推理小説読書日記(2013/03)
2013年3月01日
その日まで<吉永南央>
紅雲町の草ばあさんシリーズの第2作品集です。お草は、独自のアイデアでコーヒーと雑貨店を経営する。そこにデスカウントショップや色々なもめごとが巻き起こる。 自分の価値感で、対応してゆくとそこには無理や迷いを持った人の姿が表に出て来ます。
2013年3月01日
悪魔の百唇譜<横溝正史>
女性の唇の転写跡のコレクションという奇妙な趣味を持った男が登場します。女性の唇跡のコレクションには、男女関係や付随した事がついて回り、そしてそれは恐喝の 元の何かになります。そんな中で起きる連続殺人を金田一耕助が解決します。
2013年2月05日
宝石S30.11<>
海外異常心理小説特集号ですが、翻訳物は飛ばして読みました。水谷準・岡田鯱彦・楠田匡介・明内桂子・大河内常平・土屋隆夫等の短・中編が掲載されています。 この頃の翻訳は出来不出来がおおきいのと、現在と紹介される作者が異なるので別の機会へと飛ばしています。
2013年3月07日
葛野盛衰記<森谷明子>
葛野川は現在の桂川で京都の西にあたります。長岡京から始まって、平安京から平家の天下へと移り、そして福原京から滅亡へ行くまでを都の移り変わりという 奇妙な視点で描いた歴史伝奇小説です。登場人物の移り変わりに繋がりを見るかどうかです。
2013年3月07日
ポケットに地球儀<安萬純一>
雑誌編集者と作家・アマンが不可解な謎を解きます。募集した謎が何故か密室の謎も生み出すという、小説自体が不可解でパロディなのかユーモアなのか理解しにくい 連作です。ただ登場人物に感情移入は無理でかなり不完全燃焼になりそうです。
2013年3月07日
宝石S31.9<>
エロティック・ミステリー増刊です。江戸川乱歩・木々高太郎・水谷準・香山滋・島田一男・高木彬光・城昌幸・大河内常平・耶止説夫・朝山蜻一・朝島靖之助・四季桂子・ 楠田匡介・永瀬三吾・渡辺啓助・岡田鯱彦・山田風太郎・横溝正史。意外と既読作が少なかった。
2013年3月13日
山田風太郎少年小説コレクション1<山田風太郎>
光文社の選集の「笑う肉仮面」等から省かれたこの作者の少年小説を集めています。少年小説の定義は難しいが、単純に発表先で良いでしょう。オリジナル性よりも 読みやすく、夢と楽しみと驚きを与える作品が満載です。
2013年3月13日
お嬢さんの探偵メモ<若山三郎>
副題が「女子大生連続殺人事件5」ですがこの意味は判っていません。女子大生の主人公・矢車ユカと元警部の祖父が事件を解決する作品です。今のライトノベルか どうかという、軽いミステリです。特に奇を狙っておらず、しかし随分都合の良い人物設定です。
2013年3月13日
宝石S31.12<>
古雑誌の場合は連載長編は厄介です。連続して保有しないと、部分的に読んでも意味がないからです。連載は、高木彬光・水谷準・香山滋です。短編は、清水正二郎・ 園田てる子・梶龍雄・大河内常平で、後は海外ものです。
2013年3月19日
疑心・隠蔽捜査3<今野敏>
署長の竜崎がアメリカ大統領来日の方面警備本部長にさせられるが、同時に派遣された女性に初恋するという事態です。初恋というくらいだから妻とも経験していない 気持で落ち着かず、しかも親友に相談してしまう。一方ではテロ組織の存在が浮かび、空港封鎖をアメリカ捜査官から要求され、苦境に落ちます。竜崎の選んだ解決はなにか。
2013年3月19日
宝石S32.11<>
堂々と掲げられた「江戸川乱歩編集」の文字が印象的です。苦境の雑誌を乱歩が立て直しに立ち上がった頃です。この号は第3回江戸川乱歩賞の発表があります(公募作品 の第1回)。受賞者・仁木悦子の第1作と、横溝正史・坂口安吾・大下宇陀児の連載と、楠田匡介・山村正夫・朝山蜻一・星新一の短編です。翻訳の連載や短編もあります。
2013年3月19日
異聞霧隠才蔵<中田耕治>
異聞というと正聞があるのかと悩む人物ですが、足軽の使いが関ヶ原で迷いあちこちと行きながら、最後に幸村に合流する話です。時代劇サスペンス風ですが、主人公に 特に意味があるとも思えないですが伝奇小説とはこのようなものでしょう。そもそも忍者とか無名の足軽の事は歴史書には乗らないです。
2013年3月25日
散りしきる花<皆川博子>
副題が「恋紅 第二部」です、この作者の直木賞受賞作「恋紅」は主人公・ゆうの9才から25才が書かれています。その続編と言うことで、30才から35才です。 時代は江戸末期から明治へはいり、女郎屋の娘が旅芝居役者と結婚した所までが前作で、旅芝居で廻りながら子供を産み色々な仕事の末に、旅芝居の女興行師になって ゆく過程を描いて行きます。期間は短いが起伏は十分に大きい話です。
2013年3月25日
エデン<近藤史恵>
日本での自転車レースを描いた「サクリフェィス」で大藪春彦賞受賞の続編です。今回は、舞台は本場フランスそれも。ツールド・フランスです。スペインを経て参加 チームに移籍した主人公・白石が、チームの解散を前にしてちぐはぐなチームの中でのレースを描きます。前作でもミステリー色は、強くはなかったですが、本作はスポーツ 小説として読むべき内容です。ただ、団体長期自転車ロードレース自体が日本人には知られていないので、その実態や戦略は新鮮です。
2013年3月25日
真夜中の男<結城昌治>
長編で1部と2部に成っていますが、1部はわずかで7年後の2部が殆どです。何故別れているのかも読む課題です。無実で逮捕と出所後というシンプルな見方が 普通ですが・・・。冤罪がテーマならば、1部を切り離す必要はなかったと思えるし、一途に進む主人公の性格は7年間に産まれたものでしょう。
2013年3月31日
名もなき毒<宮部みゆき>
不思議な主人公の環境と性格は本作だけでも十分書かれていますが、前作があるシリーズ?とは知らず読んだ。不思議な職場の主人公は変わった事に巻き込まれる、 そしてその対応の中で違った事件に巻き込まれて行くがそこであきらかにされて行くのが、人間が持つ毒です。特別なものでないが、人によって異なりますし、それは 人物を見ただけでは判らないものです。
2013年3月31日
宝石S36.6<>
木々・多岐川・戸板・黒岩・河野・加納・田島・城・星・筒井・小滝・高城・樹下・高木・仁木と水上勉から「ある作家の周囲」が始まります。 江戸川乱歩編集のもと、「ある作家の周囲」が始まった号でもあり評論や座談会が目立ちます。長編連載も明確な形になりました。
2013年3月31日
夜の黒豹<横溝正史>
この作者は短編の長編化を複数行っているが、本作もその一つです。風俗の世界での連続殺人が舞台で、題名通りの服装の容疑者が登場します。その服装は、この作者 好みで、どこから見ても正体不明の変装でしょう。金田一耕助はきわどい手段で解決してゆくが、証拠不十分だろうとは思う。
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2013/03に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。