推理小説読書日記(2015/12)
2015年12月04日
その時の教室<谷原秋桜子>
連作短編集と長編と、その2つが併行するという姿が外観的にある。個々には、先生側からみた生徒達の行動の謎のスタイルを取る。ただし先生が新米で中途半端な 位置にあるという設定も絡む様だ。その面では学園ミステリとも言えるが、新米と言えども教師側から見るので舞台が学校だけとも言える。そして併行して長編的な流れ が走るそこは別の世界の様だ。
2015年12月04日
名もなき花の<吉永南央>
副題が「紅雲町珈琲屋こよみ」で、連作短編集のシリーズ3作目となり、9月・11月・1月・3月・5月・7月を描く。地方の旅情だけでなく、都会と異なる事情を 描く事で、内容が立体的な奥行きが生まれて来る。ジャンル分けが難しいが、かなり自由さを感じる内容だ、意外な程に経営的な内容も含む。
2015年12月04日
虚ろな十字架<東野圭吾>
学生時代の2人の男女の出会いとその先が描かれるが曖昧と言うか意味は判らない様な状態だ、一方で子を無くした夫婦が別れそれぞれの道を歩む。そして夫は退職しペット の葬儀屋を開くが、飛び込んで来たのは元妻の死だ。それに疑問を持ち調べ始めると元妻のライターとしての取材と姿が徐々に浮かびあがる、謎を追うと・・・・。
2015年12月10日
そげもの芸者 奥方様は仕事人<六道慧>
警察小説もある作者だが、時代物が主体だ。ただ、適当に読むと酷い目に遇う典型となった。長編となっているし、シリーズ第3弾となっているが、単独で読むべきでない ものだとは知らなかった。背景がぼやけているがシリーズでの省略が強すぎるのだろう、最初から読むべきだった。長編でありながら完結性が弱い、シリーズではなく その3だった。仕事人に誘われた感があるが、設定に類似性があるがそれがどうかは、長編だがこの1冊だけでは不明だ。かなり不親切に感じた。
2015年12月10日
小さな異邦人<連城三紀彦>
作者の没後出版の、純粋の短編集だ。相互に繋がりはないが、短編としてのレベルは高い。発表は2000−2009年で単行本化されて居なかったのが不思議だ。 長編や連作短編集中心の現在では、このような事はしばしば起きる。ならば言いたい、おーい、まだ残って居ないか、もっともっと読みたい。もはや、その作品群は 伝説的な重みが有る
2015年12月10日
クマリの祝福 セメクト2<太田忠司>
多彩なジャンルを書きわける作者の警察小説だ。前作「セクメト」が学園物とSFまたは幻想物的な混合だったので、続編が書かれると思っていなかった。不思議さを持ちこし ながら刑事が道案内役をして行くが、謎めいた少女の存在感は話しが進む程に大きくなる。思い返せば前作と同じパターンで、だから続編なのだが、絶えず不審感を持って 読まされる。
2015年12月16日
恋慕奉行(上)<角田喜久雄>
吉宗時代に大岡忠相とともに、同心・水木半九郎が活躍する伝奇時代小説だ。まだ前半なので、次々に怪しい集団と人物が登場する。どれが幹となるかさえ不明だ。 そもそも、大岡・水木共に何故に深く関わるのかもまだ明らかでない。
2015年12月16日
あなたは誰?<マクロイ>
マクロイの前期の作品だ、本格>サスペンス>SF的というおおまかな流れからは、本格の位置だ。ただ精神科医の探偵は常連としても、ポルターガイストやら、伝家の宝刀の 登場となると、読者によっては見方が変わるかもしれない。
2015年12月16日
トリックスターズM<久住四季>
魔術と魔学を背景にした舞台での本格ミステリーだが、ただ設定の差が作者・読者共にこなせるかどうかだ。「予知」と「予知夢」の絡みで話しが進む。能力は保有する者が 理解しないと有用にならない。さて殺人の予知?予知夢を見たなら、防げるかがテーマだ。それには予知とはなにかが問題となる。
2015年12月22日
振袖剣光録<高木彬光>
伝奇時代小説の短編集です。大岡越前と日本左右衞門が登場する作品や、神尾左近が登場する作品も含まれるが、7作全てが個別作品だ。ほとんどが長編と同じように江戸時代 だが、1作だけが平将門の時代で珍しい。怨念が漂う話しに会う人物と時代背景だ。神尾右近が登場する作品があるが、背景やキャラ的に神尾左近とは無関係だろう。
2015年12月22日
血蝙蝠<横溝正史>
昭和13-16年の短編集で、当時は単行本未収録作品だ。「鬼火」「真珠郎」の頃でSFを含む多彩な作品だが、作者の迷いもあるだろう。由利+三津木シリーズも2作あるが、 この登場作はまとめられない宿命の様だ。
2015年12月22日
ペトロ<今野敏>
多彩なシリーズやキャラクターを書き続ける作者の中でも、特異なシリーズがこの「警視庁捜査1課・碓井シリーズ」だ。碓井がレギュラーだが案内役で、コンビを組むまたは 事件解決に関わるゲストが主役となる。毎回異なるキャラはそれ自体でもシリーズになりそうな魅力があるし、他のシリーズからのゲスト出演もある。本作のテーマは古代文字 「ペトログラフ」で研究者・アルトマン教授が活躍する。題名は微妙と思うのは私だけだろうか。
2015年12月28日
傷なんか消せるさ<飛鳥高>
中編1作・短編5作・掌編4作の作品集だ。昭和30年代後半から40年代前半の作品で、掲載雑誌が非専門誌でマニアでも未読が多い筈だ。内容は色々でミステリー濃度も 多様だ。この作者の短編は雑誌か、2冊の作品集以外は読める機会が少ないので、貴重だろう。
2015年12月28日
モラルの罠<夏樹静子>
中編1作と短編4作の作品集で、2000年代初期の作品だ。テーマは10年以上後の現在では犯罪として実際に起きているジャンルやシステムなのだが、当時はまだ直ぐに 犯罪に結び付かなかったと思う。日常に拡がりつつあるものは何時の時代にもあるが、どれも使い方で恐ろしい犯罪に利用される危険性がある。その見方で書かれている。
2015年12月28日
軍艦泥棒<高橋泰邦>
数少ない海洋小説特にミステリ関係の作者だ。本格味の強い作品が有名だが、本作の少年向きの冒険小説や後期の冒険戦記3部作などのジャンルも書く、幅広い作者だ。 船舶や海洋に詳しいリーダー役と、個性の違う仲間がアメリカのフリゲート艦を盗みタヒチを目指すが、当然ながら取り返しに追われる冒険小説だ。遊び気分の子供と、 プロがフリゲート艦を破壊せずに取り返すのに苦労するのがユーモアに描かれる。
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2015/12に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。