推理小説読書日記(2014/03)
2014年03月02日
鄙の記憶<内田康夫>
一部が静岡・大井川で、2部が秋田・大曲となっていますが、離れた地域であれば必然性はなさそうです。ある老記者が転勤先で出会った事件を、元の担当通信局の 過去の事件と人物に重ね合わせた時に第2部が始まります。そこでその記者が殺害され、浅見がそれを追います。過去の事件と謎自体から追うことになりますが、浅見 風に結末に至ります。
2014年03月02日
城の中の城<倉橋由美子>
どこかカフカ風のイメージは作者の意志とは別に、読者が勝手に持ちたまたま題名が似ているとより強く思い込みます。主人公の桂子さんは、この作者のファンにはお馴染み です。日本では多くない宗教が題材で、それはキリスト教ですし、それを哲学的に読むかもしれません。作者は自作やエッセイで、作品の評論を語る事が多いですが、 反キリスト教文学とか、批評家を批評する事を行っています。
2014年03月02日
特殊防諜班・組織報復<今野敏>
シリーズ第2作で、1987年の作品が題名を変えて3度目の文庫化です。冷戦のスパイ戦とその奥の、ユダヤ民族が主題です。日本人にはやや鈍い事が多いが、民族問題と 宗教問題の影響は非常に大きいです。それを裏の骨に特殊能力の保持者が次第に、その力を明らかにして行きます。同時に裏の組織も・・・・。
2014年03月08日
北洋探偵小説選<北洋>
作者初めての単行本です。作品数も活躍期間も短く、探偵小説以外のエッセイ風の著作を含めての全集となっています。当時は本格派とされていましたが、SF的な設定と 空想と幻想も含む内容で、中間的な作風です。海野十三のイメージもかすります。キャラクター・光岡作が主体ですが、内容は多岐です。分光学を主体にした科学捜査の 作品と、フロイトの夢判断からの作品と、幻想を展開した作品です。
2014年03月08日
宝石S.34.11<>
長編連載は、鮎川哲也と南条範夫と松本清張で、募集短編発表が村木昭と酒井義男で、短編が新章文子・多岐川恭・桶谷繁雄・楠田匡介・菊村到です。乱歩賞の選考と 翻訳・コラム・エッセイです。
2014年03月08日
春画地獄<島久平>
寡作家の短い時代物の短編集です。ミステリ味は少しの作品にはありますが、人情ものや艶ものやユーモアと多彩な内容です。舞台は大阪ですが、時代小説の意識は 強くなかった様です。
2014年03月14日
乱世玉響<皆川博子>
時代は乱世で、主人公は蓮如の娘です。蓮如は27人の子供がいたというから、その1人が主人公でも架空で進めますが、1人が将軍・足利義政の妾となったされ それが主人公になると、少しだけ歴史に引きよせやれます。副題は「蓮如と女たち」、周囲はそのような環境です。
2014年03月14日
ナイト・スケッチ<横田順彌>
SF作家のショートショートの童話集です。復刊ですが、最後の「今日の観点から見て、穏当を欠く表現・用語はほとんど見受けられません」が印象的です。メルヘン は短い文章で判りやすく、余分な事は省くそして、その世界に直ぐに入る事が大事です。時間がかかると短い話しが終わります。
2014年03月14日
Mの悲劇<夏樹静子>
北海道の太平洋側の東端・厚岸のはずれで陶芸を行う夫妻、何故そこでいつから・・・・。そこの平凡な暮らしの中に加わった青年、そこから物語は過去へ進みます。 隠遁的な生活は、本当に隠遁だったがそれが破れて行く過程を描く、その結果はそれはひとつの形に過ぎないと感じるのは私だけでしょうか。
2014年03月20日
シュークリーム・パニック Wクリーム<倉知淳>
3作の独立短編集です。寡作作家の作品ですが、持ち味が軽さなので、本格味が有っても微妙な味があります。奇妙に長い題名は、何かの間違いかと思いかねない。 軽いのりに隠された本格推理伏線は、この作者の読者なら慣れています。そして論理展開で終わっても実は、推測レベルでいわゆるあらためが不足も、同様です。
2014年03月20日
風来浪人(上)(下)<高木彬光>
上下巻といっても、普通の長さの伝奇小説ですが、その伝統の波乱万丈の展開は、どんどん増えて行く登場人物と消えたのか、再登場するのか判らない登場人物で どこに収束するか、いや誰が中心人物かさえ読者は迷い始めます。正体不明が伝奇小説のポイントです。
2014年03月20日
手は汚れない<久能啓二>
昭和36年の作ですが、現在競って書かれる美術品・歴史発掘テーマを扱っています。舞台の多くは鎌倉で、各地の研究機関や人物が登場します。このテーマの特徴は 動機が増える事と、専門的に見えるサブテーマを盛り込める事です。そもそも新発見に惹かれるのは何故か、興味か功名心か、あるいは・・・。
2014年03月26日
津和野殺人事件<内田康夫>
東京から始まり、地方に波及するとフリーライター浅見光彦は自由に移動出来る事になる。島根の津和野付近となると、行き来は結構大変と思うが旅情ミステリはそれを 避けては幅が狭くなり、微妙だ。津和野の謎が深く、関わった人にひかれる設定も必要だ。この当たりのストーリーはパターン化するが、内匠に使い分ける。
2014年03月26日
特殊防諜班・標的反撃<今野敏>
シリーズ3作目で、宗教絡みの国際テロ事件が主体だが、登場人物がいかにもという特殊な能力か考えを持っています。長編だから一応一つの事件は終わるが、全面解決 ではなく、新たな人物・敵が登場し、既に登場している人物の新たな一面が出て続編が書かれます。
2014年03月26日
宝石S.34.11<>
長編連載は、鮎川哲也(最終回)と南条範夫(最終回)と松本清張(最終回予定が伸びた)で、募集短編発表が河野典生と佃実夫で、短編が飛鳥高・戸板康二・南達彦・ 野口赫宙。コントが複数と翻訳・コラム・エッセイです。
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2014/03に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。