推理小説読書日記(2012/10)
2012年10月02日
虹の悲劇<皆川博子>
本格長編ミステリです。ふたつの無関係に見える事件が併行して描かれてゆきます。最低でも2視点ですが、実際はもう少し多いです。それが、昔の出来事と繋がる 事で、共通する人物・関係者の存在が浮かび、それを調べて行くと、繋がって行きます。素人探偵役が、進めて行くので場所の広がりはカバー出来ますが、繋がりはかなり 見つかり難いです。
2012年10月02日
あなたの恋人、強奪します。<永嶋恵美>
副題が「泥棒猫ヒナコの事件簿」で、インターネットに奇妙な広告を出した女探偵??の所に持ち込まれる、表題の依頼を対応します。原因も多数、方法も多数、 結末も多数ですが、依頼も複雑になってゆく傾向の連作です。オリジナル・パターンにひねりを加えると意外と狭くなるのでしょうか。
2012年10月02日
宝石1950<>
探偵雑誌「宝石」の1950年に注目したアンソロジーです。半分を、魔子鬼一「牟家殺人事件」が閉めますが、舞台が中国のためやや理解が難しい面があります。 抜き打ち座談会に関する、乱歩と木々高太郎のエッセイと、複数の短編からなります。戦後、3−4年の頃です。
2012年10月08日
星新一<最相葉月>
副題が「1001話をつくった人」で、ノンフィクションの評伝です。作者の作家前から始まりますが、それは日本でのSF分野の本格的な始まりと重なります。従って 、SF界の歴史とリンクして、星新一の歴史が語られます。SFとしても少数派のショートショートという世界に取り組みましたが、それがSFの発展に微妙に影響を与えた 事になります。1001話は作者がカウントして目標とした数字で、実際とはいくらかは異なるでしょう。
2012年10月08日
プラチナデータ<東野圭吾>
近未来なのか架空なのか、DNA情報から個人以外の情報が得られるシステムが開発された事から始まります。その目的や、表面的・実際の利用方法は何か。 悪用ともいえる利用方法は避けられるか、・・・。これらに絡む事件に、巻き込まれたまたは調べ始めた主人公は、秘密を解けるでしょうか。
2012年10月08日
罠の中<結城昌治>
作者の初期の長編で、多彩な作品を書いた作者の多くは無い本格ミステリです。戦争の中で何が行われたか、そして生き残った人がどの様な生活をその後におくって いるのかが背景になります。刑務所を出たばかりの男と、更生保護事業者が中心に展開します。まあ、少数の人物の単純な構成で話が進むわけでは当然ながら、ありません。
2012年10月14日
巡査の休日<佐々木譲>
北海道警シリーズの一作です。組織としての行動ですので、ある程度のメイン・キャラクターは存在しますが、その中の誰が中心かは作品事に変わります。それぞれの 担当事件・職務も異なりますが、それが強い関連を持って来るのかどうかはこれまた、作品事に変わります。ストーリーの読めない警察小説は基本なのでしょう。
2012年10月14日
かめくん<北野勇作>
ユーモアかパロディか、カメが主人公で普通の社会に入り込んだ話です。何故とかは、深く考えない事が読みやすいです。正確にはレプリカかめらしいが、やはり同じだ。 それだけで、日常生活さえもが小説になります。何故、カメが良いのかも判りません。
2012年10月14日
ダブル・ジョーカー<柳広司>
スパイ小説でしょう。D機関に関わる諜報事件が登場している・・・たぶん、はっきりしないのが、スパイの世界です。小説だからと言って、はっきり結果が判るとは 限りません。いくらでも疑えるのが、スパイ小説であり、二重スパイや三重スパイの世界です。
2012年10月20日
女が見ていた<横溝正史>
ノン・シリーズのサスペンス+本格ミステリです。主人公・風間啓介が酔って女といた時に、妻が殺害して容疑が自分にかかる。それを本人が無実を証明するために 身元の知らない女を捜す。探すのが本人ではなく友人ならば、「幻の女」の設定だが作者もそれを念頭に置いている事を連載時に語っているとの事です。展開は 当然ながら異なるものになり
2012年10月20日
北向海流<島田一男>
東京から大陸添いにシンガポール付近まで、港に停泊しながら往復する船の、新任船医が主人公です。どうも医者とは思えない行動も多いが、別の姿も・・という ミステリー定番の設定だが、よく考えると矛盾がありすです。帰りのルートは題名とうりに、北に向かうが船と海流以外に何でしょうか。
2012年10月20日
金木犀の徴<太田忠司>
藤森涼子が独立して、所員3名の女ばかりの探偵事務所を開いて所長になってしばらくたつし、自身が探偵になってからはもうかなりになる。かわりものだらけの 所員だが、名古屋ではかなり知られるようになった様です。危険のない依頼を受けるつもりが、しばしば難事に巻き込まれてしまう様です。作者のキャラクター中 では年齢成長派です。随分、変わって来ました。
2012年10月26日
デアラピス<小瀬木麻美>
謎の舞台に謎の登場人物に謎の能力、どれを信じて行くか。音と色と人の関係を知る能力。夢の中か、SFという非現実設定の現実の中にある話か、迷いながら読むが 収束するより、拡がる展開に読み終わる事が不安になるかも知れない作品です。それでいて恋愛小説?、はて。
2012年10月26日
薔薇の血を流して<皆川博子>
海外が舞台の3作の作品集ですが、ハードボイルド風が強いが色々な要素が混ざっており、勝手読みをしそうです。テーマが海外ならではなので、最初から読者は 個々のあまり知らない世界に引き込まれてしまいます。そこから抜け出す頃には、話も終わっています。
2012年10月26日
衣更月家の一族<深木章子>
3つのばらばらの殺人の章と、それを繋ぐ作品名の章からなります。本格ミステリです、そしてミッシングリンクというわけでは無さそうですが、それに近い ものを見つけないと、最終章の解明には辿らないです。そもそも3つの殺人は章題ほどには揃っていない事件なのです。
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2012/10に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。