推理小説読書日記(2014/10)
2014年10月04日
今だけのあの子<芦沢央>
5編からの短編集です。テーマは人間が持つ秘密と謎、人間が心で作り出す秘密と謎です。普通の人は、弱く心はあやういという状況で謎がうまれます。 当事者にとって、あるいは登場人物と同期している読者にとっては、充分な謎となります。
2014年10月04日
憑かれた女<横溝正史>
昭和8−10年にかかれた、由利・三ツ木が探偵役のミステリ3作からなる中短編集です。等々力警部も登場しますが、その後も含めると年齢不詳の刑事です。 この時代の横溝作品は、幻想と怪奇の比重が強い時期でした、探偵役の登場が遅い作品は全く違う展開を予測させます。
2014年10月04日
天の梯<高田郁>
突然に現れたシリーズ最終短編集です。第2シリーズの有無は不明ですが、急激に終わらせた感は強く、それまでとは雰囲気が急変します。不安の中でがんばる、 つきがなく、事件が次々に起きて先が見えない・・・それが、全て逆に回り収束します。
2014年10月10日
死の快走船<大阪圭吉>
珍本全集4巻で、現在入手困難な作品を5冊からと、未収録作品を加えた、合計38編の短編集です。入手出来る本格作品は省いているので、それとは異なる雰囲気の 作品群が集まり、また違った味わいがあります。出版が困難な戦前なので、防諜小説には当時の事情を含めて読む必要がありますが、それはその当時の他の作者も 同じです。複数冊分の多くの内容の本です。
2014年10月10日
警視庁強力班係・樋口顕 リオ<今野敏>
捜査を全面に出した警察小説は、最近になり急激に増えています。特殊な設定やキャラクターの存在は魅力的でそれも大きな要素ですが、それを生かすと本来の地味な 警察捜査から離れます。そのジレンマの中で、地味で勤勉で平凡な中に能力を持った捜査員が地道に捜査して真相に辿りつく内容で、読ませる事は作家にはむしろ 難しいと思えます。それをクリアする内容です。
2014年10月10日
ねじまき片想い<袖木麻子>
おもちゃプランアーという職業で、恋するが実行できない主人公の出会いと、片想いを描きます。片想いでも、仕事はばりばりの主人公も、次第に双方に不調となり 悩む事になります。ああ、30才の女心は理解出来ないというもどかしさで読む・・・・。
2014年10月16日
マスカレード・ホテル<東野圭吾>
ホテルのフロント係・山岸尚美と、刑事・新田がコンビで、連続事件と、ホテルの予告事件を対応します。表面はサスペンスであり犯罪小説であり、コンゲームです。 裏に犯罪捜査と推理がながれ、そこにコント風の逸話が加わるという盛り沢山な構成です。よくまとまったと感じる。そもそも刑事がホテルマンに化けられるのでしょうか。
2014年10月16日
謀略の迷路<三好徹>
昭和40年頃のスパイ小説は、結城昌治と中薗英助とこの三好徹くらいでした。その作者のスパイ小説の短編集です。舞台も世界に広がり、主人公も多様という内容で 全般に巻き込まれタイプの話しが主体です。日本人とスパイとの関係は、巻き込まれが向いているか、それしか無理があるのでしょう。
2014年10月16日
倉橋由美子全作品2<倉橋由美子>
2集と言っても、まだ作者の若い頃の作品群です。固有名詞をアルファベットで代用し、誰かに影響を受けた様なストーリーは何故か純文学に分類されてしまい、評論家を なやませたらしい。エンターテイメントなら違う評価だったとも思えます、後年に作品ノートで好きな作者・作品を真似ただけとか面白い作品を書きたいだけと、ばっさり 斬りすてます。
2014年10月22日
重婚<夏樹静子>
昭和50年代前半の短編集です。丁度、推理作家協会賞を受賞した時期でしかも雑誌が多い時期だった。短編集は出にくいのが昔も今も同じですが、この作者は短編集が多い です。しかも連作が少なく、純短編集が圧倒的に多いです。ただし、作品傾向を揃えたりしたものは多いです。本集は作者本来の作風が集まっているので、多様なテーマ作 です。
2014年10月22日
御用盗変化<高木彬光>
連作集の伝奇小説といえるでしょう。幕末に倒幕派が江戸に攻め昇る時に御用盗の名に多くの盗みを行った。それに対し、咎める人物が登場して・・・というのがおおまかな 流れで、そこに多くの逸話を時に実在人物を混ぜて描きます。
2014年10月22日
刺青された男<横溝正史>
戦後直ぐにこの作者はいちはやく多くの作品を発表したが、長編・本陣殺人事件以後は金田一耕助ものが有名になりました。同時に書かれた、ノンキャラクターの作品 、多くの本格推理作品が比較上は取り残された形になった。一部はアンソロジー等で採録されたが、内容的に優れたものも多いが、意外にも残されたという皮肉だ。 それらの作品集です。
2014年10月28日
宝石s35.3<>
長編連載は仁木悦子の「刺のある樹」と新連載の高木彬光の「誘拐」です。短編は、香山滋・南条範夫・渡辺啓助・星新一・戸板康二・飛鳥高です。翻訳はフィルポッツと ブラウンです。
2014年10月28日
矢澤潤二の微妙な陰謀<秋梨惟喬>
中国物、少年探偵団物の後は奇妙なSFタッチの作品です。作者からは予想出来ない内容で、小説自体も理解困難なものです。奇想でもなく、SFでもなく謎があるのかどうかも 判り難い。作者の進む先も見えないという厄介な作品です。正体不明で楽しめにくい。
2014年10月28日
新羽精之探偵小説選2<新羽精之>
長崎のローカル作者の作品集の2集で、これに雑誌「幻影城」発表中断の「12支によるバラード」と長編「鯨の後に鯱が来る」を加えると全作品になる筈です。 新人賞応募の2作の本格物と奇妙な味の作品で、後者が評価された事がその後の活動に影響した様です。多様なジャンルを書きわけ、違う作家になったかも知れません。
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2014/10に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。