推理小説読書日記(2013/12)
2013年12月02日
量刑(上)<夏樹静子>
リーガル・サスペンスは多くは弁護士が中心に描かれる事が多いです。警察小説味が強いと、検事が主人公になり特に捜査検事が中心になります。本作は、多くが法廷で 進みますが、主任裁判官と2人の陪席裁判官が多く描かれます。事件は倒叙風に進み、そして意外な量刑裁判となり、そして別の犯罪に発展します。
2013年12月02日
量刑(下)<夏樹静子>
弁護側の主張は有期刑で、裁判官は新人は迷い、主任と右陪席は無期か死刑の見方・・。それを予想した事から、密かに主任裁判官の娘の誘拐事件が起きます。その捜査と 併行して進む裁判で、主任の態度は両陪席を驚かせるが結末は??。法廷物の面白さは十分ですが、事件としては何故捜査陣・裁判官も、矛盾した被告の自白の嘘に気が つかないかが気になります。
2013年12月02日
「奥の細道」不連続殺人ライン<深谷只記>
人気コンビ・黒江荘と笹谷美緒が結婚して登場します。海外留学に一緒に行きたいから長い、フィアンセ時代が終わったという。そして、知人から相談された事件が 相談した勝刑事の捜査中の事件とリンクして、考える人になり解決します。このシリーズが中断したのは、トリックの枯渇と言われていましたが、本作もトリックもので なく、動機と殺害方法探しになります
2013年12月08日
世界でいちばん優秀なスパイ<結城昌治>
子供向けの雑誌に連載されたが、作者の後書きのように大人も楽しめるように欲張りすぎた・・・誰も楽しめる・・・・やや子供には難しいかも・・です。 架空の内戦の国にいった新聞社の記者が、知識不足で報道人は大丈夫と思い込んでいるが、スパイ容疑になったり、スパイ行動を要求されたりして進行します。
2013年12月08日
開かせていただき光栄です<皆川博子>
舞台は18世紀のロンドンで、内容は多彩と言おうか、何でも満載といおうか読者が特定の小説世界に入り難い構成になっています。そこで行われる、解剖学に関する 色々な事、如何にものテーマからは犯罪に繋がりその捜査に繋がって行きます。
2013年12月08日
喪われた道<内田康夫>
東京と修善寺で見かけた珍しい虚無僧姿はミステリ的には、何でも出来そうな設定です。喪われた道とは何かを探す全体のテーマの中に、複数の事件要素を含み 展開して行きます。歴史小説へ行くのか、社会派なのかそれとも横溝の世界か。
2013年12月14日
毒の矢<横溝正史>
中編と短編の作品集です。昭和31-2年に書かれた、金田一耕助が東京・緑が丘に住んで等々力警部と解決する事件で、この設定の作品がこの時期多いです。私立探偵が 自身の住む場所で依頼を受け、解決するのはむしろ普通です。地方に出張して泊まり込みで対応する事件が長編で知られていますが本来はマイナーな筈です。不思議な 殺害方法の謎の中編と、不幸の手紙テーマの短編です。
2013年12月14日
戯作・誕生殺人事件<辻真先>
多彩なキャラクターとテーマを書いてきた作者ですが、キャラクター的には整理とまとめに入った感があります。ポテトとスーパーに子供が誕生します。一方、多彩な テーマはいまだ追求中でしょうか、本作も作中作を中心にまだまだやります。
2013年12月14日
名探偵の証明<市川哲也>
鮎川賞受賞のデビュー作です。いきなりのけれんみは、デビューに相応でしょうか。登場した2人の名探偵のこれからはどうなるのでしょうか。取り合えず、後は 別に考えますという感じのテーマです。
2013年12月20日
桃太郎伝説殺人ファイル<今野敏>
STシリーズ第3期第2作です。科学捜査班と伝説との取り合わせですが、全て科学的に解明される訳でなく、可能性として残る部分もあります。このシリーズは警視庁 の地方出張が登場しますが、何故という所もポイントです。勿論依頼されてですが、何か思惑があります。連続殺人の最新??が岡山で出かけます。
2013年12月20日
目白台サイドキック 魔女の吐息は紅い<太田忠司>
怪しげなコンビとプラスアルファの登場シリーズ第2作ですが、より好みする探偵?が首相官邸へ行ってもよいのでしょうか。作られた名探偵刑事というのも以上だが ミステリーならならされます。奇妙な登場人物ばかりでシリーズでないと使いきれないです。
2013年12月20日
怪犯人赤マント<島久平>
江戸川乱歩の少年小説風の内容です。伝法探偵もゲスト出演ですが、主人公はその助手の加藤六郎です。大阪の探偵局だからそれらしい舞台だが、乱歩の少年小説風 だから、その話も活劇も謎も予想できるし、楽しく読めるものです。少年小説は時代を反映する事が少ないので、今でも面白い。
2013年12月26日
銀二貫<高田郁>
長編で、武士の子供が商人に拾われ、成長して行きます。店は、寒天問屋で、寒天製造者と利用者が絡みます。そこには、拘りと信用を重んじる者と一時の儲けだけを 考える者がいます。火事や自然災害がどこかを窮地に追うと、連鎖的に商売の繋がりも影響します。その中で新しい糸寒天作りとそれを使う商品作りが後半のメインに なります。神社に奉納する筈の銀二貫が必要な者に利用され、奉納が遅れて行きますが、それが出来るまでを描きます。
2013年12月26日
宝石S.34.8<>
長編連載は、鮎川哲也と南条範夫で、連作が島田一男と桶谷繁雄、短編が宮原龍雄・楠田匡介・星新一・斎藤哲夫です。翻訳はドイル特集です。乱歩他の評論・エッセイが 多いのが目立ちます。
2013年12月26日
いとま申して<北村薫>
作者の父は童話作家でもあり、その残したノートを参考に個人の歴史と、昭和初期の文壇や童話文壇を描いて行きます。副題は「「童話」の人びと」です。 父の20才までなので、続編があるのが自然です。
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2013/12に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。