推理小説読書日記(2014/01)
2014年01月01日
秘め絵燈籠<皆川博子>
時代物短編11作からなる短編集です。内容はバラバラとも、多彩とも言えます。書かれた時期と時代物が同じという以外は、個々には違うテーマと内容です。 実在のモデルもあるらしいが、この作者の作風からはそれは関係ない事で、色々な内容の作品が混ざっています。
2014年01月01日
少女像は泣かなかった<内田康夫>
「多摩湖畔殺人事件」の被害者の足の悪い娘と、妻娘を亡くした孤独な中年刑事が親密になり、河内刑事が足で橋本千晶が考える役目です。たまには外に出かけますが 何故か事件に出会います。それからは、基本は安楽椅子探偵と、捜査の刑事・・ただし胃潰瘍入院以降は現場でないが・・・・のコンビとなります。長編が多い作者の 短編集です。
2014年01月01日
終着駅<結城昌治>
1984年の作品です。最近では急に増えましたが個々の短編小説の連作であると同時に、全体では長編ともなっています。当時は珍しかったようです。 背景は戦後の混乱期でエピソードは多い時期だったのでしょう。
2014年01月07日
金田一耕助の冒険<横溝正史>
似た題名の本がありそうですが、角川文庫1976年版で、「Xの中の女」という題に統一された11作の短編集です。探偵役の金田一と協力者の等々力警部と記述者 とうスタイルで、東京の居を構えた金田一が事件に取り組みます。短い作品ばかりですが、本格味は維持しているのは流石です。
2014年01月07日
シフォン・リボン・シフォン<近藤史恵>
題名どうりの女性が主体で主人公の、でも意外な奥行きがあるミステリです。謎自体はライトですが、小説自身のテーマは深いです。田舎と都会、風習や古い考え に苦しむ若い世代が、成長して次の世代の似た悩みに接します。男性に判り難い部分と、共通のテーマが含まれます。
2014年01月07日
沖ノ島伝説殺人事件<今野敏>
警視庁STシリーズの伝説シリーズです。福岡の宗方神社の一つの沖ノ島が舞台です。立ち入り禁止でかつ、そこで起きた事は外で語るなという宗教的な制約があります。 地元の警察は対応に苦慮しSTに要請がありますが、嘘発見器コンビも悩む、信仰を信じて語らないか、嘘を言っているか判断出来ません。奇妙な状況で、はたしてどの ような解決を見つけるでしょうか。
2014年01月13日
任侠一本刀<島久平>
捕物帳を含む、時代小説集です。表題は題名どうりの任侠小説です。火消しを主人公にした捕物帳や、ごちゃまぜの時代小説集です。時代小説の方がこの作者は、やや ミステリー味があるのもいささか不思議です。
2014年01月13日
水上幻一郎探偵小説選<水上幻一郎>
短編作家の全集となっていますし、この作者の初めての個人作品集でもあります。デビューが戦後直ぐで、執筆期間が実質的に3−4年ですから、忘れられたのも仕方 ないともいえます。「青髭の密室」と「火山観測所殺人事件」が複数のアンソロジーに採られてイメージは本格派ですが、この本で半数程度で他は色々なジャンルでした。
2014年01月13日
探偵小説の街・神戸<野村恒彦>
小説ではなく、エッセイ風の本です。探偵小説と神戸の関わりを、ゆかりの作家とゆかりの探偵雑誌や会合から紹介し、神戸を舞台にした探偵小説を数編紹介しています。 マイナーな内容や、関西ゆかりの作家が主体ですが、江戸川乱歩・横溝正史・西田政治らが含まれるので戦前・戦後のこのジャンルでは比重が大きいです。
2014年01月19日
宝石S.34.9<>
長編連載は、鮎川哲也と南条範夫と松本清張で、連作が戸板康二、短編が新田次郎・城昌幸・土岐雄三・日影丈吉・佐野洋です。翻訳座談会があります。木々のエッセイが あり、仁科東子の高木彬光への手紙と高木のコメントが入り、成吉思汗の秘密の改稿がされます。
2014年01月19日
螻蛄<黒川博行>
二宮・桑原コンビの、大阪のハードボイルドのシリーズ・別名を疫病神シリーズとも呼ばれます。初登場の作品です。不死身の桑原といつも欲で失敗する二宮コンビの 腐れ縁は今回は東京進出?。海外よりも近いが、不思議と不案内です。ユーモアと活劇と詐欺とヤクザ任侠とが混ぜ込めです。
2014年01月19日
化蝶記<皆川博子>
8作からなる歴史作品集です。作者はミステリーが3作としています。「化蝶記」「幻の馬」「がいはち」で、主人公が探偵役です。特に最初は鶴屋南北です。 時代物と言っても、背景は江戸時代と明治とがあります。全体的に時代・幻想小説と言えそうです。
2014年01月25日
奇巌城<蘭郁二郎>
戦前・戦中に多彩な作品を残した作者は、その時代故に内容にバイアスをかけられてしまい、その全容や先駆性等が再評価されにくいです。戦争や軍部が、小説に制限 を与えた事は明白であり、書かないか時代小説に移るか、部分的妥協するしか発表できなかった。作者の少年向けSF小説は複数の理由から、埋もれたものが多いです。 その一部が本書です
2014年01月25日
霧の向こう側<夏樹静子>
2人の女性の自立に対して、傷害や挫折や、思い違いが絡み、本人の想定外の展開に入ります。サスペンスですが、それよりも女性の自立に関する作者の思いを 主人公に置き換えて、買ったと言えます。そして、それ以外にもドラマか、教訓なのか波乱が描かれます。
2014年01月25日
折鶴秘帖<高木彬光>
河内山宗俊が主人公の伝奇小説です。そのまわりに群がる、正体不明の人物は、かなりの人口密度の高さです。登場しては、消えて行くには充分の数です。 折鶴が狂言まわし?、まあ宗俊が最後まで無事なのだけは予想出来ます。
2014年01月31日
尾州白帝城殺意の旅情<大谷羊太郎>
尾張は犬山城が背景の一つです。八木沢警部が私用の旅行で明治村に行き、人違いで出会った人が出発です。そして東京に戻り、殺人事件が起こり、捜査で犬山に行き 再会し、調べると20年以上昔の事件が浮かぶ。ドラマの2時間サスペンスにそのままなりそうな展開を見せます。
2014年01月31日
迷路の花嫁<横溝正史>
金田一耕助は、必ずしも本格物だけに登場しないで、サスペンスにも出番があります。本作は金田一の出番は少なく、等々力警部らの捜査が行き詰まった時に 登場するが他の仕事が忙しくそれが終わってからとなり、最後に再登場して解決??します。サスペンスながら防御率はあまり下げない展開です。
2014年01月31日
聖者の凶数<麻見和史>
警視庁1課11係シリーズの1作で、如月塔子・鷹野秀昭の身長差コンビが連続殺人に遊軍として活躍します。本格小説の警察小説ですが、連続事件で次第に解決 するので、名探偵とは言いにくいです。個性のある係りのそれぞれが適時活躍します。連続殺人のミッシングリンクがいつもポイントです。残された数字の 意味が何か、それが事件解決にも繋がります。
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2014/01に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。