推理小説読書日記(2012/12)
2012年12月01日
刑事<結城昌治>
刑事を主人公にした連作集です。色々な刑事が登場しますが、主にヤクザや犯罪者との関係を持つ刑事の話を集めています。警察小説では基本はなく、刑事を主人公 にした犯罪小説が主体です。11作もあるので、若干はやや異なる風の作品もあります。短編のひとつの神髄とも言えるでしょう。
2012年12月01日
夏樹静子サスペンス劇場<夏樹静子>
短編の原作を、映像化する事もありますが、その場合はシナリオは時間調整が必要です。そこで、実際に映像化された短編を、原作とシナリオを同時に掲載した企画 作品集です。シナリオ制作者のコメントもついているのが、特徴です。シナリオの好きな人には、必読です。
2012年12月01日
十三の冥府<内田康夫>
世には、偽書が登場する事がありますが、その1つを元ネタにした歴史と謎の書とそれに絡む殺人事件がテーマです。舞台は青森県で、ほど全県を浅見光彦が動き まわります。モデルと作者の創造物が混じった歴史書の謎に現代の絡んだ事件と豊富な内容となります。
2012年12月07日
笑う肉仮面<山田風太郎>
作品数の多い作者ですが、光文社文庫の選集はかなり多く広く収録されています。それでも全集には遠いのが実状です。「笑う肉仮面」はその中で、少年小説を集めた巻です。 少年小説というのは発表先・対象読者であり、ジャンルや小説内容とは事なります。したがって多数のジャンルを書きわけたこの作者の、多くの内容が含まれる事になります。
2012年12月07日
秘密の地下室<松田美智子>
もともと単行本の筈の「完全な飼育」が、シリーズ化されて行きました。異常性愛の世界を描く内容は、読者によってホラー・幻想・サスペンス・官能・・・色々な見方が が出来ます。似た付近の作品は多数ありますが、本作は比較的に静かに語れて行きます。
2012年12月07日
魔女の暦<横溝正史>
「魔女の暦」と「火の十字架」からなる、中編集です。どちらも、金田一耕助と等々力警部が登場する、予告連続殺人事件です。本格探偵小説ですが、舞台は演劇・風俗 等の人がそれもやや変わった人の集まる所です。ヌード写真専門家の写真鑑定は鑑定証拠になるのでしょうか。
2012年12月13日
虹とノストラダムス<太田忠司>
子供の頃から現在までの区切りの時間を設定し話が進みます。高校生が「ノストラダムスの大予言」との出会いから始まり、成長してゆく様子を個別の出会いと それぞれの進路と共に描きます。個々には、うすい日常の謎的な展開があるが基本はミステリ色はうすい、年齢を重ねてゆくが、最初の印象が尾を引くので、青春小説 雰囲気が残ります。そして、いつしか、1999年も過ぎて、最終賞へ向かいます。
2012年12月13日
海の葬礼<伊藤桂一>
推理小説のシリーズ用にかかれていますが、その見方からすれば恋愛心理の探求か?。普通に読めば、画家と絵も世界と女性とを個々にあるいは、連想的に繋げる ストーリーです。先生と教え子、男と女の生徒・同時にモデル、そして書かれた絵に含まれた感情、文字にすれば自由に心理をあやつれます。
2012年12月13日
菓子フェスの庭<上田早夕里>
SFメインの作家が時々かく、菓子職人の話、長峰シェフサー−ズの外伝的な話です。無理にミステリと呼ぶ必要はないが、菓子のアイデアやレシピはそれ自体が 完全にミステリアスな世界です。そこに甘いものが苦手な中年が、菓子フェスの企画担当になり、出会った甘いものが苦手な人向きの菓子のレシピとは?。
2012年12月19日
体育館の殺人<青崎省吾>
鮎川哲也賞受賞の、ロジック・本格ミステリです。何かを意識した様な題名です。このタイプのミステリは、最近はすっかり減りましたがファンは多いでしょう。 ただ、ロジックの抜け・破綻等の検証は難しい課題です。読者にとっては、殆ど考えない可能性も作者は意識しなければならないので困難な作業です。実際にどうかは 、あまり深く疑わずロジックを楽しむ読者なので、チェックは甘いです。
