推理小説読書日記(2013/10)
2013年10月03日
犯罪蒐集狂<高木彬光>
6作からなる短編集で、大前田栄策物と後に夫婦になる川島竜子ものが半分で、残りはノンシリーズ作品で混合短編集といえるでしょう。大前田栄策が先頭にあるように、 名探偵物や本格物よりは、サスペンス色が濃く犯罪小説やハードボイルド風味も混ざっています。
2013年10月03日
壺中美人<横溝正史>
表題作に短編1作を加えた本です。風俗物に分類されかねないが、本格物の内容は維持されています。体が柔らかく壺の中に入ってしまう女性を中心に話は進みます。 似たイメージは複数の作家が書いているので、作家のイメージを湧かすアイテムなのでしょう。名探偵の防御率は低いが、それも狙いかとも取れます。
2013年10月03日
黒の調査ファイル<今野敏>
調査ファイル・シリーズの最後は黒崎の出番ですが、化学担当で臭気に異常に敏感で、かつ武道の達人の設定は難解な事件に、意外な展開と解決をもたらします。 沈黙の男だが、逆に行動力はあるいはメンバーで一番でしょうか。
2013年10月09日
宝石・S34・4<>
長期連載の「零の焦点」が続き、「林の中の家」が最終回です。短編は、渡辺啓助・斎藤哲夫・多岐川恭・佐野洋・野口赫宙・北町一郎・飛鳥高・楠田匡介と、翻訳です。 江戸川乱歩をはじめとする評論が多いです。座談会が恒例化しています。 人達もいるだろう、すると。
2013年10月09日
ドミノ倒し<貫井徳郎>
短編と長編を結ぶ手法と、併行した話を繋ぐ手法と、主人公があいまいまたは当てにならなそうな手法で、ユーモアで覆うまたは隠す手法は、多彩な方向に広がっています。 そこに複数の事件が一つずつ起き解決するのは面倒と、ドミノ倒しのように始まったらば続くという趣向ははたしてどうでしょうか。
2013年10月09日
死神館の恐怖<島久平>
島作品ではお馴染みの伝法探偵ですが、その助手の六郎が主人公の少年向けの作品群を集めた本です。中期の軽いのりが少年向きには、よさそうです。 しかし、伝法探偵とは違って、まじめで勤勉そうな少年探偵はなにかの皮肉でしょうか。
2013年10月15日
闇夜<堂場瞬一>
警視庁失踪課・高城賢吾シリーズのラスト前です。題は事件自体の深刻さに、高城自体の捜し求めていた娘との悲劇的な出会いからの復帰、そして従来は頼れる相棒の 明神愛美の父親の死とどんどんと全てが悪い方に進む状態でしょう。闇で終わるか、そこに光を見出すか。
2013年10月15日
キリスト・ゲーム<一田和樹>
初めて読む作者のこのタイプの作品に出会うと、戸惑いに包まれる。ミステリ?・SF?・サーバーシュミレーション・未来警察?それとも、ゲームとか宗教的なものかまさか?。 目標も予測も何もないのは、ことミステリを第一前提として読むと実に、読み辛く疲れます。
2013年10月15日
線の波紋<長岡弘樹>
通称、連作長編ですが、日本推理作家協会賞に長編扱いになったように急に増加したジャンルです。最初は斬新に思えましたし、実際にもそういった事が多かったです。 それが個々の内容に無理が行き歪んだり、長編としての終わりが通常の長編なら弱い内容だったりする。刑事・警察をキーワードにする事が意外と少ないジャンルが それでいともたやすい様に重みを増す事に驚く。
2013年10月21日
光源氏殺人事件<皆川博子>
源氏物語の中で中身がない「霧隠」が実は内容があり見つかった・・・そんな写本が見つかったという噂があり、それに絡む現代で殺事件が起きます。比重は現代の事件で で、「霧隠」は構成アイテム的です。あるいは、時代物と現代物を含むオファーがあったのかもと思えます。
2013年10月21日
多摩湖畔殺人事件<内田康夫>
初期を中心に、浅見光彦シリーズ以外も多い作者ですが、岡部刑事もキャラクターのひとりでその仲間の河内刑事が活躍します。しかし本当の主人公は、被害者の足の悪い 娘の橋本千晶です。短編も少ないキャラクターですが、内田作品では異色のコンビです。
2013年10月21日
小夜しぐれ<高田郁>
みをつくし料理帖シリーズの5冊目で、澪の活動範囲が増えると同時に、澪が殆ど登場しない作品も含みます。名前はともかく、澪には小松原という名で接している者の 正体が明らかになる作品です。それが最終で次の大きな展開を予想させます
2013年10月27日
ミステリなふたり アラカルト<太田忠司>
京堂夫妻シリーズの連作集の3冊目です。短い短編で、本格ミステリではショートショート的な短さが特徴です。アームチェアの名探偵で、警察官の妻から話を聞くだけで 名探偵役の夫は犯人が判ってしまう。懐かしい、ホームズの時代を思わせます。まだ続編があるでしょうが、警察官の妻の後輩?ストーカー婦警?が気になります。
2013年10月27日
修羅の匂い<結城昌治>
流木という私立探偵の連作ですが、独立した短編集的な風合いもあります。あてになりそうもない主人公が関わるのは、事件かどうか判らない事ばかりだがなにかに展開する。 それがミステリ的に深いか浅いかは不明だが、そもそも深く掘り下げてゆくキャラクターでなく、起用した作者も同様でしょう。
2013年10月27日
華やかな野獣<横溝正史>
3作からなる短編集ですが、2作は中編です。金田一物だが、背景の時代は結構広いと言えるでしょう。内容も本格と風俗が絡まったものが主体です。この作者ならではの 世界と言えるでしょう。凝り気味の題名も作品の一部として効果的?。微妙な終わりかたの作品もあります。
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2013/10に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。