推理小説読書日記(2014/04)
2014年04月01日
花園の悪魔<横溝正史>
4作からなる作品集です。昭和20年代終わりから30年最初の作品で、東京は金田一耕助と等々力警部が登場し、岡山は磯川警部が登場します。本格推理だが、横溝 の作品らしく、性格の変わった人物や猟奇的に見える事件が多いです。その影に論理的解決がまっています。
2014年04月01日
四文字の殺意<夏樹静子>
6編からなる短編集です。題名が4文字のひらかなになっています。警察も積極的に関わりますが、一方では女性が多い多様な人が絡みます。個々の作品には直接な 関連はないですが、雰囲気やリズムは似ています。別に題名にひきづられていないですが、連作風の意識はあったように思います。
2014年04月01日
翳深き谷(上)(下)<トレメイン>
修道女フィデルマが活躍するシリーズの長編6作目です。日本への紹介は5作目からで、途中で最初に戻り、いよいよ第1作から6作目まで揃いました。本国では 多数書かれ続けられているとの事で続編が期待です。7世紀アイルランドが舞台の純論理本格ミステリは、今では珍しく貴重です。
2014年04月07日
坪田宏探偵小説選<坪田宏>
戦後から昭和20年のみ活躍した坪田宏は、本格探偵小説のイメージがあるが、情報の少ない作家の1人です。この本は全集ではなく、発表作が20以下の作者の12作 を選んだ選集です。発表作は少ないが、執筆作は他にもあり、長編も書いていたらしいが今は残って居なさそうです。必ずしも本格のみの指向でなかった様です。最初の 単行本で最後の可能性も高いです。
2014年04月07日
京都嵯峨野殺意の旅<石川真介>
第2回鮎川賞作家で、ライト本格ともトラベルミステリとも言える内容です。ミステリ要素とそれ以外が分離し、人物設定がかなり無理があるために、中間の位置に埋もれた 感があります。本作も後半のミステリ部と前半が分離していますが、それが個性スタイルとならなかった印象があります。トラベルミステリには、現地の読者には自明の事 でトリック以前になってしまう欠点は、いかようにも避けがたいです。
2014年04月07日
巫子<皆川博子>
副題が「自選ホラー集」で、9作からなる怪奇幻想短編集です。幻想小説作家のイメージが強い作者ですが、怪奇・ホラーとの境目はいつの時代もどの作者も曖昧です。 境目のない不安定さこそ幻想の原点であろうと思います。多彩な作品を書き分ける作者の、原点ともなる短編群で、これからの発展の仕方で長編が生まれると思えます。
2014年04月13日
姫島殺人事件<内田康夫>
複数のジャンルのスタイルを合わせ技でまとめあげたミステリーです。大分県国東半島の先の島・姫島は歴史と伝説の島です。ただ、距離的に複数の交通網で時間距離が 微妙で時間トリックがありそうな土地です。同時に島という地理的密室性が有り、同時に大分付近は観光や産業誘致問題があります。その土地に来る人の目的は何か。
2014年04月13日
特殊防諜班・凶星降臨<今野敏>
ユダヤ民族問題と国際謀略とそれに絡む、主人公に日本古来・・その前は?・・の出雲とそれに絡む能力者の老人と若いヒロインという登場人物が揃うが、新たに「凶星」 がシリーズに登場します。歴史とユダヤと来れば、ナチスを想い出す人も多いでしょう。そこでの凶星とは・・?。
2014年04月13日
幻の女<横溝正史>
3作からなる作品集です。昭和12年・昭和25年・昭和13年の作で、由利先生と三津木登場作ですが、等々力警部も登場します。蝶々殺人事件以降は金田一耕助に、探偵役 が移ってゆきますが、2作目は蝶々殺人事件以降の作品です。
2014年04月19日
刑事さん、さようなら<樋口有介>
柚木草平シリーズではないが、似た雰囲気のハードボイルドタッチの作品です。ただ主人公から警察小説とも言えるかも知れません。その微妙な、中間感を作者が選んだ 理由が本作の創作動機かとも思えます。登場人物から青春小説でもないですが、この作者が書くと中年もまた青春なのかと考えてしまいます、普通は別の言い方をする でしょうが・・。
2014年04月19日
娼婦の眼<池波正太郎>
時代小説の大家ですし、捕物の面からミステリー要素もありますが、本作は現代物の短編集で昭和30年頃の娼婦の姿を色々な方法で描きます。ミステリー要素はほぼあり ません。ただ、この作者らしい人物の出し入れや、話しの展開や表と裏の姿は、ミステリ好きにも楽しめるでしょう。
2014年04月19日
宝石S.35.09<>
長編連載は、水上勉(初回)と日影丈吉(最終回)と藤原審爾(最終回)で、短編が星新一・鹿島孝二・南条範夫・水谷準・河野典生・南達彦・小沼丹・猪股聖吾。 コントが少数と翻訳・コラム・エッセイが多いです。
2014年04月25日
シュンポシオン<倉橋由美子>
表面上は井戸端会議風の雑談で展開する、会話・雑学談を装います。ただ内容が、哲学とか宗教ろかまで入りこむもので、恋愛やユーモアやSFや幻想がちりばめられて いても内容の奥までは理解は難しいし、付いてゆけないのか誘導されるのか、あるいは気づく事も出来ないのか、悩ましい内容です。
2014年04月25日
邪馬台<北森鴻・浅野里紗子>
作者・北森鴻が死去で中断したものを、別の作者が書き継ぎました。それゆえに最初の構想とは違う内容と思われます。題名自体も変わっており、テーマも違う可能性が 高いです。歴史・民俗学分野の多数のキャラクターが登場する民俗学シリーズ初の長編は、結果はあまりにも長くテーマが呆けた形になりました。元作者の死去が悔やまれ ます。
2014年04月25日
黒白の旅路<夏樹静子>
主人公のヒロインは、心中の生き残り?というスタートからそ相手の殺害を追います。何も知らないで心中したのかと、頼り無くなりますが、ミステリーのヒロインは 読者を心配させるものなのでしょう。辿り突く先は遠い・・・。隠されたテーマと犯罪が暴かれて行く過程は終わりを予測させません。
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2014/04に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。