推理小説読書日記(2015/01)
2015年01月02日
偽りの殺意<中町信>
長めの短編、または中編3作の作品集です。「偽りの殺意」「急行しろやま」「愛と死の映像」の3作です。2作は鮎川哲也のアンソロジーにも採録されています。 どれも重厚な作者の初期の本格ミステリーです。津村刑事を主体に刑事らが主にアリバイトリックを暴きます。
2015年01月02日
はぶらし<近藤史恵>
ほとんど記憶にない人物が友達と言って家に乗り込み、当然の様にふるまい居つく、主人公は負の生活と気持に悩みながらも断ち切れない。サスペンスタッチで進む話しは その含みは残しながらも意外な展開に進む。よく有る話なのか、レアケースなのか、心の優しい者は損なのか?
2015年01月02日
屑の刃<麻見和史>
医学ミステリでデビューして、警察小説での本格ミステリを書いている作者の新しいキャラクターは小さなケーブルテレビの取材記者、題して「重犯罪取材班・早乙女綾香」 そもそもどの様な番組を作るのか、大手新聞より取材は出来るのか、その中で事件の謎の真相に近づけるのか。それよりシリーズになるのか。
2015年01月08日
予知夢<東野圭吾>
ガリレオこと湯川学シリーズの短編集です。天才物理学者がついに、それ以外のジャンルの事件にも草薙刑事に引っ張りだされます。ミステリー的には、不可解状況が より広がりますし、解決も可能性が主体で証明はひねる事が増えます。
2015年01月08日
銀河鉄道殺人事件<森村誠一>
一時あるいは今も人気のミステリートレイン・ツアーですが、行き先不明という事と、ある程度予想出来るという微妙な位置にあります。その参加者の行動はどの程度 予測出来るのか・・が背景にあります。全体にはそれだけには拘らなく広がって行きますが、論理の組み立てには無視出来ない設定です。
2015年01月08日
潜入捜査<今野敏>
デビュー依頼多作でかつ多様なジャンルを書き継いだこの作者は、題名を変えて続々復刊されています。潜入捜査もそのシリーズで、本作はそのシリーズ1作目です。 奇妙な3人のグループと、特に実働隊である主人公の謎の歴史的血筋が背景に、現実のだがちょっと別世界的な事件の舞台が描かれます。ジャンル分けはハイブリッド?。
2015年01月14日
立て立て、這え這え<島久平>
後期の短編小説を集めた作品集。統一性はないが、この作者の雰囲気は出ている、それは雰囲気というかタッチであり、具体的な背景やジャンルではない。ミステリを論理 と考えると相当にいい加減だが、それ故に書けるテーマもある。書き慣れていないとがっかりするが、この作者だと結構素直に楽しめる。
2015年01月14日
宝石s36.5<>
長編連載は、高木彬光「誘拐」と仁木悦子「刺のある樹」で、短編が鮎川哲也・佐野洋・渡辺啓助・三好徹・星新一・蒼社廉三・川辺豊三で、海外翻訳がハメットとなる。 蒼社廉三の「屍衛兵」と川辺豊三「蟻塚」は宝石賞受賞作だ。エッセイ類は多数は変わらない。
2015年01月14日
王将たちの謝肉祭<内田康夫>
初期の非シリーズ物の1作で、題名とうり将棋のプロの世界が舞台となる。勝負師は伝説の世界だがそれを小説にすると、より強調するのでSFタッチになるのは避けられない。 その状態でミステリの動機や謎の設定は、違和感が生まれてしまうので、テーマはどうしても勝負師の人物像になってしまう。
2015年01月20日
夜の仮面<三好徹>
新聞記者が探偵の作品は、島田一男の事件記者を代表として多い。その追う事件は、担当の多様性とも重なり広い。ただ、政治担当物や4課担当の暴力団ものは 華々しい。社会部記者は、事件の展開で多様に変わるので地味なものから巨大犯罪まで含むし、風俗物も入る、本格から犯罪・ハードボイルドとスタイルも広く 数的には主流と言える。その混在の「天使シリーズ」の作者であれば、自在な内容となる。
2015年01月20日
懇切な遺書<夏樹静子>
短編と中編からなる作品集だが、地味で堅実で題材や展開も工夫がある作品群だ。ノンシリーズのこの様な作品群は、評価され憎いが、本作者はほとんどが作品集に まとめられており、評価の高さが判る。ファンも多いが、知らない人も多いのが短編と中編の世界だ。
2015年01月20日
はむ・はたる<西條奈加>
時代物の少年探偵団風の連作だ。孤児の集まりが、年齢等でリーダー的なグループを作り、日銭仕事で生きてゆく。その中で起きた事件を、リーダーを中心に解決 する。各話で視点が変わる趣向もあり、子供の視点と孤児ならではの裏社会の視点が重なり、ユーモアな作品となった。
2015年01月26日
塙公爵一家<横溝正史>
中編2作の作品集。昭和7年と12年の作品で、戦前作品の雰囲気がある。専門誌が少ない時代だから、発表先に内容を合わせる事も必要だった。プロ作家が少なく 依頼に応じる作品を書き始める時期だ。今の目では欠点も多いが、サスペンスとしては充分読める。
2015年01月26日
鬼来也(上)<高木彬光>
この作者ではやや長めの伝奇小説の上巻。徳川10代将軍の時代は通称は田沼時代、武田信玄の財宝とか雲霧仁左衛門とか平賀源内とか、その時期の定番の人物も登場 する。そして、次々と登場する怪しげな人物たち、盛り上げた前編だ。
2015年01月26日
花野に眠る<森谷明子>
秋葉図書館シリーズの第2作だが、発表時期は間隔が空いたが、小説内時間の経過は少ない。5話に別れているが、相互に繋がる長編と見た方が良さそうだ。 図書館員が持つ本の知識と本を愛する気持が、周囲の人との出会い・付き合いを勧める。
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2015/01に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。