推理小説読書日記(2013/01)
2013年1月06日
扉の影の女<横溝正史>
金田一耕助シリーズの中編「扉の中の女」「鏡が浦の殺人」の2作を収録。当時は長編と言われた長さらしい。基本は本格であるが、解決は犯人の自滅を図る事 で成立しているものが多い。ロジックと、物証とはなかなか相入れない所がある。等々力警部の登場作が多い。
2013年1月06日
鬼畜の家<深木章子>
時間差のある、1人称の話の積み重ねがしだいに、大きな犯罪を暴いてゆく構成です。慣れた人は、パーツを山勘で見つけるでしょうが、全てを組み立てる事は かなり難しいでしょう。そもそも、何がパーツで、何が裏構造かを切り分ける事がテーマでありかつ、難しい作品だ。
2013年1月06日
マツリカ・マジョルカ<相沢紗呼>
主体不明のホームズ役と、いささか頼りない主人公のワトソン役ですが、どうも語り手が頼りなさ過ぎて、読むほうがいらいらしそうだ。男ぽい女性と、よわよわしい 男の子という構図は、青春小説としてよめるのだろうか。そもそも学生が、謎の生活とは無理があるでしょう。
2013年1月12日
和菓子のアン<坂木司>
和菓子店のデパート店ににアルバイトで入った主人公の女性が巡り会う、ちょっと変わった人々と、職場とお客様との話です。そして、あるいは主人公と言えるのが 登場する和菓子類です。午前中に売れる、月替わりの高級和菓子と、午後から夕方に売れる一般安価品、そして特定期間の贈答品。作者の取材は、日常の謎と共に 食品をはじめとする客商売のやり方について、はっとさせられる内容でもあります。
2013年1月12日
長く短い呪文<石崎幸二>
櫻藍学園シリーズなのでしょうか、さえない探偵役の石崎幸二を巡る・あるいは痛めつけられるコメディ風のストーリーに隠された謎の話です。ただ、ストーリー 展開から、緊張感に欠けるのがどうなのでしょう。
2013年1月12日
花闇<皆川博子>
江戸時代後半から明治初期の、歌舞伎が舞台ですが、かなり詳しくないと名前がこんがります。主人公は、名女形と言われた澤村田之助で、病で足を失っても舞台に 立ち、次のもう一方の足も失ってもまた舞台に立つが、次第に出来るものが限られ、歌舞伎の芸よりも見世物風に見られる様になってしまう、そんな人生を描きます。
2013年1月18日
伏・贋作里見八犬伝<桜庭一樹>
題名どうり、大きく2つの話が入れ子になっています。その中の方の、小説中の小説が「贋作里見八犬伝」です。従って、元の「里見八犬伝」を知っていた方が 面白いと思うが、必然性は必ずしもないです。それは、小説中の小説だからです。ただ、伏姫と犬とかの話は知っているとより面白いかも知れない。人間に見えるが 実は、伏という化け物?が出没して賞金が出る。それを目当てに兄を訪ねて猟師の少女が江戸に来てという話しです。
2013年1月18日
死んだ夜明けに<結城昌治>
ハードボイルド短編集です。3長編で有名な、私立探偵・真木が3作品に登場するが、ストーリー等に制約を受けるとして、それ以後はレギュラーは使用していません。 性格や立場が微妙に違う主人公が登場します。拘りが良いのか拘り過ぎかは、難しいが既にハードボイルドの形は出来ています。
2013年1月18日
廃墟に乞う<佐々木譲>
凶悪犯罪に携わった刑事が、トラウマで心の病気になり長期休養になります。しかし、その名捜査員を頼って事件の相談が舞い込みます。やれる範囲で引き受けると いう設定です。北海道警刑事で、舞台は北海道の全域に拡がります。逆に捜査に絡みながら、復帰を図って行きます。
2013年1月24日
扉守<光原百合>
潮ノ道を舞台にした幻想味の多い傾向の作品集です。潮ノ道のモデルは、尾道でそれは読めば自然に判ります。ただダイレクトな幻想小説ではなく、童話風・民話風 の話の雰囲気です。そして、続編もありそうな構成です。
2013年1月24日
支那扇の女<横溝正史>
「支那扇の女」と「女の決闘」の2作からなります。前者は短い長編で、後者は短編です。金田一耕助が活躍しますが、作者ならではのトリックや本格推理の妙味や 過去の因縁話と他の作品の要素がそれほど長くない作品中に詰め込まれます。
2013年1月24日
時限<鏑木蓮>
最近の江戸川乱歩賞のなかで、本格味の強い作品を連続して発表している作者です。作品の発表がこのまま継続すると、レベルが安定しているだけに将来のブレーク が期待出来ます。京都生まれの妙な新米女刑事が主人公だが、毎作探偵は代わっています。期待の作者です。
2013年1月30日
江神二郎の洞察<有栖川有栖>
大学の推理小説研究会での学生・有栖川有栖が語る、先輩・江神二郎の探偵談の連作集です。先輩3名と新人の有栖の大学生活が描かれます。ただ、長い期間に 書き継いで来た短編を並べて、連続性の修正を加えたものです。江神二郎の短編集は始めてです。
2013年1月30日
宝石S.28.7<>
折りにふれて購入した古い探偵小説雑誌は、積ん読になりがちです。一度積極的に読む事にしました。単行本2冊くらいのボリュームですが、アンソロジーや 単行本で読んだ作品もあり、重複がかなりありますが、たぶん初出のみのものも多いです。長めの短編から中編が多い月です。そして長編。
2013年1月30日
鉛の小函<丘美丈二郎>
前述の宝石に一括掲載された長編です。雑誌採録はあるが、単行本にはなっていないはずです。理系作家で、多彩な作品を書いていますが単行本はなく、しかも この長編は完全なSFです。発行年をみれば、早い時期とわかりますし、その分野ではオーソドックスな内容といえます。
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2013/01に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。