推理小説読書日記(2012/08)
2012年8月03日
夢の通い路<倉橋由美子>
21作の掌編からなる作品集ですが、その内の17作は「桂子さん」が主人公として登場します。従って、連作集ともあるいは長編とも読めます。時代背景はよく判らない。 同様に背景の地もよく判らないです。桂子さんと、他の主人公の行く所は、作者のイメージのおもむくままで自由に色々な時代と世界を飛び回ります。そしてテーマも多彩というか 自由です。やむを得ないので幻想とか妄想とか言って見ますが、ちょっとその程度では無さそうに思います。
2012年8月03日
ゆめこ縮緬<皆川博子>
独立した短編8作からなる短編集です。ただ、時代は戦争の影があるので、昭和初期か少し前に統一されていそうです。しかし内容は、作者の自由で幻想的にはじまるものが 多いですが、展開も終わりかたも不明です。怪奇と幻想あるいは・・・・。そもそも展開の予想できる作品が好きでない人に、ぴったりでしょう。
2012年8月03日
銀河帝国の弘法も筆の誤り<田中啓文>
まあ、SFだろう、たぶんパロディだろう。いやそれは、作品を良く見すぎだろうか。5作の短編に、異なる人が解説というか非難のコメントを書いており、それに作者が 反論する形式で進みます。そもそも小説自体が、異様な発想と内容であり、それの非難と反論がひとくくりで構成されているので、一体これは何なのでしょう。
2012年8月09日
矢上教授の午後<森谷明子>
日常の謎の舞台の広さは制限されていないが、普段の日常に近いならば狭い範囲が合っている。題名から見て、大学のようであり、1日の様子が描かれている。 謎が一杯であって、殺人が一杯ではないのは日常の謎の常套です。描く期間は短くても、最近や過去の出来事が絡む事は今やあたりまえです。やや珍しいのが、章が 多数に別れており、それぞれの長さがまちまちな事でしょう、シナリオの手法でしょうか?。
2012年8月09日
芥子の花<西條奈加>
SF?・パラレルワールド時代劇というべきか。適当に変わった時代劇として読むのが、楽でしょう。しかし主人公の、金春屋ゴメスを普通の人物とするのはやや 難しい。そして、出来事もパラレルワールド設定に絡むのだから、直ぐに思い出させられる。極端でなくても、昔の事は読者があるていどは勝手なイメージで読む。 それならば、作者が強引に設定しても良さそうです。
2012年8月09日
鍵のかかった部屋<貴志祐介>
テレビや映画の原作に使用されると、早く文庫化されるというメリットもあります。映像は、原作とは異なりますが、読書マニアにはあまり関係ない事です。 作者の絶版が復刊されたり、ハードカバーが早くに文庫化されたりのメリットを素直に喜びましょう。作者に振り回されるキャラクター達に、映像は決着をつける 事が多いが、小説では続くが多いのは普通です。
2012年8月15日
漸に処す<結城昌治>
歴史は作られるものだから、登場人物もかなり歪められていると言う説はおおむね説得力があります。結果として、似たレベルの人が正義の味方と悪役に別れてしまう。 たぶん、実際は大きな差はないであろう。そのような見方から、正義派の清水の次郎長に対する悪役にされた黒駒の勝蔵を主役にした作品です。はたして作者の推理する 実態はどのようなものでしょうか。
2012年8月15日
迷走パズル<クェンティン>
名前だけ有名なこの著者の「パズル・シリーズ」、あるいは「ピーター・ダルース」物のシリーズです。ぼちぼちと新刊・復刊されていますが、全巻紹介されるの でしょうか。第1作にあたる本作は、奇妙な構成の本格ミステリです。本当に主人公になれるのでしょうか。
2012年8月15日
不二蝶<横溝正史>
金田一耕助の登場する2作が収録されています。信州が舞台の「不二蝶」と、岡山ば舞台の「人面瘡」です。迷路のような鍾乳洞が舞台の作品と、夢遊病らしき 人物の登場作品です。いずれも、この作者好みの世界です。
2012年8月21日
キングを探せ<法月綸太郎>
犯罪の構成を見つけ出すのが難しいストーリーです。表面的には、非常に易しく見せていますが、たぶん読者を安心させるためで、進行と共に真の犯罪は何かが 徐々に浮かび上がってきます。従って、テーマは何か、分類は何かは読後の判断になります。ネットで集まった4人の殺害したい者がいる集団が計画したはずの、 4重交換殺人だった筈でしたが・・・・。
2012年8月21日
人柱はミイラに出会う<石持浅海>
SF設定というか、パラレルワールドというか、作者都合の世界というか・・、読者には不都合な世界での犯罪が描かれます。短編集ゆえ、その世界の記述が薄く 作者のやりたい放題で、読者に勝ち目はないので本格ミステリとは遠いものです。奇妙な設定の面白さを楽しむべきですが、少しずつこだしでは、読むのがつらい です。
2012年8月21日
ダークルーム<近藤史恵>
独立した純粋の短編集です。広義のミステリから、狭義のミステリまで読んで見ないと判らない品揃えです。シーリーズ外作品集特有の内容です。世界は乱れ 飛ばないが、進行と結末は色々な着地をします。幅の広さがプラスに感じる人の方が多いと思うがどうだろうか?。
2012年8月27日
悪意<東野圭吾>
日常以上に小説の登場人物は日記やメモを残す。それゆえ、それを並べる事でストーリーができる。本作はひとりが加賀刑事だから、記録を残して不思議の ない仕事だ。でも実質は、それはもうひとりの手記の確認する内容となっている。何も判らない状態から、次第に判る事と残る謎とに整理されて行く。
2012年8月27日
七つの証言<堂場瞬一>
鳴沢了が主人公の短編集です。それぞれに、シリーズ等の登場人物がゲスト出演します。高城賢吾と明神愛美、今敬一郎、大西海、長瀬龍一郎と城戸南、藤田心、 小野寺冴、内藤勇樹というオールスターだ。
2012年8月27日
世界が終わる灯<月原渉>
ニュージーランドの学生・ジュリアンとバーニィが主人公の閉じ込められた列車の中の事件です。自然保護団体というこの国ならではの組織関係者が集まる 中での不可能犯罪です。国と背景と登場人物が変わると何が変わるのでしょうか。
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2012/08に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。