推理小説読書日記(2015/10)
2015年10月05日
藤雪夫探偵小説選2<藤雪夫>
第2集だが、2つ驚いた事がある。一つはSF小説が複数有ることで、もごきではなく直球だ。時代的には、海野と蘭と30年代の作者の間に当たる。忘れられていた存在だ。 2つ目は、昭和30年の13番目の椅子応募で2位で後に藤桂子・藤雪夫合作で発表された「獅子座」の原型が、専門誌以外で発表されていて今回掲載された事だ。量的に 応募長編そのままとは思えないがその「星の燃える海」は業界誌発表で知らなかった。
2015年10月05日
鵺の家<廣嶋玲子>
ジュニア冒険大賞受賞という経歴はどの様な内容を予想されるか、その興味が初読者には多いと思う。書き出しは幻想系かと思ったが、ホラー系と言えると思った。そもそも 題名の鵺という鳥のイメージはホラー繋がりなので、読む方の誤解だった。時代をまたぎ伝えられる呪縛に巻き込まれた主人公を中心に描かれる。
2015年10月05日
貴族探偵対女探偵<麻耶雄高>
連作作品集または長編だが、貴族探偵とそこに使える者たちの連作集の続編のスタイルを取る。語り手役は新米の伝統を受け継ぐと自負する女探偵だ。その事件先で貴族探偵 とそれに使える者とあう。その結果は前作と同じ展開だ、しかし双方の関わりは度々続いた。
2015年10月11日
悪霊島(下)<横溝正史>
長い下津井事件と調査員の事件と背景描写の上巻を経て、金田一が上陸した島での事件が始まる。そしてそれは短い時間に始まり終わる。作品全体としては、あまりにも流れが 急激に変わり、読者も一気に引き込まれる。だが終末は多くの代表作とは異なり、関係者を集めて解明ではなく、流れ解明のスタイルを取る。
2015年10月11日
敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿<深木章子>
「藪の中」のスタイルを取りながら、話しが進み、弁護士睦木怜にそれらが集まる事で結末する。すなわち、報道された結末とは異なる真相の形を取る。犯人も被害者も不明 =意見が対立する事件では、そこにばかり目がゆくが、それらを決める検証の内容に抜けまたは間違いがあるとひっくり変える、そんな状況で話しが進む。
2015年10月11日
ルーズヴェルト・ゲーム<池井戸潤>
企業経営と企業間競争がテーマだ、当事者と相手との力関係でいくつかパターンが出来る。複数の分野を持つ企業が参入した新分野での、技術的な先進企業の話しだ。技術的には 先行しても、商品となるのはタイムラグがある、それを経営・営業等はカバー出来るのか。そこに伝統の野球部の復活と廃部問題が絡む、野球は8対7が面白いと言ったという ルーズヴェルトの言葉が由来だ。
2015年10月17日
盗っ人奉行(下)<角田喜久雄>
大体の人物構成が判り後半に入る、主人公は南町同心・水木半九郎らしい。そして、大岡越前の一族の若者・大岡忠光の不審な動きとそれの使える西丸の家重の奇妙な行動が 明らかになりその具体的内容を探る探索が始まる。そしてそれが明らかになって行くと、前半の連続殺人との繋がりが見えて来る、事件は拡がるばかりだ。
2015年10月17日
無菌病棟より愛をこめて<加納朋子>
小説ではなく、ノンフィクションか日記かエッセイだ。突然の発病から即時入院、白血病の長期治療からの復帰を描く。一応の回復状態で終わる。類似患者の集まる病棟は 別世界の様で、基準が異なるようだ。病棟で一番元気な人になり退院すると、一般社会では何も出来ない病人になる。骨髄移植ドナーの日記の併載が効果的だ。
2015年10月17日
警視庁死番係 裁かれざる殺人<霧崎遼樹>
ライトノベルの作者がミステリを経由して、警察小説に挑む。ただ、形式を除くと目指す所はまだ曖昧だ、事件と謎は大きく、解決は細かく自供の比重が大きい。 多くの面で読者の予想を裏切るが、整理されているのかどうか不安な収束になる。
2015年10月23日
ご近所美術館<森福都>
ある町の小さな美術館では、ラウンジがあり月の通し券があり、利用者のたまり場的な所となっている。そこに活発な妹と、世間知らず??の姉がいる。美人の姉目当ての客も いそうだが、ちょっと訳あり。そこに主人公の青年が出入りし、幾つかの謎に会う、ただ何が小説の中心なのかは読者次第というスタンスに見える
2015年10月23日
秘められた心中<夏樹静子>
6作からなる、独立した短編集だ。警察捜査も登場はするが基本は巻き込まれ型の素人が謎を調べる。事件は多彩で、背景や舞台も多彩だ。本格推理のスタイルを、素人の 探偵役が追うスタイルが多い。したがって、サスペンス色や人間模様等のテーマも自然に組み込まれて居る。
2015年10月23日
クローズアップ<今野敏>
テレビ報道番組付きの社会部記者・布施京一シリーズ3作目の長編だ。だれとも知りあい、通じる奇妙な記者は、何故か事件現場に遭遇しスクープ映像を得る。視点は多様だが その先に布施がいる。そして事件が収束する所にも布施がいる。事件を呼ぶのか呼ばれるのか奇妙な展開で進む。
2015年10月29日
トリックスターズL<久住四季>
トリックスターズ・シリーズの第2作で、独立だが順番に読む事を勧める。魔術師が世界で少数だけ認められ登録されている。そして日本で唯一の魔学部がある学校が舞台で、 主人公は魔術師認定団体から呼ばれた魔術師だ。ただ、何でも出来る訳でないし、本人が魔術と詐欺は紙一重という状態だ。だから学問で学ぶのだが、事件が起きるのは偶然か または珍しい魔術師・魔学部だからかは最後に判る。題名からは何作目か判らないのが難か?。
2015年10月29日
伏木商店街の不思議<太田忠司>
ある町のある商店街の個々の家等を舞台にした、ショートショート集だ。内容は多岐なのはショートショートの特徴であり、楽しみだ。次々登場する出来事の仕掛けや結末を じっくりではなく、あっさり楽しむ構成だ。どの程度楽しむかは、読者次第だが、なかなかパターンを予測させない連作となっている。
2015年10月29日
パラダイス・ロスト<柳広司>
スパイ養成機関「D機関」とその出身者が絡む、スパイの騙しあいを描く。コンゲームというよりも仕掛けが大きい。戦争・国家がキーワードとなると優先順位が変わる。 従って、価値観や費用対効果や多様な事が、まさかの規模で行われる。
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2015/10に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。