推理小説読書日記(2015/11)
2015年11月04日
隠密愛染帖<高木彬光>
伝奇小説だが珍しい短編連作集だ。主人公は怪盗・日本左衛門で、徳川吉宗と尾張宗春の対立時代に尾張型の隠密として活躍した設定となる。相手は徳川方の人物で、大岡 越前とか、幕府方の隠密支配者と一軍が登場する。その配下とか繋がりの人物がぞくぞく登場し、波乱の闘いを行うが意外と人情的に終わる事もある。
2015年11月04日
処刑までの十章<連城三紀彦>
ミステリの達人で恋愛小説の達人でもあった作者の夭折は多くが悔やんだが、雑誌連載のままで単行本化されていなかった作品も複数ある。作者は改稿を考えていたのかも しれないが、無理なので遺作として単行本化して貰いたい。本作も死後出版だが連載は終わっていた、未出版の事情は不明だ。奇妙な大作だ、失踪した兄を弟と、妻が追う 形だが、そもそも何があったのかが不明で、そこに遠い地で死体が見つかり、関係者らしき人物も浮かぶが正体不明のままで、あちこちでバラバラ死体のパーツらしき物が 見つかる。何が妄想か、推理間違いかが不明なままで進む・・。
2015年11月04日
泡坂妻夫 からくりを愛した男<泡坂妻夫>
ムック本の著者は多数だが、創作も入っているので著者名とする。紋章上絵師でありマジシャンであり、ミステリ・時代物・人情物の作者を多くの人が語る。マイベストが 分散するのは、幾人かの作者に見られる現象だ。
2015年11月10日
さよなら神様<麻耶雄嵩>
連作長編で学園が舞台だが、自称神様がいて他は無視するが語り手はつい聞いてしまう「事件の犯人は誰」そして神様が答えてから各章が始まる。章は別の事件で本格ミステリ だが最初に犯人の名を聞いた語り手は・・・そして神様の言葉は当たるのか。その展開が進んで行き、最後はどの様に進むのだろうか。
2015年11月10日
私の命はあなたの命より軽い<近藤史恵>
題名の意味は微妙だ、わたしとあなたとは誰か?。大阪から結婚で東京に行き暮らす主人公が出産を控え夫が海外出張になり、実家出産を考え連絡した所から意外な事が始まる。 すぐに返事がなく、帰っても家が引越し少し前の家庭と雰囲気が全く違い判らない事が続く、一体何が僅かの間に有ったのか。そして出産間際に騒動が起きる。
2015年11月10日
まぼろし若衆<角田喜久雄>
伝奇時代小説、幕末で後に将棋棋聖と呼ばれた天野富治郎(宗歩)が将棋の駒の奪い合いに絡み、それがもっと大きな財宝の奪い合いに発展し、それに巻き込まれる。 次々に権力者が登場するが、巨大な力に麻薬に犯されて行く、巻き込まれる者と巻き込む者と割り込む者が入り乱れてての闘いがくり広げられる。特に力のない主人公が 不思議と生き残る実在だから殺せないのだろうが。
2015年11月16日
夢幻花<東野圭吾>
現在は多彩な作品分野を書き分けている作者で、少数読んだ人から複数作家説が出たりする、ただより多くの作品を読む程にと多彩な内容だと理解出来る。もしデビュー当時 からの愛好者ならばその当時の作風に近いと感じるかもしれない。刑事と素人との捜査・・・異なる事だが、が併行して進む内に接点が出て来て奇妙に繋がって行く。登場人物 よりも読者の方が情報量が多い状態だ。勿論細部は最新の話しだ。
2015年11月16日
振袖夜叉<高木彬光>
伝奇時代小説だ。ただ珍しく舞台が長崎になっている。江戸時代の長崎は外国との唯一の出口であり、利権が絡む事が多く抜け荷や伴天連等の材料が豊富だ。その舞台では からくり屋敷とか江戸初期の財宝だとかのアイテムも利用しやすい。ただし、複数の立場が争うというパターンは継続される。
2015年11月16日
はるひのの、はる<加納朋子>
「ささらさや」「てるてるあした」に続く、作者曰く「佐々良シリーズ」の3作目で完結編という。そして、一番に奇妙な内容になっている、外見は短編集だがこの作者なら きっと連作短編だろうと見込むが、これは純長編として読むと理解出来るだろう。もともと最初は、幽霊探偵談だった事を思いさせば再度と思うが、それでは話しが合わない、 その先は・・・・。
2015年11月22日
トリックスターズD<久住四季>
トリックスターズ=魔術師シリーズ第3作だが、作者が本当に少年少女向けの叢書に書いているのか疑わしい展開になる。そもそも作者は、どの本からでも読める独立した 内容だとしているが、疑わしい。シリーズ順に読むのが正しい。本作は、新たな登場人物が前の2冊の小説を書き登場人物名が実在する事から始まる。そして建物全体が何かに 覆われれて閉じ込められる設定は、何なのだろう。
2015年11月22日
七つの仮面<横溝正史>
昭和50年ごろに角川文庫から全集的に文庫化された横溝作品は、未完があるし抜けもあるし人形佐七は選集だが、それでも80冊に近くファンには必読だ。平成になり20冊の 「金田一耕助ファイル」になったが長編の中に何故か本短編集が紛れこんでいる。金田一物の短編が少ない事と、短めの長編に添付した為に散逸し再編集が面倒だったという 事情が思い浮かぶ。今週は傑作集で無いが、作者の好みのテーマが溢れてはいる。
2015年11月22日
エチュード<今野敏>
シリーズやキャラクターの多いこの作者の中でも、特異な碓井弘一刑事シリーズの1作でこのシリーズは碓井はアシスタントかワトソンか案内役で、ゲストが作品テーマに 合った事件を解決する。しかも他のシリーズのキャラクターも登場するから、なかなかに紹介しにくい。本作は心理学に優れた犯罪者の心理操作がテーマだが、それに対抗する 警察庁刑事課心理捜査官・藤森紗英が心理戦をくり広げる。若くて美人の研究者で現場に不慣れで碓井とコンビを組む。
2015年11月28日
逃げて行く死体<飛鳥高>
高齢で新作は見ないし商業出版は遠ざかっているが、同人出版では時々出されている。古書も平均的に高価だから、同人出版も見逃せない。独自編集の個別作品集だから多彩だが 、長編で見られるサスペンス・犯罪小説の傾向が強い作品が主体の昭和30年代後半の作品だ。
2015年11月28日
最後の藁<夏樹静子>
中編1作と短編2作の作品集で、ノンレギュラーものの本格推理物だが、警察捜査と素人の捜査?とが絡む、犯罪も計画性と偶然性とが絡み個々で違った世界を作る。 それぞれの作品がより長くしても成立する程に密度が高いのは、いつもながらの特徴だ。。
2015年11月28日
天鬼越<北森鴻>
蓮丈那智フィールドファイル5となっているが、故人の作者の2作とメモを元にした1作と他の作者の3作からなる。題名からどれが北森作品かは2/3位は予想はつく。 テーマに入ると雰囲気とともに差が感じる部分は多い、ただこのシリーズ内ではやや抑え気味の遺作と感じる。むしろ作中で那智が学生に出した「銭形平次は何故神田 明神下に住むか伝承民俗学手法で答えよ」が面白い。
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2015/11に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。