2012年12月19日
泡坂妻夫引退公演(1)<泡坂妻夫>
故・泡坂妻夫の単行本未収録作品を2冊に集めた本です。単行本かまじかのものも、抜けていたものもあるようです。第1幕は、「亜智一郎」シリーズの2冊目に なる筈だった作品群と、紋章上絵師をテーマにした作品群と、拾遺的な作品少しで構成されています。
2012年12月19日
泡坂妻夫引退公演(2)<泡坂妻夫>
第2幕です。別の本として装丁されて、2冊が1つの箱に入っています。「ヨギ・ガンジー」シリーズの3作と、奇術がテーマの4作と、戯曲が1作と、それ以外が 4作です。解説と作品リストがついて、全作品が集まったのか、まだ抜けがあるのか・・それは判りません。
2012年12月25日
巫女の棲む家<皆川博子>
新興宗教を舞台にした小説と言えば、妖しげな世界か、現実なドキュメンタリーかと思いがちですが、どちらも含みがちでかつ異なる内容です。登場人物が霊を何故 信じる様になったか、あるいはその様に振る舞うようになったかは別の世界だが、前者を利用しようと集まる者たちは後者であり、それぞれ別の世界に生きる。 それ故に話も、終わり方も読者の予測に対し大きく振れる。
2012年12月25日
FOR RENT<森谷明子>
世代を超えた交流がアパートで繰りひろがえる。遠い昔、まだ幼い時に母をなくした少年が、戻って来てアパートに来たが、どうも妙な人?家族と会う。 誰のいうことも信用できるのか判らないし、小説では特に判り難く書かれている。それが意外な展開になるが、小説の描き方でどうでもなれと思ったならば やっぱりと感じるかも知れない。何かが出るという雰囲気から、何かが出たという感じだ。
2012年12月25日
鉄道ミステリ各駅停車<辻真先>
小説ではなく、小説家・その他色々の作者と鉄道の関係のエッセイです。いわく、「乗り鉄80年、書き鉄40年」だそうだ。多くの書いた小説の舞台を振り帰る。 この作者の愛好者(私もだ)には見逃せない内容となっているし、未読が多い事にも唖然とする。
2012年12月31日
夜は死の匂い<結城昌治>
昔も今も、とかく芸能界やマスコミを舞台にした作品は多いです。その中にある時代では、テレビや映画やタレント事務所のプロジューサーや実力者がその力で 俳優や企画を決めるため、そこに多数の利権や女性等の問題が起きるものがあります。少なくても、実務者レベルでは現代は現実的とは思えないですが、そこに夢を 持った女性や謎の死や、真相を調べる知り合い・・女性が多い・・・というパターンが生まれます。背景は似ていても、小説的には逆に作者の力が出てしまう事に なり、その面で本作は読ませる作品です。
2012年12月31日
善人長屋<西條奈加>
裏家業と表の姿を持つ人または人達が主人公の作品も多いが、そこに裏家業が無い人が紛れ込むと、話はこじれて面白くなります。そんな、長屋を舞台にした 連作です。裏家業には特技が付きもので、事件を解決する手段が豊富になります。
2012年12月31日
隠蔽捜査<今野敏>
警察小説が増えましたが、ストーリー展開と主人公のキャラと多くの登場人物の描き分けがまず、多くの正否を決める様に思います。警察やキャリアと言えば権力と 繋がり勝ちですが、それが使命感と権限の増大の為に大事と本当に考えている人物が主人公になると意外にキャラが起ちます。それが私生活のも繋がると、やや変わった 家族小説の面も持ちます。
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2012/12に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。