推理小説読書日記(2013/07)
2013年7月05日
救命拒否<鏑木蓮>
医療ミステリが増えていますが、その内容は問題とテーマの広さから多岐に渡り、また医療関係者が書くミステリもあります。情報小説が増えていると言っても 医療関係は専門性が高くなかなか本質まで書き込めない制約があります。本作は救命現場でのトリアージです。不十分な環境で医療順位を色で分けます。ただ、助ける 事が出来ないと判断した時のブラックは当事者・家族には理解出来ない面があります。大きなテーマです。
2013年7月05日
人魚の舌<島久平>
私立探偵の活躍する本格推理からスタートした、本作者はその後、多様なジャンルに作風を変えながら書き継ぎました。本作は作者はハードボイルド要素を狙ったと していますが、多視点による展開が進み、1人称探偵でも捜査ものとも言えないです、その後のユーモア要素も含んだ中間的な内容となっています。
2013年7月05日
ST 青の調査ファイル<今野敏>
STシリーズの第4作で、ここからグループの一人が中心になる「調査ファイル」シリーズが始まります。名前に色が付いているので、誰かは題名から判ります。幽霊と 霊能者が絡む犯罪と謎を、青山が中心に解決します。
2013年7月11日
宝石S34.05<>
短編は、偶然は作られる・アイスクリーム・賃貸・月夜蟹・等々力座殺人事件・たんぽぽ物語・無駄な殺人・被害者は誰だです。連載は仁木悦子・松本清張・ 島田一男とひき続き連載中です。ヒッチコックミステリーズの翻訳が続きます。
2013年7月11日
残酷なチョコレート<木村二郎>
翻訳で知られる作者が、10年振りに書いたニューヨークが舞台の、私立探偵・ヴェニスのシリーズ短編集です。全てがアメリカスタイルで、私立探偵も免許制で、 その意味では、本格的な私立探偵物です。10年の時間が探偵を変えたのでしょうか。
2013年7月11日
ST 赤の調査ファイル<今野敏>
STシリーズの中の、個人名の色が題名になっているシリーズの1冊です。医学担当の赤城が中心になった、大学病院の医療ミスがテーマです。医療問題の複雑さが 一般人の誤った先入観の指摘とともに、違った観点で見直されて行きます。医療は特別なものでないが、医療現場は特別かも知れない。
2013年7月17日
伽羅の橋<叶紙器>
選考委員が島田荘司ひとりの福山ミステリ文学賞受賞作です。内容は、島田荘司のいくつかの作品を思い出します。主として文献による、過去の事件の真相探し ですが、謎に満ちており、しかも偶然の集まりで成立するという離れ業とも、都合の良い展開ともいえます。ただ、その如何にもありえない事が奇蹟的に起きるのが 島田の作風で、それの後継者とすると出現確率の高い章でのデビューとなりました。
2013年7月17日
碧の墓碑銘<夏樹静子>
作者名からすると本格かな?、題名は有名な異なるジャンルを思い出す?、実際は日本国内ですから規模の小さい、女スパイものと言えるでしょう。書かれた時期も 考慮すると、先駆作の一つかも知れません。1作1ジャンル的な要素がある分野ですから。題名の元の作品はご存じですね?。
2013年7月17日
仁木悦子少年小説コレクション3<仁木悦子>
待望の全集の3冊目で最終刊です。かなり分厚いです。中編・タワーの下の子供たちが、一度消えた大人向けの書誌から戻りました。その後は、大井三重子名義の 童話の集成です。単行本の『水曜日のクルト」・連作「ピコピコものがたり」と未収録童話が沢山です。作者名は、仁木悦子と大井三重子になるのでしょう。
2013年7月23日
死神の矢<横溝正史>
昭和21年の同題の短編があり、昭和31年に発表された短めの長編です。婿選びを那須の与一のような弓の競技で決めるという神話的な話が、殺人事件を呼びます。 戦後の謎解きトリック物だが、背景はむしろ戦前の世界観のなかにある中間的な作品に感じます。従って好き嫌いが別れそうです。ただ弓での殺害は現在もかなり見られる 殺害方法で作家のイメージを湧かすのでしょう。
2013年7月23日
森の石松が殺された夜<結城昌治>
幕末から明治維新にかけての博徒ものの3短編と、「博徒さむらい」というエッセイからなります。一部の英雄的な人物と多くのその他の悪党的な扱いが目立ちますが、 この作者は後世の作り話と世渡りで別れただけと見ています。特に肯定的ではないが、どちらも同じレベルの地域活動の博徒サムライととらえています。
2013年7月23日
悪魔と警視庁<ロラック>
イギリス本国では多数の著書で知られる作者ですが、日本紹介はたぶん4冊目で作者を論ずるレベルの紹介ではないです。オーソドックスな警察探偵のシリーズが多い らしいです。本作は仮装舞踏会の死体が警部の車から見つかるという発端から地味な捜査になります。
2013年7月29日
標的の男<堂場瞬一>
警視庁追跡調査係シリーズ・通称は沖田と西川シリーズです。今回は行動派の沖田が怪我をして、病室で資料の調査で、資料派の西川が捜査に歩き廻るという逆の展開 です。最後は沖田も無理に動き出すが、逆の立場になるとどちらも大変と判る。家族も巻き込む?展開です。
2013年7月29日
学園島の殺人<山口芳宏>
たて続けに長い作品を発表した作者ですが、謎解きとの相性があまり良くないのかその後はあまり発表していません。島と言っても孤島というより、いろんな設備が 揃った大きな場所で、簡易鉄道もあるし色々なものがあります。建造物のスケールアップだが、謎のアップに繋がったでしょうか。
2013年7月29日
異説新撰組<童門冬二>
時代ミステリですが、幕末・明治維新がすでに歴史となっているかは微妙です。異説には、真説が前提ですがまだはっきりしていない時代とも言えます。歴史は勝者が 作ると言っても、ようやくその時代の生存者がほとんどいなくなった頃です。新撰組が出来た目的は何か?、何を言われてもまだ驚かない時代かも知れません。
←日記一覧へ戻る
2013/07に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。