推理小説読書日記(2015/03)
2015年03月03日
誘蛾燈<横溝正史>
昭和10年頃に編集者を辞めて作家専業になったが、病気で療養生活になった頃の短編集だ。執筆量は増えたが環境の変化で内容が多彩というか、不安定と言うか 微妙に変わる時期とされる。たしかに読まないと、傾向も判らない作品が多い時期だ。病気療養生活と結びつけた解説も多い時期だが、そのような作品も多い。
2015年03月03日
お先へごめん<島久平>
短い時代小説の作品集だ。伝奇小説傾向でだが、捕物帳的なものは少なく、オチのある話しやホラー気味の話しなど多彩というか適当とも言えるものも含まれる。 短い新聞短期連載等に対応した作品群で、関西弁があふれる作品群だ。
2015年03月03日
何が困るかって<坂木司>
19作からなら、掌編小説集だ。設定とアイデアで決まる長さのシリーズで、悩む・困る状況が設定でそれどうなるかが結末だ。作品を書く方も、内容自体も 同じ設定なのは、面白い。もともと、この長さはこの傾向の作品に会っているのかと感じさせる。
2015年03月09日
宝石S34.7<>
連載長編「刺のある樹」仁木悦子、「誘拐」高木彬光が揃って最終回だ。或る作家の周辺第2回は星新一。短編は、土屋隆夫・蒼社廉三・川辺豊三・樹下太郎・ 渡辺啓助だ。あとは、翻訳とエッセイと書評が多数。
2015年03月09日
聴き屋の芸術学部祭<市井豊>
芸術学部2年の聴き屋体質の柏木が主人公の、複数の要素が混ざったユーモア的な連作ミステリー連作です。決まったスタイルがないのがスタイルの連作は、最近では 少数派で、ジャンルも横切る。作品が増えた時に真価がわかるだろう。
2015年03月09日
予期せぬ来訪者<木村二郎>
ニューヨークの私立探偵が主人公の連作だ。翻訳で知られる作者が、アメリカミステリのハードボイルドスタイルで書く。アメリカ作品の翻訳を読む雰囲気を出す。 私立探偵という職業と免許があるアメリカならではの、雰囲気がただよう。
2015年03月15日
北町一郎探偵小説選2<北町一郎>
題名が探偵小説選だから、そうなのだろう。作品名も登場人物もそれらしいが、内容的には違和感は多い。樽見樽平の東京探偵局とサンキュウ氏の登場する作品群を 中心に集めている。時代の制約もあっただろうが今の目では、探偵小説に見えないものが多い。資料によると、むしろそれが当時は新しいと見られていたらしい。 どれも埋もれた感のある作品だが、探偵小説という切り口ではやむをえないのだろう。
2015年03月15日
ホテル・ピーベリー<近藤史恵>
ハワイ島の外れにある長期宿泊ホテルが舞台だ。日本人夫妻が経営するらしいが、もっぱら女性が応対する。この設定・背景で、何かを感じても不思議でないが作者の 話しの展開は、それ以上の早く展開させ一気に読ませる。それに相応しい世界なのだが、ミステリーだという事も忘れさせるかどうかだ。
2015年03月15日
月光蝶<月原渉>
副題が「NCIS特別捜査官」となる。米軍基地のある町は、その中と外と2つの社会がある。犯罪捜査も同様だし、本来は完全に自由に往来は出来ない。そこを舞台にすると それぞれが他方から見ると、密室状態に見える。捜査も一応は別々だ、協力しても情報はどうだろうか。大きなミステリー的な舞台で進む話しは、はたして大きく着地 できるのかが問題となる。
2015年03月21日
浮遊封館<門前典之>
大量殺人の説得性が希薄なのが、どうしようもなく全体を面白なくしている。その必然性も同様だから困る。せめてほら話しでも説得性が欲しい。複数のトリックがあるが 異本の1つから派生するので、1つとも言える。殺人がかならずしも謎になっていないのも奇妙だ。
2015年03月21日
妖魔の横笛<鷲尾三郎>
副題が「少年少女怪奇探偵小説集」で、3編からなる作品集だ。元々が対象年齢不詳のトリックや設定の作品を書く作者なので、低年齢層向きでも同様と言うべきだ。 逆に作者らしい内容と言える。通常作品も、一部は低年齢層向きと言えなくもない作者だ。
2015年03月21日
棟居刑事の復讐<森村誠一>
数多い登場刑事でも代表的な、棟居刑事と牛尾刑事が双方登場し、意見を交換して取り組む。所轄が違うから複数の事件が、捜査中に繋がる事になり展開する。 時間をかけて、ひたすら接点と手掛かりを追う手法は刑事小説の原点とも言える。ただ、それぞれの刑事の動機というか、捜査姿勢も描かれる事がこの作者の 特徴であって、長い期間を書き続けて微妙に変わる事も同様だろう。
2015年03月27日
オレたち花のバブル組<池井戸潤>
テレビドラマで人気になった「半沢直樹」シリーズの1作だ。バブル組の銀行の中間管理職の主人公が失敗を部下の性にする上司や、派閥グループを相手に戦う。 相手は最初は見えないし支店内や部署内だけでない。それを手を尽くし、同期の情報も得て、真相と対策を見つけ対処して行く。豊富な金融関係の知識がちらばる。
2015年03月27日
処断<今野敏>
潜入捜査シリーズの3作目。密漁を行う暴力団組織を、佐伯らが対決し潰す。暴力団が行う事業?は多岐に渡る、警察も掴み切れないか見逃す。そこを、佐伯らの グループ・・・実質の現場は佐伯ひとりに近いが・・・壊して行く。そこに、蘇我氏の時代から続く一族が絡む事で、奇妙な技を使う佐伯の存在を現実に近づける。
2015年03月27日
消えた蜜月<三好徹>
蜜月とはかってはよく使われた言葉だが、今は一気に死後になった、ハネムーンというのだろうか。ハネムーンで新郎が消えて死体で発見される。新婦とその幼馴染みの 記者が謎を追う、いわゆる事件記者ものに属する。2人が探すのも多いパターンだ、背景に寄って内容は異なるが、その時の話題を取り入れる事は共通だ、ただし 社会性には拘らない分野だ。
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2015/03に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。