推理小説読書日記(2013/08)
2013年8月04日
黒い壁の秘密<グリン・カー>
ミステリー界には「カー」は複数いますが、山岳ミステリと言えばこの作者です。とは言っても日本への紹介数が少なく、俳優探偵がいつも山岳物に登場するのか 地方とか観光地とか、広大な自然が好きなのかはもっと多くの作品が紹介されないと断定出来ません。紹介文では山岳物の書き手のようです。謎解きの面も強くもっと 紹介して欲しいです。日本でも山岳ミステリ専門作家は存在し、趣味が山登りの作家は東西ともにいる様です。
2013年8月04日
会津恋い鷹<皆川博子>
幕末から明治維新を背景にした時代小説です。会津は明治維新で大きな闘いと被害と、運命の別れを味わった代表的な藩で、しばしば時代小説に登場します。主人公 のヒロインは鷹の子を幼少より育て、藩の鷹匠のもとで過ごしますが、明治維新の闘いと敗北の中でその役も自然になくなり、一人鷹を育てますが・・・。
2013年8月04日
エリ子、16才の夏<結城昌治>
題名からはエリ子が活躍しそうですが、全く事なり家でしたエリ子を元刑事の叔父が色々な所を探し、色々な事件に会い解決します。短編が積み重なって最後の事件で 漸くエリ子に出会います。うっかり静かな終わりに見えかねないがどうしようもない悲劇の終わりだ。
2013年8月10日
遠野殺人事件<内田康夫>
内田康夫はいつのまにか、シリーズ探偵・浅見光彦で有名になりましたが、それ以外の登場作も多くあります。本作はキャラクター的にはノンシリーズで、題名的には 地名シリーズとも旅情シリーズとも言えます。この作者の作品に多いが女性が重要な働きをします、本作は相当に微妙ですが。そして複数の地を(本作はそれほどでないですが) 駆け巡ります。キャラクターが変わってもその傾向は受け継がれます。
2013年8月10日
迷路荘の惨劇<横溝正史>
それらしい題名がつき、金田一耕助が前編で活躍します。そういうと、逆に防御率は低いとも言えてしまいます。迷路荘という位ですから迷路の庭があります。ただ それだけでないのは予想通りの展開となります。この時代では大長編といえるでしょう。
2013年8月10日
浮気な死神<高木彬光>
私立探偵・大前田英策は高木作品でも、独自の位置のシリーズキャラクターです。頭脳もそこそこですが、もっぱら腕力と気持が先に発つキャラクターです。 ただ警察にも知り合いがいて、業界でも名がしられています。短編作に多く登場するのは、キャラクター設定の影響でしょう。
2013年8月16日
密売人<佐々木譲>
北海道道警シリーズです。優秀な刑事がバラバラに配置され、異なる仕事をしています。効率の悪い組織を逆手に取った、モジュラー式の展開です。それが次第に いくつかに収束します。複数でも良いのが警察小説の利点です。
2013年8月16日
夜想<貫井徳郎>
新興宗教とはミステリ的に見えて、まとめ方が意外と少ないかも知れない。ただ、テーマとしないで背景と割り切ると、結構怪しい人物が普通に登場出来る。 この作者と会うイメージは迷惑か?。
2013年8月16日
黄の調査ファイル<今野敏>
毒薬専門で、僧籍のST員という存在自体が興味を持つ。それが、宗教をあるいはもっと深い禅と悟りを語る。聞くのは、キャップという設定は最高の布陣です。 警察小説のイメージから自然に外れた、それでも不審にならない話です。
2013年8月22日
薔薇密室<皆川博子>
大作です。時代は第二次世界大戦付近で場所は、ドイツ・ポーランドだが侵略で時代で変わります。構成はモジュラー式で複数の話がバラバラに進むかの様です。 ミステリまのか、時代小説なのか・・・これだけでは無さそうだ、幻想小説か少なくても妄想というキーワードは満ちています。SF小説か・・幻想・妄想を入れればそう でしょうが、その言葉は使いたくないです。妄想を信じ、実行に移す人間がおれば、もう普通の世界に戻るとも言えますが・・・。
2013年8月22日
女神の手は白い・目白台サイドキック<太田忠司>
本の題名は逆なのだが、第2巻の予告があるので、題名+シリーズ名にしました。奇妙な探偵側の登場人物を除けば普通のミステリと言えるかもしれない、いや そうでしょう、探偵が奇妙な連中でも同じではないか?。書き下ろし文庫シリーズは、ライトノベルや警察小説や時代小説への対抗か、しかし量産は無理と思うが・・。
2013年8月22日
人形パズル<クエンテイン>
知名度の高いパズル・シリーズだが、自身がトラブルメーカーの探偵役は、なかなか読み慣れないです。奇妙で読みつらいとも感じるが、作者の計算のうちでしょうか。 このパズルは、論理的な謎解きではなく、迷路にはまった探偵役の迷走の意味に思えます。
2013年8月28日
死にます<島久平>
中編から掌編までの作品集です。この作者は最初は本格でしたが、中期から風俗小説が増えて来ますし、同時に関西ローカルの発表が増えてきます。作風の変更に 外部からの要請がどの程度あったかは興味はあります。この時期の作品集で、この後は艶笑・エロス味が強くなります。
2013年8月28日
赤い霧(上)<結城昌治>
上下2冊の大作と言いたいが、今なら1冊にするだろう程度の長さです。芸能界というか、テレビ界の俳優が舞台ですがその家族や周辺も絡みます。雰囲気はハード ボイルド風でしょう。やや落ちぶれてわがままなやや異様な行動が発端と書くと、よくありがちですが実は軽薄な内容ではありません。
2013年8月28日
赤い霧(下)<結城昌治>
主人公や文体がハードボイルド風という事だけでなく。テーマが孤独と運命・宿命であり、連続殺人の被害者も容疑者も、実態と演じる俳優の姿の2面があり、 存在感が俳優の部分だけという孤独さに侵されているらしい。その残りを描くとハードボイルドな内容になるようです。
←日記一覧へ戻る
2013/08に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。