地味に証拠 を集めて行く。古いイギリスの田舎の状況は想像でしか判らないが、顔見知りだらけで噂が飛び交うが表面化もさせない空間の様だ、捜査が進むと次第に色々な事が 浮かびあがる。
2016年01月09日
恋慕奉行(下)<角田喜久雄>
奉行・大岡忠相と同心・水木半九郎は、その関係する女性が攫われ危機に陥る。そこに不思議な寺と住職?とが現れ、それの正体は不明で謎だらけだ。後半になっても 謎の人物が増えるが、その人物の関わりは微妙で、敵の狙いも見えて来るが・・・・。伝奇時代小説の要素を集めた展開が盛り上がり、収束に向かう。
2016年01月15日
卑弥呼の密室<獅子宮敏彦>
ライターが邪馬台国の新説を発表し、祖父の研究仲間の子孫から戦中に卑弥呼の墓を守り、伝説を聞いた。ライターが山村で事件に出会う。その為に、その事件の謎と伝説の 卑弥呼に起きた事件を解き明かす事になる。歴史推理ではなく、歴史の中に謎を構築した話しだ。
2016年01月15日
赤ひげ診療譚<山本周五郎>
幕府の地位の高い医師を目指す主人公は、長崎から江戸に帰ると、設備も費用も貧しい小石川療養所の赤ひげに見習い勤務を命じられた。そこで市井の色々な人や暮らしと 赤ひげの医療を見る事になった。最初は不満だったが、次第に意味が判り1年後に、見習いが終わってもそこでの勤務を続けると決めた。
2016年01月15日
さいごの毛布<近藤史恵>
人と上手に交われない孤独な主人公が、老犬ホームに就職した。何か意味ありげな所長と一見はやり手に見える先輩と働く、相手は有料で預けられた犬たちで、買い主の事情で預けられた 事を身勝手と思うが、捨てられるよりも幸運と考えが変わる。出入りの人や所長や先輩にもいるいると複雑な事情が判って来る。孤独とか幸運とかは、表面では判らない事を 理解して少しずつ変わる。
2016年01月21日
アリバイのない女<夏樹静子>
1977年初出の作者のエッセイ集だ。「天使が消えて行く」で再デビュー後に書いたエッセイや自作解説をまとめたエッセイ集だ。内容的には、学生時代に江戸川乱歩賞に応募 してから、シナリオを書いた時期や女性作家の会「霧の会」に参加したころ、そして結婚生活から、再度江戸川乱歩賞に応募した頃、そして落選したが出版されて、「蒸発」で 日本推理作家協会賞を受賞した頃が書かれている。
2016年01月21日
トリックスターズC part1<久住四季>
トリックスターズの最終巻のCは、2分冊でそのpart1だ。大学の学園祭に送られた「大事なものを盗む」挑戦状を推理小説研究会が実行委員会に代わって受けたが、魔学部の レギュラーメンバーが否応なしに巻き込まれて行く。魔術師から魔術師への挑戦状か、あるいは違う狙いなのか、前半は最初の遭遇までだ
2016年01月21日
二重標的<今野敏>
多彩なシリーズやキャラクターが登場するが、量的や知名度で上位なのが安曇警部補シリーズだ。その最初は、「東京ベイエリア分署」を舞台にし、人物的にはテレビドラマ「ハンチョウ」 の「神南署」と女性刑事がまだいない事が異なる。仮住まいというべき分署で人数は少なく、所轄の他に東京湾沿い全体に関わる、従って忙しいが他の所轄の手伝い仕事が多く やり繰りに追われる。その悪条件で、少数の分署が活躍する。長いシリーズの最初だ。
2016年01月27日
あらしの白ばと・赤いカーネーションの巻<西條八十>
少年向け小説として書かれた江戸川乱歩や横溝正史や高木彬光や山田風太郎等多数の作品があり、いくつは今も出版されているが、多くは入手困難となっている。ただ現在の冒険小説 やSF小説やアニメや仮面ライダー等のドラマ等から見て広い愛好者がいる。それ以上に入手困難な為に知られていない少女向けの書かれた作品がかなりあるらしく、 幸運にも読む機会があると嵌まる読者も多そうだ。西條八十作の少女向け小説は知らなかったので驚くと同時に、まるで今の時代の少年少女向けドラマの原案的な内容にも驚く。
2016年01月27日
空蝉処女<横溝正史>
昭和58年発行の本書の表題作は、作者の死後に未発表で見つかったと言う。どの作家にも未発表の作品が見つかるのは普通に受け止めるべきだろう。それをきっかけに組まれた 短編集だから急遽作品を集めた事情も判る。戦時中のやむを得ず書いた防諜物もある。横溝作品がその後も未収録作品として発掘・出版されていったが、当時はまだ知られて いなかった事情が思われる。
2016年01月27日
風花島殺人事件<下村明>
入手困難なマニアックな本を集めた「ミステリ珍本全集」はシリーズ名とは別にあまりにも広義のミステリが集まる。稀覯本に名作なしは本当かどうかへの挑戦とも言える シリーズだが、広く読まれるというより一部のマニア向けの作品が多い。そして本作(「風花島殺人事件」「木乃伊の仮面」「殺戮者」三作採録)は、意外な事にまともな 普通のミステリだ、前2作は本格ミステリだ。まとも過ぎて、他の作品に埋もれた感がある。何故に稀覯本になったかの事情は本書に紹介されている。
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2016/01に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。