推理小説読書日記(2015/02)
2015年02月01日
北町一郎探偵小説選1<北町一郎>
昭和の初めに戦前唯一とも言える長編探偵小説公募が有った。1位は蒼井雄「船富家の惨劇」で、2位が2作で多々羅四郎「臨海荘事件」と北町一郎「白日夢」だった。 「船富家の惨劇」は度々復刊される現役作で、「臨海荘事件」は1度だけ雑誌に転載されて、「白日夢」は初めての復刊となった。復刊されなかった理由は読むとほぼ 推測出来る。果たして探偵小説かどうか・・・。
2015年02月01日
死の谷を越えて<橘外男>
少女向け雑誌に連載された作品の復刊で、雑誌自体が非常にレアだ。1年以上の連載だが、1冊でも状態次第では4桁の価格のレア雑誌。秘境小説とも冒険小説とも スパイ小説ともSF小説とも言える奇妙な作品で、読んだ子供は驚いたのではないかと思う。
2015年02月01日
うどん キツネつきの<高山羽根子>
SF小説なっているが、これまた微妙だ。普通小説ではないが、一部を除けばそれに近い。その一部がどれだけ、変わっているかは読者で変わる。素直に読めるか 奇妙に感じるか、ただ短編集の個々の作品でもそれは変わる。1ごとの楽しむ。
2015年02月07日
暗闇の殺意<中町信>
短編7作からなる短編集で、シリーズではなく個別の短編です。ジャンルは本格ミステリでこの作者の長編の移り変わりを反映していると言えます。本格物は、長編とか 短編集はシリーズキャラクターでと思っている人に読んでもらいたいですが、流石に人物の細部の書き込みまでは量は足りない。
2015年02月07日
ナミア雑貨店の奇蹟<東野圭吾>
SF的な設定とタイムマシンパラドックスを無視したら、どのような面白い作品が可能か的な作品です。連作的に見せて実は連動している構成は意表を突く。 奇蹟とはっきり言われると、パラドックスは無視になるのでしょう。意外と混乱はしない。
2015年02月07日
女神の骨格<麻見和史>
警視庁捜査1課11係シリーズで5作目です。本格ミステリの警察小説という作品で、主にミッシングリンクが主体です。本作はその変化球で、捜査よりも一歩早く次の 殺人が起きるという連続殺人です。同じ様で実は全く異なる展開と時間スケールになる。捜査が時間との競争になります。
2015年02月13日
時の審判<芦辺拓>
「時の誘拐」「時の密室」に次ぐ第3作目で、過去の豊富な資料と知識を駆使した作者得意の世界だが、逆に言えば量産性は難しい題材と言える。今回か舞台を大阪から 東京に移し、背景に現在を加え、レギュラーキャラクターの森江弁護士も登場させた。豪華なラインアップだが、省けるものもありそうだ。構造の複雑かが本格ミステリ にプラスかどうかの問題を投げ掛ける事にもなった様だ。
2015年02月13日
壇の浦残花抄<安西篤子>
歴史短編小説11作からなる作品集で、戦国時代を中心に、歴史のなかの女性を描く。栄華と滅亡は何時の時代でもあり、その影に女性も登場するが、それが主人公なのは 小説の世界が多い。人物の選択は作者の任意のようだし、まとめられる題材もあるが、短編が裏の人物の印象に近いのかも知れない。
2015年02月13日
カラーマ−ゾフの妹<高野史緒>
「カラーマ−ゾフの兄弟」の2次創作物という事が、話題とも問題ともなった江戸川乱歩賞受賞作だ。個人的には、作者がSF作家で、今後のミステリ作の発表が期待しにくい 事の方が気になる。長坂秀佳を筆頭に、公募当選後に本格的にミステリを書いている人が多くなく、作家への期待度が減少気味なのが不満だ。この作品も作者も、 ミステリに関しては今後を期待しにくい。個人的には原典を読んでいないのでそちらの面白さは判らなく、SF的なイメージが感じた。
2015年02月19日
おやじに捧げる葬送曲<多岐川恭>
最初に作者の言葉で「おれ」と「おやじ」の関係を述べているが、曖昧な所があり、小説全体の構造に不審を持ちながら読むことになる。「おやじ」とは何か、父か 年上の男か色々な対象に対して呼ぶ。小説中の呼びかけが同一人物の保証もない。一方的な話しかけが対話になると、「おれ」にも混乱する。安心しては読めない話だ。
2015年02月19日
排除<今野敏>
現在の題名では、潜入捜査シリーズの第2作となる。殺し屋の末裔という主人公の設定だが、周囲も似た状態の様だが不明が多い。元暴力団担当刑事が、身分上は辞めて 奇妙な組織の1員として、暴力団の悪行に対応する。奇妙な武器と身体能力は、不思議な世界を作る。個々の作品とシリーズに流れる謎が混在する。
2015年02月19日
諜報列島<三好徹>
昭和40年頃は日本の戦後のスパイ小説が確立しかけた時だ。世界情勢が変われば、スパイ小説は影響を受けて変化する性質がある。ただ手法が決定的に変わる事は少ない。 スパイ、二重スパイ、元締め、巻き込まれ、偽装・・・・多岐のテクニックは形をかえて続く。それが形を整えた時代の短編集だ。
2015年02月25日
旅人たちの迷路<夏樹静子>
中編2作の作品集で「焼きつくす」「現場存在証明」の2作だ。特殊捜査班の遠山怜子刑事シリーズだ。実際は刑事・遠山と嘱託医・北坂のコンビだ。後者の科学捜査が 中心だが、検事・霞、弁護士・朝吹の続きで遠山シリーズと呼ぶ。法律問題でなく科学捜査が中心のトリックと警察捜査小説だ。
2015年02月25日
鬼来也(下)<高木彬光>
長めの伝奇小説の下巻で、雲霧仁左衛門とか平賀源内とか西国大名絡みがまだまだ登場して入り乱れての争いは広がる。完結編というよりも、延々と続く複数が入り乱れる 争いと、そもそもの発端の謎の人物は誰かの収束をみせない展開がまだまだ続く。
2015年02月25日
若さま侍捕物手帖<城昌幸>
岡っ引きや同心等の奉行所が主人公でない、捕物帳の代表作で長編「双色渦巻」と短編5作からなる。登場作では若さまの素性も不明で、浪人の居候だ。ただ、役人が困ると 助けを求めてくるという事件に絡みやすい設定になっている。多くの作品の主に初期の一部だ。
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2015/02に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。