推理小説読書日記(2013/06)
2013年6月05日
本能寺遊戯<高井忍>
時代小説と推理小説との混合というか、時代小説を舞台にした推理小説を書いていた印象のある作者です。今回は、似ている様で全く異なる内容になりました。 3人の女子高生が歴史的考証より素人が楽しければ良いという出版社の応募テーマに対して、隠された歴史の陰謀を作る話です。そう、面白い内容が良いという内容 に募集するのだから、もう立場が異なります。ジャンルが変わったと言えます。
2013年6月05日
仁木悦子少年小説コレクション2<仁木悦子>
口笛たんてい局というオムニバス長編(中編)を中心に、少年・少女向けのミステリーを集めた作品集です。真面目に書いているという印象です。個々には、読者 層に合わせていますが、丁寧な内容は100編に満たない一般向け作品しかない作者が、他に何を書いていたのかが判ります。余技ではない事は確かです。
2013年6月05日
黒いモスクワ<今野敏>
STシリーズの第3作で、登場人物グループの名前に色が入っていますが、主に活躍する人物の色がタイトルに入り始めます。舞台はモスクワで、研修に行ったはずが 実事件の捜査を行い解決します。飛行機が苦手な人物もいた筈ですが・・・・。
2013年6月11日
妖櫻記(上)<皆川博子>
長い小説が増えているが、時代小説は長くなる性質もあります。歴史小説は史実が多ければ、フィクションの部分が少なくても長くなるし、伝奇小説のは背景の設定 から入る、逸話を増殖させる構造もあります。本作は伝奇小説で無理に長くはしていないが、複数の主人公たちの運命を歴史背景で描いています。
2013年6月11日
妖櫻記(下)<皆川博子>
下巻ですが、1作を長さ的に2分割した様に思います。南北朝時代に、南朝の衰退のなかで関わってゆく架空の主人公を、歴史的史実(だろう、マイナー?)を絡めて 描いて行きます。大きな流れは、南朝の衰退ですが、その中には細かい出来事や復活もありました。それは歴史では雑音でも、実際の関係人物には大きなうねりとなります。
2013年6月11日
跡形なく沈む<デヴァイン>
探偵役がいないミステリ作家は、メリット的には犯人捜しの他に探偵捜しや、場合によってはワトソン役探しの要素も自然発生します。ただそれが面白いかどうかは 個別作品で異なります。この作者はその面では微妙な位置で書くので、作中の誰とも気持を移せないが、犯人捜しの面では全てが容疑者と言えます。
2013年6月17日
妖精の墓標<松本寛大>
福山ミステリ文学賞受賞第2作ですが、本格味に妖精という要素を加え、そしてそれを学術的に追求します。行く先が読者には判らないが、作者には明確な目的地が あった事は読後に判ります。この奇妙な謎は、日本とアメリカを繋いだ探偵役で解明に近づきます。
2013年6月17日
しまなみ幻想<内田康夫>
瀬戸大橋の3つ目の一応の開通がされた時期が舞台です。そこは、多数の島を橋で繋いで行きますが、両端や島々には色々な影響が起こっています。同時にそこは 色々な歴史を持つ場所の多い所です。自然と歴史と現在の橋とが重なり事件が明らかになります
2013年6月17日
宝石S34.03<>
短編は、多岐川恭・宮原龍雄・星新一・佐野洋・戸板康二・成瀬圭次郎・桶谷繁雄です。連載は仁木悦子・松本清張・鹿島孝二ですが、1回の長さは違います。 翻訳小説はヒッチコックミステリシリーズとして4作です。随筆類は多彩です。
2013年6月23日
始末屋卯三郎暗闇草紙<結城昌治>
現代でいえば調査会社と便利屋と殺し屋までは行かないが闇の仕事屋を混ぜて適当に抜き出したような、闇の始末屋が江戸にあったという話です。必殺シリーズは殺し屋 に特化しているが、もう少しマイルドな仕事が中心だが、とにかく闇の世界です。ただ荒唐無稽に見せない工夫が各所にあります。
2013年6月23日
花髑髏<横溝正史>
横溝正史には、主として戦前に由利先生と三津木コンビ作品が書かれています。戦前は非本格のイメージもありますが、色々な要素の比重の問題であり、本格と言って よい作品も多いです。この短編集は、「白蝋変化」「焙烙の刑」「花髑髏」の3編からなります。当時は耽美派とも言われた作品も多く、推理小説にもその影響が戦後より も強かったと言えます。
2013年6月23日
冬に散る華<高城高>
函館水上警察シリーズ第2作「ウラジオストクから来た女」の文庫化で、「嵐と霧のラッコ島」が追加された5編収録です。明治時代の函館を舞台に、そこに訪れる 船舶も含めた事件と謎を解決する、時代警察シリーズです。
2013年6月29日
ノックス・マシン<法月綸太郎>
SF小説の設定です。テーマは、ミステリ歴史上の謎とされるものを、大胆な架空のSF的解釈を展開します。そもそも、元を知らない人はどの程度理解できるか疑問です。 逆に、こんな事は全て知っているよというマニアは、作者の空想・妄想・知識を楽しむ事が出来るでしょう。
2013年6月29日
宝石S34.04<>
短編は、竹村直伸が3作と、リヤン王の明察・護符・夜空に船が浮かぶとき・ひとりストライキ・愛と憎しみとという有名な作が多い。連載は仁木悦子・松本清張・ 島田一男とこちらも有名作が多い。ヒッチ国ミステリーズの翻訳があります。評論と随筆は多数あります。
2013年6月29日
虚空の糸<麻見和史>
警視庁捜査1課11係シリーズの第4作です。正体不明の脅迫事件と連続殺人に、大勢の捜査員が振り回されますが、正体にたどりつけません。どうも裏をかかれている 気さえします。研修中でいつもの様に教育係の鷹野と組んだ如月塔子は、いつしか事件の中心に触れていました。本格推理の警察小説です。
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2013/06に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。