推理小説読書日記(2012/11)
2012年11月01日
想い雲<高田郁>
「みをつくし料理帖」の第3作で、4短編収録です。色々と浮き沈みや事件は起きますが、捕物帳ではありません。大阪のおおだなで修行した若い女料理人が、味や 料理法や素材も異なる江戸で小さな料理店の料理人として、他の店と料理の腕と工夫でもり立てて行きます。特徴は登場する料理のレシピが付録についている事です。
2012年11月01日
噂の女<結城昌治>
10作からなる短編集で、全て題名に「女」がついています。短い作品がほとんどで、犯罪小説が多いですが、多彩なジャンル分け出来る内容です。多彩な切り口で 読者を飽きさせません。まさに長さにあった内容です。もう少し書き込んだらとか、違ったテクニックでと思う人は、本作者の別の作品で出会うでしょう。
2012年11月01日
天空の少年探偵団<秋梨惟嵩>
現代の少年探偵団が、天空館で遭遇する事件に対応します。あまりにオーソドックな設定で、館トリックですが、あきれずに最後までよみましょう。電話しほうだい の閉ざされた空間という設定と、乗り気の無い探偵役は、どんな結末になるのでしょうか。個人的には、小道具は大きいものでない方が好みなのですが・・・。
2012年11月07日
HEARTBEAT<小路幸也>
この話も子供の頃から始まる。10年目に再会するためにニューヨークから帰って来た青年と約束の物が1億円という設定は、ありがちな部分とありそうでない部分 があります。そして、再開できずに色々な人物が現れる展開です。そこに友人があらわれて強力するのもありがちですが、次第に組み合わせが歪みはじめて、結末に行きます。
2012年11月07日
夜光虫<横溝正史>
昭和11年の出来事で、戦前の本格のスタイルでしょう。由利・三ツ木の等々力警部まで活躍します。等々力警部はいつからいつまで、警部で働いたのか?。戦前の作風では 美少年と美少女が登場し過ぎです。そしてもう一つの定番の変装です。これらが無いと、この時期の作品を読んだ気がしません。
2012年11月07日
ミハスの落日<貫井徳郎>
一応、独立した短編集です。全てが海外を舞台にした物で、ジャンルや内容が多くは舞台にちなんでいます。展開も舞台も、多彩という意味で統一されている・・不統一という 作品群です。連作が増えた現在ではむしろ少ないと言えるでしょう。昔は普通だったが、現代的内容が主体です。
2012年11月13日
夜明け遠き街よ<高城高>
1980年頃の札幌・ススキ野が舞台でそこのある店の副支配人が主人公の短編集です。当時を知る作家の色々な話を用心棒も兼ねる様な主人公が対応して行きます。 登場人物は、上も下もハードボイルド特有の冷静で感情を抑えた見方でしかし、どこか人情味も感じる見方で関わります。そう、仕事が関係しなければ成らないもの なのです。この作者のこのような作品が今読めるのは、夢の様です。
2012年11月13日
赤Xピンク<桜庭一樹>
少女向きまたはライトノベル作品が、作者の直木賞後に一般の文庫にも登場するのはやや珍しいです。ライトノベル出身の作者は他にもいますが、表面に出ていない だけです。本作は、少女による裏の格闘技の興行の世界を、3人の女の子の視点から描きます。内容は全然ライトに思えないが・・・・。
2012年11月13日
長い廊下がある家<有栖川有栖>
こつこつと書き続ける本格ミステリの短編・中編集です。火村英生シリーズですが、4作中で1作はワトソン役の作家の有栖が主に活躍します。表題作は中編で、よく 見かける題名と思いがちですが、実は長さが半端なく長い・・・それゆえ内容にも意表を突かれるでしょう。
2012年11月19日
ヴァージニア<倉橋由美子>
中編3作の作品集です。テーマは精神的なものと目に見える事との差でしょうか。あるいは、主人公自身の迷いや悩みやあるいは他人には理解されない心の中かも 知れません。それが誰か第三者や出来事を通して、自身に問いかけられます。それが意外でない事にも気づきます。
2012年11月19日
ハサミ男<殊能将之>
連続殺人それも快楽殺人らしきもの、そしてそれに乗じた犯行が起こるというパターンですが、そこから変則な方向に進展します。妙な題名も、安易なメディアの 命名といえばぴったりかもしれないが、かなりポイントをつく言葉です。しかし主人公がまともかどうか判らないと読者は、苦労します。
2012年11月19日
さよならのためだけに<我孫子武丸>
近未来に人間のレベルと相性が絶対評価で出る時代が来たとしたら、そしてそれを皆が信じて、その例外が起こる筈がないという自体になればどうなるでしょうか。 最高レベル同士が結婚すると、最高レベルの結果が100%生じるという結果がある。ところが、その二人が新婚旅行中に離婚を決めるが、あり得ない事として、それは 簡単に・・絶対に出来ないと判って来ると果たして・・・・。
2012年11月25日
相馬野馬追い殺人事件<皆川博子>
相馬野馬追いの最中に起きた殺人をはじめに連続殺人が起こり、戦争時の集まりが関係しているように見えた。そして、馬追いというものが関係してくる。殺人には トリックはあるが、それよりも色々な所を舞台にして、多数の見方から事件を追い詰めて行くところが見所です。
2012年11月25日
俳優パズル<クエンティン>
派手に始まった事件が、途中で中休みしたようにみえる。そこは実は動機に関わる面が大きいが、それでもなかなか作者の意図には、従えない面もあります。 芝居が開幕するかどうかのサスペンスの要素もあるが、ただ探偵側にはあまり緊迫は感じられない。
2012年11月25日
謀略回廊<伴野朗>
歴史冒険小説というらしい、中国の少し前の動乱期を舞台に謀略とスパイの活動が、描かれます。1人称で書かれた文章はハードボイルドの風味が漂い、やや理解 しにくい時代と舞台ながら、根気よく読めば楽しめます。
←日記一覧へ戻る
2012/11に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。